第25話 つかれたつぎのひの、あさ
幸せで、あまりにも楽しすぎた土曜日は、光のような速さで終わった。
そしてもう、日曜日だ。
窓から差し込む、夏の厳しく強い光。
遠くで鳴く鳥の声。
相変わらず近くで聞こえる、田舎の土が塗り替えられていく音。
遮光カーテンが、風でゆっくり揺靡いている。
「んん〜...。」
私は布団の中で伸びをした。
すると。腕と足が内側から殴られたかのような、少し鈍い痛みが走る。
「いだだだだ……。」
筋肉痛かなぁ...。痛みのあまり、体を起こすことも煩わしい。
昨日、川ではしゃぎすぎたかな...。
特にミナを追いかけ回した時、かなり全力で走ったし...。
「……。」
死んだ魚のような目で、寝転んだままぼーっと天井を見つめる。
今日はバイトもない。講義もない。完全なオフだ。
...何しよう。
そんなことを考えていると。
ぱたぱたぱた。
何かが、ものすごいスピードで廊下を駆ける音。
そして次の瞬間。
ばぁん!
勢いよく扉が開いた。廊下は窓が空いており、それにより新鮮な澄んだ、それでも生暖かくてちょっと不快な空気が部屋に入り込む。
「さな!おはよう!」
扉の向こうで顔を覗かせたのは、元気いっぱいのナナ。
...朝からエネルギー量が違いすぎる。
「お、おはよぉ...。」
「まだねむいの?」
そう言って、軽い足取りのまま部屋に入ってくる。
「眠いっていうか、疲れてる...。」
するとナナは、笑みを浮かべながらベッドに乗ってきた。
ボスッ。
「つかれたの?」
「昨日いっぱい遊んだからね〜。」
そう言うと、ナナは少し嬉しそうに笑った。
「きのう、たのしかった!」
私とは対照的に、本当に高くて大きな声で、寝起きの私に言った。
「ね〜。」
私も笑う。
その時。
「おはよ〜。」
ミナも眠そうに目を擦りながら、ゆっくり部屋に入ってきた。
長い髪が、真上にも真横にもピョーンとなっている。珍しい。
「ミナも眠そうじゃん。」
「...サナの寝顔見ながら夜更かししてたから。」
むにゃむにゃしながら言った。...ってちょっと待って!?
「怖いこと言うな!?」
「あ...冗談だよ冗談。」
ミナは、まだ目を擦っている。そして、明らかに棒読み。
...絶対適当なこと言ってる...。私はそう言って、呆れながらも少し微笑んだ。
そしてミナも、ゆっくりとそのままベッドの横に座る。
「今日はどうする?」
「ん〜……。」
私は少し考える。
正直、家でのんびりするだけでも幸せな気がする。
でも。ナナは、きらきらした瞳で、こちらを見ていた。...なんだ...その何かを期待しているような眼差しは...!いやいやいや、今日はもうどこも行きたくない!!疲れた!!
「ミナぁ...」
ミナに助けを求め、隣を見る。
「...ぐかー。」
...なんてマヌケな面だ。口を大きく開いて、こんなに大きな鼻ちょうちんを膨らませて...。
...って何寝てんねん。私は枕で、ミナの頭を叩く。ボフッ。
「うわぁ...!って夢か...。って寝てた!?」
ミナは、少し大きな声を出して目を見開いた。
「うわぁ...恥ずかしい...!」
顔を真っ赤にして、両手でそれを隠すように覆った。...あんなボサボサな髪を私に見せて、何言ってんだか...。
「ナナ、今日は何したい?」
聞くと、ナナは頬を膨らませて悩み始めた。
「えーっとね...。」
真剣な顔。目は思い切り、私の枕を睨んでいるような。
「...おうちでも、たのしい!」
その答えに、私とミナは目を丸くした。
「...え。」
「今日は、おうちでみんなといたい!」
満面の笑み。
...なんだろう。
胸の奥が、少しだけ温かくなるのを感じる。
ミナも、優しく笑った。いつも姉のような、包み込んでくれるような笑顔で。
「じゃあ今日は、おうちでゆっくりしよっか。」
「やったー!」
ナナが飛び跳ねる。
その勢いで、私の上に倒れ込んできた。
「ぐぇっ!?」
「さな、くっしょん!」
「誰がクッションじゃー!!」
「わー!さなおこったー!!」
ナナはすぐにベッドから飛び降りて、大きな足音を立てながら階段を駆け下りる。私も、重い体を即座に起こして。廊下に飛び出す。
「まーてー!!!」
廊下の生暖かい空気なんて気にせず、ナナの背中を追う。
そして、微笑みながらのんびりと、私たちの後に続くミナ。
いつもの朝。そして、いつもの家に、朝から賑やかな笑い声が響いた。




