重圧
恥ずかしい
個人が終わってフィギュアスケートのラストを飾るのは団体戦になる。団体戦はアイスダンスから始まってペア、男子で最後に女子となる。即ち日本の最後を滑るのは女子代表の舞莉子になる。
自分の番が回って来る日までは基本的に同じ団体戦に出場選手を応援するために観客席から声援を送りつつ、試合後には近くのスケートリンクにて調整に務める舞莉子。
アイスダンスやペアの演技をちゃんと見たのが今回のオリンピックが初めてだった舞莉子。男女の体格差があるのにまるで双子なのかというくらい動きが揃っている。1人で跳ぶのも難しいのに2人で合わせて跳ぶ姿には感動と同時に相手を信頼出来てないと難しいし、強い絆を感じる。
翌日の男子が終わって日本は3位に付けていている。メダル確実だの「舞莉子スワンステップ」の松阪舞莉子だからと周りからその様な声が聞こえてきて緊張感が高まってくる。
そして舞莉子が出場する日。
違う国の選手が演技している様子を見ていつもなら緊張感すら楽しもうとしている舞莉子だが、自分の順番が回ってくるにつれて胸の鼓動がいつもよりも早い。こういう時こそ深呼吸と自分に言い聞かしていた。
深呼吸をして、リンクに乗る舞莉子。Mrs3回転との声が届いて滑走する。最初の3回転半が上手く着氷出来ず、3回転サルコウも回転不足を感じていて焦っているがジャンプが調子悪いならばスピンや代名詞の「舞莉子スワンステップ」だけでもと頭を切り替えて滑りきった。
得点は自分のベストには遠く及ばず4位に後退した。この瞬間、日本のメダル獲得はなくなった。舞莉子のせいで日本にメダルを齎すことが出来なかったと思ったらまだ全チームが終わっていないのに涙が出てきた。
表彰式が行われている間に誰にも会わずに選手村に帰りたい。そんな気持ちでいた舞莉子。アイスダンスの選手、ペアの選手、男子の選手がそれぞれの力を発揮してメダル圏内でバトンを舞莉子に渡してくれたと思うと合わせる顔がないからだと感じていた。
ひとまず顔を洗いに行こうとリンクを後にしようとした時、ギュッと抱きしめられた。日本の恥なのに舞莉子に優しくしてくれるのは誰だろうと思って顔を上げたら優愛さんがいて、声をかけてくれた。
「舞莉子ちゃんお疲れ様。もしかしたら自分の実力が発揮出来ずに悔しくてメダルの重圧もあったよね。日本に帰ったらあの子のせいでと後ろ指を差されるかも知れないけど気にしないでね。初出場のプレッシャーは誰にでもあるよ。立場は違うけどジュニアオリンピックに初めて出た時、自分の演技が出来なくて悔しい思いをしたから少し気持ちは分かるよ」
そこにいたのは優愛さんだけでなくて他の選手も舞莉子の元に来てくれて抱きしめてくれたり頭を撫でてくれたりして慰めてくれていた。何か1人足りない気がしていた。




