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来年も
花火が少し落ち着き始めた頃。
夜空には余韻のように、煙と光の残像だけが漂っていた。
人々のざわめきの中で、波が小さく呟く。
「来年も行こうね。」
その声は、周囲の音に紛れそうなほど小さい。
けれど、彗にははっきり届いた。
一瞬だけ、手が止まる。
“来年”。
その言葉が、少しだけ遠く感じる。
今までの彗にとって、未来は曖昧なものだった。
約束する意味も、あまり分からなかった。
それでも今は。
隣には凪がいて。
その少し前には、飴りんごを持った波がいて。
「……。」
彗は夜空を見上げたまま、短く息を吐く。
「そうだな。」
それだけ言った。
否定でも肯定でもない、けれど逃げでもない言葉。
波はそれを聞いて嬉しそうに笑う。
「やった!」
凪も少しだけ目を細める。
「うん、来年も行こう。」
その言葉が、やけに自然に響いた。
花火の最後の一発が、夜空に大きく開く。
光が消えたあとも、余韻だけがしばらく残っていた。
その余韻の中で、三人はしばらく黙ったまま、同じ空を見上げていた。




