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水平線の向こうの彗星  作者: はまちゃん


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22/26

花火

矢作橋の上は、すでに多くの人で埋まっていた。


肩が触れそうなほどの距離。


それでも誰も気にせず、同じ方向を見上げている。


川面には街の灯りが揺れ、夜風が少しだけ熱を冷ましていた。


波は飴りんごを両手で大事そうに持ちながら、きょろきょろと周囲を見回している。


「すごい人……!」


「はぐれるなよ。」


彗は自然に凪と波の少し後ろに立つ。


守る位置。


それがいつの間にか癖になっていた。


凪はそんな彗を見て、小さく笑う。


「なんか、慣れてきたね。」


「何が。」


「こういうの。」


言われて、彗は少しだけ視線を逸らす。


否定はできなかった。


その時だった。


――ドン。


空気が震えた。


一瞬遅れて、夜空に大輪の光が広がる。


花火。


赤、青、金。


次々と夜空を塗り替えていく。


「わぁ……!」


波が思わず声を上げる。


飴りんごを持ったまま、完全に花火に見入っていた。


凪も息を呑む。


「きれい……。」


彗は何も言わず、ただ空を見上げていた。


光が次々と消えては生まれる。


その繰り返し。


一瞬のために燃え上がって、すぐに消えていく世界。


どこかそれが、あの日見た緑の夕日と重なる気がした。


理由は分からない。


ただ、胸の奥が少しだけざわつく。


波が小さく笑う。


「お兄さん、すごいねこれ!」


「うん。」


短い返事。


それでも、今はそれで十分だった。


凪はそっと彗の横顔を見る。


何かを思い出しているような顔。


それでも、その視線の先には確かに今があった。


花火は次々と打ち上がり、夜空を埋め尽くしていく。


そしてその光の下で、三人はただ同じ空を見上げていた。

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