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Aetanyx(エタニクス)−The Spiral of Fate−  作者: 岩江公一
第一部〈運命の啓示〉第一章:災厄の予兆
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第1話「今、此処に在るモノ」2

昔々のとある一人の少年のお話。

ある時、この世界を蝕む悪魔が現れました。

その悪魔は言いました。


――この世界を破壊し、新たな世界を作り

我(われ)が王様になってやる。


と。

世界は、恐怖と混乱に包まれました。


人々は領地と資源を求め争い続け、

弱き者達は、神様に願いました。


――どうか、我らに救いをもたらして下さい。


そんな中、世界の平和を守る為に立ち上がった少年がいました。

彼はたくさんの国を渡り、たくさんの人達と出会い、

戦争を終わらせ、悪魔を追い払うために戦いました。

しかし、戦争は止むことを知らず、

悪魔の恐怖を取り除くことはできませんでした。


そこで少年は、各国の代表にこう告げました。


――この世界の中心に、悪魔を追い払うためのお守りとして、

"平和の象徴"を造ろう。

そうすれば、資源を取り合うことも、人と人が争い合うことも無くなるだろう。


「狭間の塔のことだね」

「ちょっとルーク!話を遮らないで!」

「ご、ごめん……」


コホンッ!

えーっと、

少年は、各国の王族やたくさんの人達と協力して、一つの「塔」を造りました。

そして、それを守る"アルカノゥス"という守護霊を各国の代表である王たちに授け、役割を持たせました。

そして、ある約束を交わしたのです。


――時が来たら、また会おう。


そう言い残すと少年は塔の一部となり、世界から悪魔を追い払う役割につき、

長い長い、眠りにつきました。


やがて戦争は終わり。

世界に平穏な日々が再び訪れました。


人々は少年に感謝の意を込めて、

"戦争と平和の狭間に建つ塔"という意味を込め、

「狭間の塔」

そして、

その塔の建つルクスカリア中央部を『聖の大地』と名前を付け、特別な日にしか立ち入ることのできない、聖なる場所としました。


そして人々は待ち続けました。

いつの日か訪れる、約束の日を夢見て……。



「――おしまい!」


フェリシアは塀に座りながら、満面の笑みで物語を締めくくる。

それを聞いていたルークとアナスタシアは、その解放感から雪崩のように崩れた。その様子を見てフェリシアは、クスクスと笑った。


「フェ、フェリシア……長いよ……」

「この件に関してはあなたに同感ですわ……」


ルークとアナスタシアは不満をこぼす。

その反応に、拗ねるようにフェリシアは反論する。


「長くないわ!普通よ!」


「そう言われても……」

「会う度に聞かされる僕たちの身にもなってよ……」


「そうですわよ姉様……」

「これでもう50回以上になりますわ……。」


そんな不満をこぼしていると、正門が開くときに鳴る鐘の音が聞こえてきた。

フェリシアは塀から飛び降り、アナスタシアの手を取って駆けていく。


「アナスタシア!行くわよ!!」

「ちょっ……姉様……!」


ルークは二人の姿を見ながら一息つき、店の後片付けを再開する。すると、フェリシアが振り返り手を振りながら大声で呼びかける


「ルーク!!はやく~!!」


ルークはやれやれといった表情を浮かべながら答える。


「片付け終わったらすぐ行くよ!!」


それを聞いたフェリシアは「待ってるからね」と言いながら鐘の音が聞こえる方へアナスタシアを引っ張りながら駆けていった。

アナスタシアはされるがままに身を委ねフェリシアと共に群衆の中に消えていった。


ルークは二人を見送ると止まっていた手を再び動かし始めた。


その時、ルークの耳元に謎の声が囁いた。


『――■■■■■』


この世の言葉とは思えないほどに、雑音交じりの声だった。

ルークは慌てて振り返るが、そこには誰もいない。額に嫌な汗が滲み出る。

