決戦
攻防戦
グランプリファイナル出場資格を得るために試合と練習に勤しむ非公式の試合にも出場しているからなのか、単純に試合感覚を忘れない様にしないといけないと思ったのか自分が思っている演技が出来ずにいる舞莉子。
直近の世界ジュニア選手権で優勝したコトリンと2位の舞莉子はジュニアグランプリシリーズの資格はあるものの怪我持ちの舞莉子にとって攻めの演技は大怪我に繋がるリスクがある。だが、ファイナルに進むには守りに入ってしまっては点が伸びない。
コトリンも小学生時代に靭帯を負傷しているものの、舞莉子が知る限りそれ以外での怪我は聞いた事がない。
攻めてファイナルにいけても本調子でない中で演技する事が果たして自分に出来るのだろうかと頭の中で渦巻く舞莉子。
面白くない演技だと思われてもいい。
「攻めの小鳥遊、守りの松阪」自分の中でこの構図でいい。コトリンや他の国から参加している選手よりも高い点数を取れば優勝。そしてグランプリファイナルに繋がると考る。
4回転を跳ばなくてもファイナル進出して勝てるくらいに今はスピンと代名詞「舞莉子スワンステップ」に注力しよう。女子の中でも3回転半を公式戦で成功させたのは世界を見渡しても数人しかいない。精度とキレを磨けば勝てる自信はある。
全てのグランプリシリーズの全日程が終えて日本ではコトリンと舞莉子が日本代表として、出場する事が決まり、補欠選手として結華ちゃんが登録された。
これがジュニアとして出場する最初で最後のグランプリファイナル。つまらない怪我をして、みすみす結華ちゃんに席を譲るつもりは毛頭ない。
別に結華ちゃんが嫌いだからという訳ではない。仲良しでかわいい結華ちゃんがいつもフィギュアスケートを頑張っているのは誰よりも知っているつもり。だからこそ負けたくないし勝負となれば負けたくない。
そうしてグランプリファイナルを迎えた。
開催地はイタリアで飛行機移動で、隣の席にはコトリンがいる。グランプリシリーズで外国人の選手とも試合が終われば握手やハグをしたりする間柄ではあるものの、同じ日本人のコトリンがいるだけで安心するな。
公開練習を終えて演技が始まる。
ショートプログラムからスピンと代名詞「舞莉子スワンステップ」の精度やキレとしては自分の中では納得のいくものでフリープログラムに進める事が決まった。
観衆からも「攻めの小鳥遊、守りの松阪」だというコアな日本人もいた。それでも構わないと気にしない舞莉子。
優勝はコトリンに譲ったものの、グランプリファイナルで抑えながらの演技をしても2位になれたのは収穫を得た舞莉子。
試合後、コトリンが話しかけてきた。
「マリリンって4回転跳べるよね?どうして跳ばないの?コトリンなら4回転跳ばなくても勝てるという算段ならコトリン寂しいな……」
コトリンや世界の選手を舐めてるつもりもなければ4回転跳ばなくても勝てるとは思ったことはない。コトリンも世界の選手もリスペクトはしているものの4回転を跳ばなかったのはここで怪我をするリスクを避けるためとコトリンに伝えた。




