驚き
活きる伝説
舞莉子自身は煌びやかな衣装を着て氷上を滑る姿に喜びを感じていた。
パパとママからすればオリンピックとは残念ながら縁がなかったとはいえど国内大会や世界選手権では常に表彰台に名を連ねていたことはまるで昨日の事の様に覚えている。もっと言えば、フィギュアスケートをそこまで詳しくない人でも名前や顔を知る方だと思っている。
その人がフィギュアスケートを何も知らない舞莉子を教えているとは夢なのか現実なのか分からずにいた。
練習が終わってリンクを上がると琢郎さんが忙しい中、態々《わざわざ》時間を割いて来てくれてありがとうと親しげなく言葉を交わしているのを見て琢郎さんは何者なのか?どういう交友関係なのか気にならずにはいられない。
練習後、近くにあるファミレスに向かう。
注文をして、待っている間に琢郎さんが実際に氷上で教えていてどうだった?そう聞いていた。
「フィギュアスケートを始めた子の殆どが最初氷に乗るのが怖くて転んだり、壁伝えで歩くのでやっと。それでも転ぶ子がいるのにそれもないってスゴいと思う。教えがいがあるし、何なら鍛えれば当時の私を越える逸材だと思うくらい。よくこんな子を見つけたね」
琢郎さんとお互いを称えあっていた。パパは顔にはピンときているにも関わらず名前を間違っていたら失礼だと思いつつも間違っていたら失礼ですが……。そう切り出してみる。
「私ったら名前も名乗らず失礼致しました。自分でも言うのは恥ずかしいですが氷上のプリンセスと呼ばれながらもオリンピックとは縁のなかった、氷室華織と申します。夫からは舞莉子ちゃんの話を常々聞いてますよ」
スゴい親しげに話をしているなと思ったらまさかの夫婦に驚き。琢郎さんにスカウトしてくれただけでも嬉しいのに華織さんにまで会えることに言葉が出ない。
テーブルに注文したものが並べられたものを食べながら舞莉子に対してお姉さんの教え方はどうだったかな?もしよかったらコーチとしてやっていこうと思うけどどうかな?
そう問いかけられていた。
「スゴく教え方上手くてとても分かりやすかった。舞莉子のコーチになってくれたら嬉しい。お願いします」
パパはこのやり取りを聞いて氷上のプリンセスの誘いを断ったりしたらどうしようかと思っていたがそうならずによかったと安堵していた。しばらく談笑しつつもお店の時計を眺める華織さん。
ヤバいもうこんな時間。もう出ないと新潟でスケート教室とテレビ出演があるから残り食べておいて。後、舞莉子ちゃんのパパとママに連絡先を送っておいて。そう言って足早に店を後にした。
忙しなくてすみませんと琢郎さんが言うと、LINEのQRコードで友達追加をして華織さんの連絡先を送られてきた。
華織さんは自分達が思っている以上に忙しく、その中で舞莉子を教えてくれてコーチになってもらうことにはありがたいなと思う。




