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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第十八話 ポジティブ

「さて、ではお別れじゃ。リュウの友達の居場所だが、そうじゃな……すぐにわかるように目印をつけておこう。これで相手の場所がわかるようになる」


 小さなビョードーはそう言うと、パッとリュウの前で花火を散らす。

 どうやら魔法をかけてもらったようだが、身体を見回しても特に何も変わった感じがしない。一体どんな魔法をかけられたのか、リュウにはわからなかった。


「どうやって場所がわかるようになるの? 何も感じないけど」

「今は友達が近くにいないんだろう。近づいたらわかるようになる。さぁ、急げ。そこの扉から出たらまた城のほうに戻れるぞ」

「うん、わかった! 色々とありがとう!!」

「カッカッカッ、達者にな!」


 リュウは小さなビョードーに言われた通りの場所に向かって走る。


「…………」


 だが、なぜかリュウはそこから先には進まず、足を止めていた。

 小さなビョードーは何かあったのかと心配そうにリュウを見つめる。


「リュウ、どうしたんじゃ? 何か忘れ物か? それとも腹でも痛くなったのか?」

「違うよ。そういうんじゃなくて……」


 そう言ったあと、口ごもるリュウ。

 リュウが何かを言いたいようだったが、そのまま何も言わず。けれど、小さなビョードーは辛抱強く待った。

 すると、意を決したようにリュウが口を開いた。


「あのさ、オレと一緒に来ない?」


 突拍子もないリュウの発言に目を丸くする小さなビョードー。


「はぁ? きゅ、急に何を言い出すのじゃ、リュウ」


 小さなビョードーは困惑するように眉を下げる。

 だが、それは決してリュウが言ったことが理解できないわけではなく、リュウの言葉に動揺していたからだった。


「ビョードーのこと、気になるんだろう? だったら一緒に行こうよ。それでまた、ビョードーと仲直りすればいいじゃん!」

「仲直り……いや、仲違(なかたが)いとかそういうんじゃ……」

「でも、ビョードーのこと心配なんだろ? だったら一緒に行って説得しようよ! 前回ダメでも、次やったらオッケーかもしれないじゃん!」

「なんじゃ、ずいぶんと急にポジティブだな」

「だって、くよくよしてられないからね」


 小さなビョードーに苦笑されるも、リュウは本気だった。


 ビョードーは恐いけど、さっきの話を聞く限り本当に悪いヤツではないような気がしたのだ。

 リュウはいい意味で切替が早い性格だ。

 だからこそ、悩んでいないでまずはチャレンジしてみて、ダメだったらそのとき考えればいいと思った。


「だが、アタシは元はビョードーとはいえ、身体は小さい上に、大した魔法とかは使えない足手まといだよ。それでもいいのかい?」

「そんなこと言ったらオレだって、特別な力はちょっとの間だけ身体が光るのと見えなくなるのだけだし。ヒナみたいに飛べるようになったり、ヨシみたいに速く走れるようになったりしてるわけじゃないから大して変わんないよ」

「そうかもしれんが……。だが、アタシを連れていることでビョードーからさらに猛攻を受ける可能性もあるんじゃぞ?」

「それでも! もしビョードーに立ち向かうなら、きっとそれはオレじゃなくてビョードーのことをわかってる人のほうがいいと思う!」

「何を小僧のくせに……知った口を……」


 小さなビョードーは眉を寄せてリュウを真っ直ぐに見つめる。


 リュウはその視線をそらさずにまっすぐ見つめ返すと、小さなビョードーは「はぁ」と大きな溜め息と共に苦笑する。

 そして、その場からゆっくりと立ち上がった。


「……だが、そうだな。リュウの言うことにも一理ある。元は同じもの同士、わかりあえる部分もあるかもしれないのもまた事実じゃ。そもそも幽閉(ゆうへい)されていた身。久しく出られんでいたが、ちょっくら外に出てみるのも悪くないかもしれないな……」


 小さなビョードーはそう言いながら魔法でさらに小さく姿を変えると、ふよふよと飛んでリュウのポケットの中に入った。


「アタシもずっとこの部屋で過ごしてたから、多少は光に弱いが大丈夫かい?」

「うん、光が強いときはオレのポケットの中に隠れてて!」

「あぁ、わかった。では、行くとするかの」

「よし! じゃあ、しゅっぱーつ!!」


 リュウはそうかけ声をかけると、言われた通りの扉をくぐり、道を進んでいく。

 そして最奥の行き止まりに着くと、そこには縦に長いはしご道があった。


 見上げると、あまりの高さにリュウは目が眩んだ。


「え、っと。ここ登るの?」

「そうじゃ。カッカッカッ、まだ若いのじゃからキビキビ登るがよいぞ」

「うへぇ。ここの城に来てからずっと運動させられてる気がする……」

「ほれほれ。文句を言ってる暇があったらさっさと登れ」

「ちぇ、他人事だと思って。登るのはオレなんだからなー」


 そうグチグチ言いながら、リュウははしごに手をかける。


「よし! 登るぞ!」

「その意気じゃ。頑張れ~」


 リュウは自分を鼓舞すると、上を見ながら登り始める。


 落ちたら絶対に怪我だけじゃ済まなそう高さにリュウは途中でビクビクしながらも、なるべく下を見ずにひたすら登っていく。

 早くヒナやヨシと再会してみんなで元の世界に帰るために、リュウは必死に上を目指して上へ上へと登り続けるのだった。

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