底上げ
孤高
突然閉鎖された「氷上のマドンナの全支店」が入れなくなった。そこで舞莉子自身が普段行っている緩衝材を敷いてアルミ缶を置いて跳ぶ練習をする。こんな練習をしているフィギュアスケーターは世界を探してもいないだろうと感じていた。
果たして誰か来るのだろうかと待っている舞莉子。誰も来なくても氷の上で演技する時には1人だから。どうしても誰かと共にという気持ちはなく、いつも通り1人で淡々と練習するだけだとジャージを着替えるために1度家に帰って戻って来た。
すると何人か集まっていて、小学生にも満たない子からノービスBクラスや舞莉子よりも下の子からシニアクラスの高校生くらいのお姉さん迄多くの人が集まっていてそこにはコトリンや結華ちゃん、伊吹君もいた。
タブレットで時間を知らせるアラームが鳴る。全員ではないものの多くの人が来たことに驚いた。じゃあ付いてきてくださいとあまり人目のつかない公園に案内をする。
公園の真ん中で緩衝材を敷いてその手前にアルミ缶を置く舞莉子。いつものように高く積んで実際にやって見せる。
学校ではないがそれぞれのクラス順に並ぶ様に促す舞莉子。まず、自分の跳びたいジャンプを意識してこのアルミ缶を越えてください。跳びたいジャンプのイメージトレーニングをしながらやる様に。アルミ缶なので飛ばしても大丈夫だし、下に緩衝材を敷いているので痛みが軽減されると思うと伝えた。
小学生にも満たない子やノービスBクラスの子にはアルミ缶を1段にして跳んでもらう。終わったらノービスAクラスの子達はアルミ缶を2段、ジュニアとシニアクラスはアルミ缶を3段とクラスが上がるにつれてアルミ缶の高さも高くする。
舞莉子自身、この練習を始めてスグに出来る様になったわけではない。何度も転んで何度もアルミ缶を飛ばしながらつかんだこの感覚。だから慌てなくてもいいよと声をかける。
あくまでも遊びの延長線だけど、真剣にやって欲しいという気持ちはある。そのため、気が抜けている感じがあれば声をかけるしそれは高校生のお姉さんだろうが小学生にも満たない子だろうが関係ない。
出来る出来ないはそれぞれの年齢や個人の運動能力も違うため、個人的には出来るまでやって欲しいという気持ちはあるが待っている間に喋っているのはどうなのかなって思ってしまう。
初日だからと喋らないでお兄さんやお姉さん達の様子を見ていようねと優しく声をかける。タブレットを見るとこの練習を始めて1時間が経っていた。長くやればいいというものではないと最後のひと回りと声をかけた。
黙々と練習に取り組んでくれて嬉しい気持ちになる。いつまでこの練習をするのかは舞莉子も含めて誰も分からない。早くリンクで練習したいと考えていた。




