第21話 仕事用
料理を運んでいる、人型の個体に目をやる。これが仕事用か...。
「ご注文のチーズインハンバーグをお持ちしました。」
抑揚の少ない声。
でも動きは滑らかで、皿を置く所作も、人間とほとんど変わらない。
「すごいねぇ...。ぱっと見、人間と区別つかないや。」
私は感心しながら呟く。
「最近の仕事用HAは特に精密だからね〜。」
その時。
「ねぇみな。」
ナナが、料理を運んでいくHAをじーっと見つめながら、小さく聞いた。
「なに?」
「...あのひと、つかれてないの...?」
私は少し驚く。
「え?」
ナナは続ける。
「ずっとあるいてる...。おさらいっぱいもってる...。なのに、ぜんぜんつかれたっていわない...。」
ミナが、一瞬だけ黙った。
「仕事用HAはね、“疲れる”って感覚がかなり抑えられてるの。」
「おさえられてる...?」
「うん。仕事をずっと続けられるように。」
ナナは、少しだけ俯く。
「...へんなの...。」
「へん?」
「つかれたら、おやすみしたいのに...。」
その言葉に、私は思わずナナを見る。
ナナは、スプーンをぎゅっと握っていた。
「ナナは、疲れるの?」
私が聞く。
「うん...。おべんきょうすると、あたまあつくなる...。いっぱいあるくと、からだおもい...。」
「そっか。」
私は、ナナの頭を撫でた。
ナナは、キョトンとしている。
疲れたり、眠かったり、お腹が空いたり。
誰かと笑って、嬉しくなったり。
本当に、Androidなのか疑うくらい。人間みたいで、愛おしい。
その時。ガシャン。
遠くで、大きな音がした。店内の空気が、一瞬止まる。
見ると、仕事用HAの一体が、皿を床に落としていた。
「エラーを確認。申し訳ございません。」
機械的な声。
周囲の客は少しざわついたが、HAは感情一つ見せず、床に散らばった破片を拾い始める。
...なんだろう。妙に、怖かった。
「...。」
隣を見る。
ナナが、震えていた。
「ナナ?」
「...。」
顔色が悪い。さっきまで楽しそうだったのに。
ナナは、そのHAを見つめたまま、小さく呟いた。
「……こわれたのに……はたらいてる……。」
ミナの表情が、凍った。




