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水平線の向こうの彗星  作者: はまちゃん


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また明日

「……水平君。」


遠くから、誰かの声が聞こえる。


「水平君……!」


その声が少しずつ近づいてくる。


「お兄さん!」


はっと目を開けた。


薄暗い部屋。


カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。


息が荒い。


額には冷たい汗が滲んでいた。


「大丈夫?」


すぐ隣で、凪が心配そうに覗き込んでいる。


反対側では波が不安そうに彗の服の袖を握っていた。


「すごいうなされてたよ……。」


「ずっと『櫂』って名前を呼んでた。」


その一言に、彗の瞳がわずかに揺れる。


「……そう。」


短く答えるだけだった。


「怖い夢だったの?」


波がおそるおそる尋ねる。


彗はしばらく黙っていた。


夢の中の夕焼け。


櫂の笑顔。


「また明日。」


そして、その翌日から二度と会えなかったこと。


胸の奥が締めつけられる。


「……昔の夢。」


それだけ言って、小さく笑おうとする。


しかし、その笑顔はうまく作れなかった。


凪はその表情を見て、静かに彗の手へ自分の手を重ねた。


「無理に話さなくていい。」


「でも、一人で抱えなくてもいいから。」


波も反対側から彗の腕をぎゅっと抱きしめる。


「お兄さん。」


「もう夢じゃないよ。」


「私たちがいるから。」


二人の体温が、少しずつ彗の震えを落ち着かせていく。


彗は何も言わない。


ただ、小さく目を閉じた。


──あの日はもう戻らない。


それでも今は、一人ではなかった。

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