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水平線の向こうの彗星  作者: はまちゃん


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眠い目

波が眠そうに目をこすった。


「……ふぁ。」


流星はまだ流れている。


けれど、小さな体には夜更かしは少し厳しかったようだ。


「眠い?」


凪が優しく尋ねる。


波は恥ずかしそうに笑って頷く。


「ちょっとだけ……。」


「じゃあ、帰ろっか。」


凪が立ち上がろうとした、その時だった。


「……もう少し。」


彗が珍しく引き止めた。


「え?」


凪が振り返る。


彗は水平線を見つめたまま、小さく続ける。


「あと五分だけ。」


「……ここにいたい。」


その言葉に、凪は何も言わず再び砂浜へ腰を下ろした。


波も彗の隣へちょこんと座る。


夜風が三人の間を通り抜ける。


静かな時間。


やがて凪が口を開いた。


「水平君。」


「ん?」


「この前、海で緑色の夕日を見たよね。」


彗は小さく頷く。


「あれから、ずっと気になってる。」


「私も。」


波も真剣な顔になる。


「夢じゃなかったよね。」


「夢じゃない。」


彗は即座に答えた。


「あれは確かに見た。」


その声には迷いがなかった。


「でも、何だったんだろう。」


凪が呟く。


彗は少し考え、それから首を横に振る。


「分からない。」


「でも。」


「嫌な予感だけはする。」


その一言で、空気が少しだけ変わる。


波も凪も、自然と夜空ではなく水平線へ目を向けた。


波音だけが静かに響く。


その時だった。


遠く、海の向こう。


水平線の一点が、ほんの一瞬だけ緑色に明滅した。


「……!」


彗が立ち上がる。


凪も息を呑む。


「あれ……!」


さっきまで穏やかだった海。


その暗い海原の果てで、確かに緑色の光が瞬いた。


しかし、次の瞬間には消えていた。


まるで最初から存在しなかったかのように。


波は彗の服の裾をぎゅっと掴む。


「お兄さん……。」


彗は返事をしない。


ただ、その光が消えた場所を見つめ続けていた。


胸の奥で、何かが軋む。


二年前。


櫂と見た夕焼け。


数日前の緑の夕日。


そして、今の光。


それらが一本の線で繋がろうとしている。


そんな予感だけが、静かに胸を締めつけていた。

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