オムライス
しばらくすると、キッチンから食欲をそそる香りが漂ってきた。
フライパンを火から下ろす音。
器がテーブルに並べられる音。
「できたよ。」
彗は三人分の皿を運び、静かにテーブルへ置いた。
「簡単なものでごめん。」
そう言って並べられたのは、ふわりと卵が乗ったオムライスと、湯気の立つオニオンスープだった。
ケチャップで飾り気なく一本線が引かれたオムライス。
それでも、丁寧に作られたことが一目で分かる。
「……え。」
凪は思わず息を呑んだ。
「これ、水平君が全部作ったの?」
「うん。」
彗は当然のように頷く。
「一人暮らしみたいなものだから。」
その何気ない一言に、凪の胸が痛む。
波は目を輝かせていた。
「すごい……!」
「お店みたい!」
彗は少しだけ困ったように笑う。
「そこまでじゃないよ。」
「冷める前に食べよう。」
「「いただきます。」」
三人の声が重なる。
波は一口食べた瞬間、目を丸くした。
「お、おいしい……!」
思わず頬が緩む。
夢中でスプーンを動かし始めた。
凪もオムライスを口へ運ぶ。
卵はふんわりとしていて、ご飯の味付けも優しい。
オニオンスープは玉ねぎの甘みがしっかり溶け出し、冷えた体にじんわりと染み渡った。
「……本当に、おいしい。」
思わず漏れたその一言に、彗は少し照れくさそうに視線を逸らした。
「口に合ってよかった。」
その笑顔は控えめだった。
けれど凪には、その一瞬の笑顔が、学校で見せるどんな表情よりも自然に見えた。




