第40話「迅の告白」
夜の街は静かで、広場の灯りだけが柔らかく二人を照らしていた。小夜と迅は祭りの片付けを手伝いながら、自然と人目を避けるように歩いていた。
「……小夜、ちょっといいか」
その声は普段より低く、落ち着かない気配が混ざっている。小夜は足を止め、顔を上げる。
「……はい、迅さん」
敬語が出てしまう自分に、少し照れくさい気持ちを覚える。だが、今はそれどころではないと感じた。
迅は少し間を置き、目を伏せたまま話し始める。
「……俺は、ずっと……逃げてきたんだ。自分から目を背けて、信じられるものも、守れるものもないと思っていた」
小夜は静かに耳を傾ける。彼の手が微かに震えていることに気づく。
「……親にも、神にも、……自分にも。誰にも、俺は必要とされないって、思っていた」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。普段は強くて、頼れる迅が、今、目の前で弱さをさらけ出している。
「……でも、小夜、お前と出会って、……少しずつ変わったんだ」
小夜は息を呑む。震える声で、「……変わった?」と尋ねると、迅は少し微笑んだ。
「……ああ。お前が俺を、俺の存在を、否定しないでいてくれる。……だから、逃げなくていいんだって、初めて思えた」
その告白に、小夜の胸は熱くなる。言葉以上に伝わる、彼の覚悟と安心感。
迅は小夜の手をそっと握る。
「……俺はもう、逃げない。小夜のそばで、守りたいと思う。……俺自身も、変わっていく」
小夜は握り返し、心の中で決意する。——この人と一緒に歩くなら、私も強くならなきゃ。
二人の間に、言葉以上の理解と信頼が流れる。過去の影は完全には消えないけれど、今は確かに、互いの光を感じられる距離になったのだった。
水月の風がそっと吹き、二人を優しく包む。夜の静けさの中で、迅は自分の心と向き合い、小夜との絆を再確認した——そして、初めて自分の心を解き放ったのだった。
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