風が止み、空気がぴたりと張りつめる。

胸の奥に、形のない“ざわめき”が灯る。

何かが起こる――そんな不安を抱えたまま、ルークは店じまいを終え、2人の消えていった方向へと歩いていった。


大広間へ行くと、大勢の人だかりの中心に道ができており、そこをたくさんの兵士や、荷馬車が隊列を組んで進んでいた。

ガッチリと守りを固められた場所には国王の姿もあった。

群衆からは「おかえりなさいませ!」「ご無事で何よりでした!」といった歓声が鳴りやまなかった。


ルークは人だかりの波を掻き分けなんとか先頭列に出て辺りを見渡し、フェリシアとアナスタシアを探す。


2人を見つけるのは簡単だったが、声をかけるのは難しそうだった。

遠くから二人の様子を窺(うかが)っていたルークだったが、静かにその場を離れようとしたその時、

空にまだ昼間だというのにやけに色濃く映る黒い星のようなものが浮かんでいるのが見えた。

それは生物のように定期的に脈動しているかのように見えた。


さっきの変な声と、昼間に浮かぶ黒い星のせいで、胸の奥の「不安」を残したまま、ルークは帰路についた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ルークと別れてすぐ、フェリシアとアナスタシアは父王が通るであろう通りの最前列に立っていた。


「姉様……ほんとうに大丈夫……?」

「さっきから顔色が……」


アナスタシアは、ルークと別れてからずっと暗い顔をしているフェリシアに恐る恐る問いかける

若干気まずい空間が流れる中、しばらくしてフェリシアは震えた声で静かに口を開いた


「大丈夫よ……心配してくれてありがとね、アナスタシア」


その言葉とは裏腹に、フェリシアの身体は小刻みに震えていた。

アナスタシアはそんなフェリシアに何もしてあげられないことを痛感しながら、繋いである手を強く握り直した。


気がつくと、周りはものすごい量の人で溢れかえっていた。


「これじゃあルーク、私達のこと見つけられないね」


フェリシアは笑っていた。ただ、その痛々しい笑顔をアナスタシアは直視することができなかった。


正門は鐘の音が止むのと同時に、ガラガラと音を立てながらゆっくりと上がっていく。

その瞬間集まった人々は怒涛の勢いで歓声を上げた。

これはアルステラ王国国王の信頼の証として、2人はとても誇らしかった。


門の外から次々に兵士や荷馬車が帰ってくる。

遠征だけだったというのもあり、負傷者はさほど多くはなかった。2人に気付いた兵士は隊列を崩さない程度に軽く会釈をし進んでいく。


程なくして、国王アレンが門をくぐるのが見えた。

その時、アナスタシアはフェリシアの手に一瞬力が入るのを感じた。


アレンはフェリシアとアナスタシアを見つけると隊を静止させ馬から降り、2人に向かって歩き始めた。

フェリシアは繋いでいた手を解き、慌てたようにお辞儀をした。


「国王陛下。 ご無事の帰還、何よりにございます」


アナスタシアもそれに続くようにお辞儀をし、周りの群衆も同じ様に続いてお辞儀した。


「うむ。2人とも面を上げなさい」


その言葉で2人はそっと顔を上げ、アレンの顔を見る。

その顔は2人を「やはり」と思わせるような曇った表情をしていた。

そして、フェリシアの耳元で小さく呟いた。


「フェリシア……」

「後で、王宮の間に来なさい」


それだけ言い残すと、再び馬にまたがり軍隊と共に城へ向かって進んでいった。


「――はい」


そう返事をするフェリシアの横顔は完全に沈みきってしまい、

アナスタシアは、初めて見る姉の表情に、声をかけることができなかった。

〈用語集①〉

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【アルカノゥス】

王族の選ばれた者に宿るとされる聖獣、守護霊。

様々な属性の力を契約者に授ける根源的元素の主(あるじ)。

その力の源は、――記憶。

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