どうなったのか
ここはどこなのか
さっきまで救急車の中で泣きわめいていた舞莉子。気がついたら病室でいて寝ていた。起きるとどうやら鎮痛剤が注入され、足が吊るされて手も巻かれていた。痛いことには変わりないが、ちゃんと手足があって感覚がある。それならよかった。この状況をやっと理解する事が出来た。
周りを見渡すとパパやママだけでなく、華織さんやカオリンに伊吹君、結華ちゃんを始めとする「氷上のマドンナ松阪支店」に通う子たちやコーチにインストラクターと禪院お見舞いに来てくれていた。あれ?全員というには誰か足りない気がしていた。
おーい、誰か忘れていない?どことなくコトリンの様な声が聞こえるが本人の姿が見えず夢を見ているのかと錯覚をしている。それでも声がずっと聞こえる。病室なのに大きい声が響き渡る。
どこ見てるの?そっちじゃないよ。こっちこっち。まるで友達の待ち合わせのように響き渡るコトリンの声。だが、その姿が見えずにいて声をする方向に目を向ける。
やっと気づいたね。そうコトリンが言うと舞莉子と同じ様にベッドに横になっていた。隣にいた全員に舞莉子自身がどうなったのか、そしてコトリンが自分の看病に来てくれたのではなく似た境遇にいたのか説明を求めた。
何があったか知りたい?じゃあコトリンが説明するねと話し出した。
「スポーツ記者や新聞記者がいてみんながいつもよりも張り切って気合いも入っていた。いつも間隔を取ってやっていたけどあの時は別の子との距離が詰まっていて、ぶつかってその反動でアクセルジャンプを跳ぼうとしていたマリリンにぶつかった。どうしてコトリンが隣でベッドに横になっているのかというと、その時に靭帯切っちゃった」
靭帯を切るとはどれくらいの怪我なのか聞くとかなりの重症らしい。だが、コトリンを見るとホントに靭帯を切ったのかと思うくらい明るく元気でいつもみたいに笑顔でいる。どんなメンタルをしているのか聞きたい。
パパやママを始め、みんな仕事や用事がある中駆けつけてくれたみたいで舞莉子とコトリンの元気そうな姿を見て病室をあとにする。パパとママは仕事が終わり次第、交代で来ると伝えられた。
静かな小児病棟には舞莉子とコトリンがいる。退院出来るまで数週間なのか数ヶ月なのかはわからないこの期間どうやって過ごそうかと考えていた舞莉子。骨折が左手でまだよかった。利き手で全てを行うため、箸を持つことも出来なくならなかったのがよかったと考えていた。
同じ怪我をしてもどうしてコトリンはこんなにも明るくいられるのだろうか。手を骨折していなければ入院期間に本を読んだり出来るのになと思わず呟いた。
掛時計の針が動く音が静かな病室に響き渡る。食事の時間まで大人しく寝ていることにした舞莉子であった。




