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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第十七話 脱出方法

「そういえば、この話がどう脱出に関わってくるの?」

「まぁ待て、気が短いやつよのう。ここからが本題じゃ。今から続きを話すからよく聞いておれ。……それでビョードーは、この世界をより自分の思い通りの世界にするために、ずっと魔法でこの世界を監視していた。そして、魔法を使いすぎたあまり、強い光に弱くなってしまったのじゃ」

「どういうこと? 魔法を使うと光に弱くなるの?」

「いや、それはちと語弊(ごへい)がある。魔法を使うから、というよりあやつの魔法はちょっと他の魔女とは違っておってな。ビョードーの魔法は暗がりで使うものだから、目が暗いところに慣れてしまったのじゃ」

「そういうことか」


 小さなビョードーに言われて、リュウは自分の特別な力を使ったときのことを思い出す。


 あのとき出た光は、リュウ自身もびっくりするほど強い光だった。


 とはいえ、それでもあの光の嫌がりようは異常だった。

 確かに、暗がりからいきなり明るいところに行ったとき、急激に眩しさを感じるとは言え、普通はあそこまで眩しがることはないだろう。


 だが、暗いのが普通になっていたのなら、あのビョードーの反応には納得だった。

 実際、魔法を使っているとき周りが暗かったから花火が散っているのがよく見えたし、もしかしたらあの花火みたいな魔法はビョードー特有のものかもしれない。

 あのときは襲われてたから楽しめなかったけれど、落ち着いて見れたらきっと綺麗だろうなとリュウは思った。


「ビョードーっていつも暗いところにいるの?」

「あぁ、そうじゃ。ヤツは常にこの世界の監視をしておる。他にすることもないからな。それで多くの魔法を使っているし、ヤツの魔法は暗がりのほうがわかりやすいから、反応を見るためにずっと暗い部屋に一人きりじゃ」

「そうなのか。ずっと一人で……」


 敵だけど、リュウはやっぱりビョードーは可哀想だと思う。

 友達もいなくて、人形のように操るだけの住人との暮らしは、本当にビョードーにとって楽しいものなのかと疑問だった。


 もし自分の思い通りになる世界だとしても、ヒナもヨシも家族もみんないない世界でたった一人で暮らせと言われたら、リュウは絶対に嫌だと思う。

 小さなビョードーもリュウと同じ考えなのだろうか、苦笑しながら頷いた。


「本当はもっと日を浴びたほうが、身体も心も健康になれるのだがのう。アタシの助言には耳も貸さないし、捨てた存在は用済みだからか、かれこれアタシはあやつにずっと会ってないがの」

「そうなの? ずっと会ってないのにわかるんだ」

「元は同じ存在だったものだからな。まだどこかしらが繋がっておるのだろう。なぜだか、あやつのことを感じることができるんじゃ。つらい、苦しい、などの負の感情は特に流れてきやすい」

「だったら、本当は何かしてあげたいんじゃないの?」

「うーん、そうさなぁ……ってずいぶんと話が脱線してしまったが、リュウは帰り方が知りたかったのだったな」


 話をむりやり変えられ、小さなビョードーに本題に戻される。


 けれど、リュウは納得できずにモヤモヤした。

 難しいことはわからない。でも、この小さなビョードーはあの大きなビョードーの家族や友達みたいになれるんじゃないのかなと思った。


「それで帰り方じゃが、まずは来たときと同じ人数、つまり他の二人を集めるのじゃ。彼らはきっとそれぞれこの城に隠されておるはずじゃ。だが、急がねばビョードーによって『普通』に変えられ、帰れなくなってしまう」

「えぇ!? 帰れなくなっちゃうの!?」


 さっきもし「普通」に書き換えられていたと思うと、リュウは恐くてぶるるっと震えた。


「そうじゃ。普通に書き換えられてしまうと色々な記憶も存在も何もかもが書き換えられて、ここの住人になってしまう」

「そんな……」

「そしてここからが重要だが、帰るためには絶対に三人揃っていないとならん。ここに来たときと同じようにみんなで揃ってから、この世界と繋がっている場所、リュウの場合は水たまりの氷だったか? その上で、『帰りたい!』とみんなで一緒に願うのじゃ」


 それを聞いて、「あれ?」とリュウは首を傾げる。


 その方法はさっきヒナが言っていたことと同じではないだろうか。

 そして、それは既に実行済みだ。


 小さなビョードーの言うことが正しければ、自分達はもう帰れてるはずじゃないか。


「え、ちょっと待って。来たときと同じように? って、もうさっきその方法はやってるけど、それで本当に帰れるの? さっき来たときと同じようにしてからみんなで帰りたいって願ったけど、帰れなかったよ?」

「それは本当にみんなで願ったか? 誰か一人でも心から帰りたいと思わなかったら帰れないんじゃ」

「誰か、一人でも……?」


 小さなビョードーに言われて、さっきの神社でのことを思い出す。

 そこで、引っかかっていたことを思い出した。


「そういえば、ヨシはなんだか帰れることにあんまり嬉しそうじゃなかった。あのときもオレとヒナは早く帰ろうと言っていたのに、ヨシはそういうことあんまり言ってなかった気がする」

「だとしたら、何か原因があるはずじゃ。それを解決せねば、リュウも友達も一生この世界にいることになる」

「ヨシ……」


 ヨシと親友なのに、ヨシの本当の気持ちがわかっていなかった自分に苛立つリュウ。

 それと同時に、もしかして親友だと思っていたのは自分だけだったらと思うと悲しくなってきた。


「ここでくよくよ悩んでいても仕方ない。聞くなら本人に聞くのが一番じゃ。そうじゃろう?」

「……そうだな。考えてたって、ヨシの本当の気持ちは想像はできても、実際の気持ちはわかんないし」


 確かに、ここで悩んでいても前に進めない。

 しかもこうしている間にもビョードーがヒナやヨシを「普通」に書き換えてしまうかもしれない。


 それはなんとしても阻止しなければならなかった。


「そういうもんじゃ。ということで、まずは脱出のためにも友達を見つけるのじゃ。だが、恐らくビョードーはお前たちを捕らえるために本気を出してくるだろう。そのときは光を使って逃げるのじゃ」

「光……」

「そうじゃ。光を使えば一時的に逃げられるはずだ。もちろん、ビョードーの魔力を分け与えられてでき存在であるカゲ連中にも有効じゃ」

「光って何でもいいの……?」

「あぁ、太陽の光だろうが、ライトの光だろうが効くはずじゃよ。だが、光を使って逃げられるのも一時的に過ぎない。あとは気力と体力の勝負だが、特別な力ばかり頼るのではなく、知恵も使うのだぞ」

「うん、わかった!」

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