表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された巫女ですが、神と妖に愛されて辺境を再生します  作者: KATARIBE


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/55

第52話「踏み越える境界」

その日、街の空気は明らかに違っていた。

ざわつく気配。抑えきれない圧。

——来る。

誰もが言葉にせず、それを感じていた。


「……来たわね」

凛が低く呟く。


街の入口。

整然と並ぶ神社勢力の人間たち。

前回までの“使者”ではない。


——実行部隊。


「本日をもって、この地の収穫物、及び財を正式に接収する」

冷たい声が響く。

拒否権など、最初から存在しない言い方だった。


ざわり、と街人たちが揺れる。


その前に、小夜が一歩出た。


「……ここは、渡しません」


静かだった。

けれど、その声は街全体に染み渡るように響いた。


「これは、この街の人たちのものです」


一瞬の沈黙。


「——排除しろ」


次の瞬間。

空気が裂けた。


神社勢力の術式が展開される。

地面に刻まれる符。

空間を縛る見えない力。


「来るわよ!」

凛の声と同時に——


小夜が手を振る。


光。


一瞬で街の中心から放たれたそれは、地を走り、空気を満たし、結界となって立ち上がる。


しかし——


「っ……!」


小夜の呼吸が、乱れた。


強い。

これまでとは違う。


押し返せているはずなのに、

“削られている”。


内側から。


「小夜!」


火乃香が駆け出す。

同時に、自身の術式を展開する。


「ここは——通さない!」


彼女の力が、神社側の術と正面からぶつかる。


拮抗。


「……火乃香」

その名を呼ぶ声は、小さく震えていた。


けれど火乃香は振り向かない。


「私はもう、あちら側じゃない」


一瞬だけ。


ほんの一瞬だけ。


迷いが消えた。


「守る側に立つって、決めたのよ」


その言葉と同時に、

術の出力が跳ね上がる。


——だが。


「甘いな」


冷たい声。


次の瞬間、

別系統の術が割り込んだ。


火乃香の術式が、崩される。


「なっ……!」


崩壊の衝撃が、火乃香を揺らす。


「組織に背く者が、正義を語るな」


その言葉は、刃のようだった。


火乃香の瞳が揺れる。


その一瞬の隙。


——踏み込まれる。


「……させない」


凛が前に出た。


静かに。

確実に。


その動きは無駄がなく、研ぎ澄まされている。


「火乃香、下がって」


「でも——」


「今は、役割を守って」


凛の一言で、火乃香は息を飲む。


「あなたは“揺れない軸”になりなさい」


その言葉は、導きだった。


火乃香は歯を食いしばり、位置を戻す。


その瞬間——


凛の術が展開される。


広くはない。

だが、精密。


「——そこ」


ピンポイントで、神社勢力の術の“綻び”を突く。


バキ、と。


空間が歪んだ。


「……なるほど」

敵の声がわずかに低くなる。


「巡り巫女か」


評価が変わる。


戦場の空気が変わる。


——だが。


そのすべての中心にいるのは。


小夜だった。


「……はぁ、……っ」


呼吸が浅い。


指先の感覚が——ほとんどない。


(まだ……足りない)


それでも。


(守るって、決めたから)


小夜は、手を上げる。


「——全部、繋ぐ」


その瞬間。


光が、質を変えた。


広げるのではなく。


“結ぶ”。


人と人。

土地と人。

意思と意思。


見えないものが、線になって繋がる。


街全体が、一つの“場”になる。


「……これは」

凛の目が見開かれる。


「神域の再定義……?」


火乃香も息を呑む。


「こんな使い方……」


光が、暴力ではなく。


“拒絶”になる。


侵入できない。


踏み込めない。


拒まれる。


神社勢力の者たちが、初めて足を止めた。


完全に。


「……撤退だ」


低い声。


わずかな沈黙の後。


彼らは引いた。


完全な敗北ではない。


だが——


“突破できなかった”。


それがすべてだった。


静寂が戻る。


その瞬間。


「……っ」


小夜の膝が、崩れた。


「小夜!」

火乃香が駆け寄る。


凛もすぐに支える。


小夜の体は、冷たかった。


明らかに。


今までよりも。


「……代償、進んでる」

凛が低く呟く。


火乃香の顔が歪む。


「こんなの……っ」


小夜は、かすかに笑った。


「……でも、守れました」


その一言に。


誰も、否定できなかった。


——勝ったのだ。


だが同時に。


確実に。


何かが、削られた。



---


——三人で掴んだ初勝利。

——そして、それと引き換えに進んだ“不可逆の代償”。


次に削れるのは、何か。


それはまだ、誰も知らない。

面白いと思ったら、下の☆で評価していただけると励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