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9 阿片窟の秘宝

「ハンメイとエバーグリーンが命をかけて守った宝。

それはメイティン様、貴方なのですわ。」


カメリアの言葉に、メイティンはぽかんとする。

それから「あんた何を言い出すんだい。」と笑いだした。


「あたしにそんな大層な価値があるわけないじゃないか。」


メイティンは笑うが、カメリアは真剣だ。


「メイティン様はアレクシス様にお話なさったのでしょう?

ご自身は東洋の国の高貴な方とハンメイの間にできた子だと。」


「それはそうだけど…まさか本当に?」


メイティンは目を丸くした。

カメリアは「その翡翠の簪が証拠でしてよ。」と言う。


「それほどまでに鮮やかな色の翡翠は、東洋の国でも大変希少で高価な品です。

手にすることができるのは、限られた高貴な身分の者だけですわ。」


動かぬ証拠を前に、メイティンはまだ信じられないようだった。


「そんなにもいいご身分の男に愛されていたなら、なんでハンメイはこんな街に逃げてきたのさ。」


身分の高い恋人と共に東洋の国にいたほうが、豊かな生活ができたのではないか。

しかしカメリアはメイティンの問いに、「貴方を守るためですわ。」と答えた。


「20年程前、ハンメイが東洋の国にいたと思われる頃は、東洋の国は西洋諸国に二度敗戦し内乱が頻発していた時期ですわ。

国の実権をめぐる争いから貴方を守るため、ハンメイはこの街へ逃げてきたのですわ。」


権力に手を伸ばす者にとって、世継ぎになり得る子は排除すべき敵である。

母親であるハンメイが遊女ならば表で争っても勝ち目はない。

暗殺を逃れるためには、東洋を離れるしかなかったのだ。


「ハンメイはこの街でメイティン様を育てていくつもりでした。

そこに現れたのが、フィッシャーだったのです。」


カメリアは「実は私、資本家のフィッシャーという方には覚えがございましてよ。」と打ち明ける。


「数年前、ある夜会でお見かけいたしましたわ。

貿易業を営んでいらっしゃるとお聞きしました。」


ヒルダが「フィッシャー氏の経営する商会は30年ほど前から東洋との貿易を行っていると記憶しています。」と捕捉した。


「フィッシャーは当然東洋の国の権力者たちとも関わりがあるでしょう。

フィッシャーは、権力者が政敵であるメイティン様を探していると気づいたのですわ。」


フィッシャーは東洋の権力者にメイティンの身柄を引き渡し、対価に大金を受け取ろうと目論んでいたのだ。


カメリアは「身分の低い者を見下すフィッシャーはカーマインを信用しなかったはずです。」と続ける。


「フィッシャーはカーマインに宝の正体を隠し、ハンメイを探し出すことだけを命じたのでしょう。

カーマインに狙われたのはハンメイです。

故にハンメイは我が子と別れることを選んだ。

ハンメイに託されたエバーグリーンは、メイティン様をこの阿片窟に届けたのです。」


ハンメイは同郷の者たちに娘を届けてくれとエバーグリーンに頼んだ。

自分が亡き後、娘を任せられるのは同郷の者だけだから。

エバーグリーンは、自身も裏切り者として追われる身でありながら、友人との約束を果たした。


宝の正体も知らないカーマインも、エバーグリーンが持ち逃げしたと思い込んでいるフィッシャーも、阿片窟にいるメイティンを見つけられなかったのだ。

17年の捜索の末、フィッシャーはエバーグリーンにたどり着いたが、彼女は決して口を割らず最期までメイティンを守り抜いた。


「あんた、本当にぜんぶわかってたんだね。」


感嘆を漏らしたおれに、カメリアは「私は推理しただけですわ。」と微笑んだ。


「お嬢さん、なかなかやるじゃないか。」


薄闇の中からそんな声が聞こえた。

振り返ったメイティンが彼を呼ぶ。


「兄者、聞いてたの。」


猫のように笑うハオランが立っていた。



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