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水平線の向こうの彗星  作者: はまちゃん


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3/26

自傷行為

その日も、放課後に呼び出された。


旧校舎。


いつもと同じ場所。


いつもと同じ顔ぶれ。


拳が振るわれ、罵声が飛び交う。


抵抗しない彗を殴ることに飽きると、彼らは満足したように笑いながら帰っていった。


──いつもなら、それで終わりだった。


「やっぱり……おかしいよ」


静まり返った教室に、小さな声が響く。


振り向くと、北宮凪が立っていた。


唇を噛み締め、今にも泣き出しそうな顔で彗を見つめている。


その苦しそうな表情は、殴られた彗よりも痛そうに見えた。


「北宮さんも変わってるね」


彗は何事もなかったように制服の汚れを払い、乱れた髪を整える。


まるで転んで少し汚れただけのように。


「どうして……そんなこと言えるの?」


凪は震える声で問いかける。


彗は少し考えるように目を伏せてから、静かに答えた。


「どうにもならない状況に、自分から首を突っ込んで。」


「勝手に傷ついて。」


「勝手に苦しむ。」


その声には皮肉も怒りもない。


ただ事実を述べるような静けさだけがあった。


「北宮さんは優しい。」


「でも、その優しさは自分を傷つけるだけだ。」


凪は息を呑む。


この人は、やっぱり──。


自分の痛みには鈍感なのに、人の痛みだけは誰よりも見えている。


そんな思考を断ち切るように、彗は言葉を続けた。


「それは、自傷行為と一緒だ。」


その一言に、凪は目を見開いた。


「違う……!」


思わず叫ぶ。


「私は水平君を助けたいだけ!」


「助けたいなら。」


彗は静かに言う。


「まずは、自分を傷つけない方法を覚えた方がいい。」


凪は返す言葉を失った。


雨が、壊れた窓から静かに吹き込んでくる。


その音だけが、二人の沈黙を埋めていた。

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