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第2話 異世界転生の神と出会い、ハーレムを要求した結果



そうして俺は、一度死んだ。


 どれだけの時間が経ったのかはわからない。

 痛みも衝撃も、すべてが遠のいた後、ふと意識が浮上した。


 目を開けると——そこは果てしなく白い空間だった。


 形も境界も存在しない、真っ白な虚空。

 まるで無限に広がる白い紙の中に、自分という存在だけがぽつんと浮かんでいるような、奇妙な感覚。

 足の下に地面はなく、手を伸ばしても何も触れない。ただ漂っている。重力すら感じない不思議な世界。


 ……いや、俺だけじゃなかった。


 俺の正面、少し離れたところに、ぼんやりと黒い影が立っていた。


 人型をしているのに、人とは到底呼べない存在。ただの黒いシルエットのような影で、輪郭が少し揺らめいている。

 その影がゆっくりと口を開いた。男とも女ともつかない、奇妙に反響する声だった。


「ははっ、てめえみたいなバカは本当に初めて見たぞ!」


 からかうというより、純粋に興奮して楽しんでいるような口調。まるで珍しい虫でも見つけた子供みたいなノリだ。


「秋葉原玄人。トラックにわざわざ突っ込んで死ぬような狂った奴は久しぶりだな……。

 普通は嫌々死ぬか、事故か、病気かで来るもんだが、お前は自ら飛び込んだって? 笑えるわ」


 こいつは、おそらく俺を異世界に送る神みたいな存在だろう。

 ゲームやラノベでよく出てくる、あの「転生の神様」系。

 でもいきなり狂人扱いされるのは、少し癪に障る。


「ちょっと待てよ。俺は狂ってないぞ。ただ……普通の人生がつまらなかっただけだ」


 すると影は楽しそうに肩を震わせて笑った。影なのに、ちゃんと笑っているのがわかる。


「そうか? 常識的に考えれば、お前は相当な狂人……いや、立派なサイコパスに見えるけどな。

 死ぬ瞬間の痛みが80%で、残り20%が歓喜だって? 普通じゃねえよ」


「そんなことどうでもいいだろ。さっさと本題に入れよ。

 俺は異世界に転生したいんだ。早くしてくれ」


「せっつくのか……? ふふっ、まあいい。最初からそのつもりだったさ。

 再び生まれるには、元々一度死ぬ必要があるからな。ルールだ」


 影は少し間を置いて、興味深そうに俺を観察するような仕草をした。

 影に目はないはずなのに、視線を感じる。


「しかし、お前みたいな変わった奴は本当に珍しい。

 特別にチャンスをやろうじゃないか。

 で、どんな世界に転生したいんだ? 希望を言ってみろ」


 俺は即答した。胸の内でずっと温めていた夢を、声に出す。


「決まってるだろ! 異世界だよ! 魔法があって、剣と魔法のファンタジー世界!

 巨乳美少女がわんさかいて、ハーレムを築けるような、ラノベに出てくる定番のあの感じ!

 チート能力も欲しいけど、まあそれはおまけだ。とにかく美少女たちに囲まれて、最強になって、派手な人生を送りたい!」


 影はしばらく無言だった。

 そして、どこか含みのある声で答えた。


「了解した」


「マジで? 本当に送ってくれるのか?」


「ああ。問題ない」


 その瞬間、再び意識が遠のき始めた。

 体がふわふわと溶けるような感覚。視界が白から灰色へ、そして暗闇へと変わっていく。


 薄れゆく意識の中で、影が小さく、しかしはっきりとした声で呟くのが聞こえた。


「……ただし、お前みたいなサイコ気質の奴は、

 主人公として普通に転生させるより、ずっと面白い道があるんだがな」


 その言葉の意味をちゃんと理解する間もなく、

 俺の意識は再び深い闇の底へと吸い込まれていった。


 ……次に目が覚めたとき、

 俺は自分がどんな状況に置かれているのか、まだ何も知らなかった。

 ただ、胸の奥にわずかな違和感だけが残っていた。

 まるで、何か大切なものがすり替わったような——そんな予感。



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