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水平線の向こうの彗星  作者: はまちゃん


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願い事

それから数日後。


夏の熱気が少しだけ和らいだ夜、三人は恋路ヶ浜へ向かった。


街灯の少ない道を抜けると、急に世界が暗くなる。


その代わりに、海の気配が強くなった。


波の音が一定のリズムで寄せては返す。


「ここ……ほんとに星見えるの?」


波が不安そうに尋ねる。


「見える。」


彗は短く答え、砂浜へと足を踏み入れた。


凪も続く。


靴が砂に沈む感覚に、少しだけ現実感が薄れる。


三人は海岸に腰を下ろした。


空はまだ完全な夜ではない。


けれど、雲は少なく、星の気配がすでに広がっていた。


「流れ星って、どこから落ちてくるの?」


波が空を見上げながら言う。


「決まってない。」


彗は少し考えてから答える。


「空全体に散らばってる。」


「へぇ……。」


波は納得したように頷く。


凪はその横顔を見ながら、小さく息を吐いた。


「なんか、不思議だね。」


「こうやって、三人で夜に海にいるの。」


彗はその言葉に少しだけ目を細める。


「そうかもな。」


沈黙。


波の足が砂の上で小さく揺れる音だけが響く。


しばらくして。


――すっと、空に線が走った。


「……あ。」


波が息を呑む。


白い光が一瞬だけ夜空を切り裂き、そして消える。


「今の……!」


凪も目を見開く。


彗は空を見上げたまま、何も言わない。


また一つ。


また一つ。


夜空に小さな光が次々と流れていく。


波は両手を合わせる。


「お願い……!」


「お願い……!」


必死に願い事を唱える姿に、凪は少し笑う。


「そんなにいっぱい願ったらダメじゃない?」


「だっていっぱい流れてるもん!」


そのやり取りの横で、彗はただ静かに空を見ていた。


流れる光。


消えていく光。


それはまるで、過去の誰かのようでもあり、今の時間のようでもあった。


ふと、凪が呟く。


「ねぇ、水平君。」


「ん。」


「来年も……またここ来れるかな。」


彗は少しだけ間を置く。


空を見上げたまま、静かに言った。


「来れる。」


断言だった。


理由も根拠もない。


それでも、不思議と揺るがない声だった。


凪はその言葉に、ほんの少しだけ安心したように笑う。


波はまだ空に向かって願い事を続けている。


夜空には、絶え間なく流星が走っていた。


その光の中で、三人の時間だけがゆっくりと流れていた。

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