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クレーンゲーム

気がつけば、約束の土曜日になっていた。


三人は近くのショッピングモールへ来ていた。


買うものは特別な物ではない。


洗剤や食品、日用品。


凪は特売品を見比べながら、必要な物を一つずつ買い物かごへ入れていく。


波はその横を楽しそうに歩き、彗は少し後ろから二人を見守っていた。


生活用品を一通り買い終えた頃。


ゲームセンターの前を通りかかる。


「……。」


波の足がぴたりと止まった。


ガラスケースの向こう。


白い犬のぬいぐるみが、こちらを見つめるように座っている。


波は何も言わない。


ただ、そのぬいぐるみから目を離せずにいた。


彗はその視線を追う。


「欲しいのか?」


波は少し驚き、それから遠慮がちに何度も頷いた。


「……うん。」


「でも、高いからいい。」


そう言って歩き出そうとする。


「分かった。」


彗はゲーム機の前へ立った。


「取ってやる。」


「ほんと!?」


波の顔が一気に明るくなる。


一方で、凪は慌てて彗の腕を引いた。


「ま、待って!」


「そんなの悪いよ。」


「お金もかかるし……。」


彗は静かに首を横に振る。


「大丈夫。」


「欲しいなら、挑戦してみる。」


それだけ言うと、百円玉を投入した。


アームがゆっくりと動き出す。


一回目。


惜しくも少し動いただけ。


二回目。


向きを変えたものの、あと一歩届かない。


「惜しい……!」


波は思わず手を握り締める。


彗は画面をじっと見つめ、景品の重心を確かめる。


「次でいける。」


三回目。


アームが犬のぬいぐるみの脇を押し、景品がゆっくりと傾く。


そして――。


コトン。


景品が取り出し口へ落ちた。


「やったぁ!!」


波は飛び跳ねるように喜ぶ。


彗は景品を取り出し、しゃがんで波へ差し出した。


「はい。」


「ありがとう、お兄さん!」


波はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、満面の笑みを浮かべる。


その笑顔を見て、彗も小さく笑った。


凪はそんな二人を見つめながら、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。


――この三週間で、彗は少しずつ笑うようになっている。


その変化が、凪には何よりもうれしかった。



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