1本
なんでかな
3月、高校を卒業する舞莉子とコトリンに結華ちゃんに伊吹君と4人。高校生活の殆どフィギュアスケートを重きに置いていたが、体育祭や学園祭に修学旅行と参加出来て充実した学校生活を送れた。
この制服ももうコスプレになるのかと思うと少し寂しい気持ちになる舞莉子とコトリンと結華ちゃん。卒業式で伊吹君も含めた4人で集まって写真を撮った。明日からフィギュアスケートに専念するけどみんなで切磋琢磨して頑張ろうと励ましあっていた。
卒業後の拠点は高校のスケートリンクで行う。このタイミングで変えることも出来たが、コーチやインストラクターさん、振付師さんを新たに探してリンクに慣れるのを考えたら慣れしたんだリンクにコーチやインストラクターさんの元でやるのがいいという事で舞莉子やコトリン、結華ちゃん、伊吹君。
次の試合はシーズン最終戦となる世界選手権に向けて練習を行っている。舞莉子としては、ここ数ヶ月を見渡しても3回転半を含む3回転や4回転ジャンプだけでなく、4回転半も調子がいい。スピンの精度やキレ、代名詞の「舞莉子スワンステップ」もいい。
調子いい時こそ驕らず謙虚に自分のペースを崩さずにやろう。そうしたないとオーバーワークで怪我に繋がるからだ。舞莉子にとって1番恐れているのは怪我になる。
そしてシーズン最終戦の世界選手権をイタリアで迎える。
調子いい状態を維持したまま試合に挑めると自負をしている舞莉子。公開練習でも今の自分ならば表彰台に乗っていい形でシーズンを終えられる。そう思っていた。
ショートプログラムで最初の3回転半を跳ぼうとする。着氷出来ず、切り替えて残りのジャンブやスピンに代名詞の「舞莉子スワンステップ」で挽回しようとしていた。
演技を終えて思わず涙を流した舞莉子。3回転半が上手くいかなかったのをそのまま引きずってしまって本来の演技が出来なくて悔しい。
スコアを見ると50点台で、順位は10位。
シニア転向してからここまで低い点数を見たのは見た事なかった。表彰台は事実上厳しくなったのは自分でも分かっていた。それならば切り替えて本来の演技が出来る様にする。それだけを考えていた。
翌日のフリープログラムに挑む舞莉子。公開練習を終え、順番が回ってきた。昨日のショートを取り返さないと。その気持ちはある。だが、そればかりに気が取られてしまってはいけないと何も考えずにリンクを滑る。
最初の4回転サルコウが1回転になってしまい、3回転ルッツも上手く着氷出来ない。跳ぶ予定のジャンプ全てが上手くいかない。それでもやり投げにならず演技を終えた。
自分でもこんなにも不甲斐ない演技をしたのは始めて。怪我以外でこんなにもフィギュアスケートで悔しいと感じたのはノービス、ジュニア含めて始めて。点数はフリープログラムで120点で合計170点と表示される。
リンクを後にしようとした時にある声が聞こえた。
「松阪舞莉子はもう潮時だよ。ここらで引退したら?」
「これでシーズン終わったから幕引きにはちょうどいいと思うよ。オリンピックに出たからって自惚れない方がいいよ」
それに返す言葉がなかった舞莉子。




