理解出来ない
初めての経験
7月1日を迎え、日を追う事にスピンもジャンプ、そして巷で有名になりスポーツ記者や新聞記者も「氷上のマドンナ松阪支店」に押しかけた時の「舞莉子スワンステップ」の出来も上々であった。
怪我をしたとは到底思えないくらい調子がいい。悪い事ではないが、この時期にこれほど調子がよかった事がないから逆に不安に感じていた。全日本ノービス選手権まで残り数ヶ月、ずっと調子を維持出来るのだろうかと考えていた。
過去の全日本ノービス選手権では予選を勝ち上がって出場していたから当然今年も予選を勝ち上がって舞莉子、結華ちゃん、コトリンの3人で表彰台を独占したい。
仮に今、全日本ノービス選手権予選が行われたのならば1位通過出来るくらいの手応えを感じるくらい調子がいい。しばらくこの調子のいい状態を保って本番には最大に持っていきたい。
その時、舞莉子にとって願ってもいなかった吉報がカオリンから伝えられた。それはこの年に行われる全日本ノービス選手権に関してだった。
この年の開催地は舞莉子の住む三重県松阪市、それも会場は普段練習を行っている「氷上のマドンナ松阪支店」に小学校最後の大会、地元で故郷に錦を飾る。即ち舞莉子にとって表彰台の1番上の1位を是が非でも狙わないといけないといつも以上に感じていた。
早速、コトリンや伊吹君に結華ちゃんの4人の松阪フィギュアカルテット旋風を全国に轟かせようといつにも増して気合いの入っていた舞莉子だった。
予選の前日、いつもの様に「氷上のマドンナ松阪支店」にて練習をする舞莉子とコトリン、伊吹君に結華ちゃんの4人。地元開催のため、学校を休む必要もなく練習に専念出来る。これが最大のアドバンテージだと考えていた。
前日練習も調子が最大かと思うくらいの出来で、翌日の予選を迎えられそうでひと安心する舞莉子。
予選当日、周りを見渡すとノービスBクラスの時に戦った子も何人もいた。公開練習の前に深呼吸をして氷に乗る舞莉子。前日練習よりもスビン、ジャンプ、そして代名詞の「舞莉子スワンステップ」とどれを取っても過去1番いいのではと思うくらいの出来でこれはいけると確信した。
そして予選が始まった。最初がコトリン、次に結華ちゃんで最後のトリに舞莉子という滑走順に決まった。
コトリンと結華ちゃんの演技を横目にストレッチをして自分の番を待つ舞莉子。
最後のトリ、舞莉子の番がやって来て郡の上に乗って滑ろうとすると会場から舞莉子コールが鳴り響く。聞いた事がないくらいの声援が背中にのしかかる。
前日練習でも公開練習でも調子がよかったのに本番になるとスピンもダメ、ジャンプも決まらない、代名詞でもある「舞莉子スワンステップ」のキレも全然ない。焦れば焦るほどドツボにハマる感じがした。
滑り終わって結果発表をされ、コトリンと結華ちゃんは予選通過したが舞莉子はというと出場した選手の中で最下位で終わった。
故郷に錦を飾るどころか故郷に泥を塗ってしまったのではと思うくらいの喪失感でいた舞莉子。予選が終わっても中々スケートリンク場から出る事が出来ないくらい落ち込んでいた。




