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Aetanyx(エタニクス)−The Spiral of Fate−  作者: 岩江公一
第一部〈運命の啓示〉第二章:業火と散るは王たる故
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第2話「再来」3

ルークが商業区にたどり着いた時には、

既に壮絶な光景が広がっていた。


激しく空に向けて立ち昇る炎の中、

兵士達と怪物の激しい戦闘が繰り広げられる地面は血の色に染まり、

部位のかけた死体があちらこちらに散らばっており、

その死体に足を取られ命を落とす兵士や怪物が多々見られる。

ただ、ルークはひとつ違和感を覚えた。


兵士と戦っている怪物達は、

兵士を殺すために動いているのではなく、

街を完全に崩壊させるような不可思議な動きを見せていた。

要するに、兵士に向かっていくのではなく、半壊した建物や、門などの建造物に攻撃を仕掛け、

跡形も無くなるよう破壊し尽くそうとしている。

兵士達は、それを阻止するような形で戦闘を繰り広げている。

そんな異様な光景が目の前には広がっていた。


ルークは目を閉じ1人静かに深呼吸しながら

乱れる心を落ち着かせる。


「ふぅー……。」


以前の戦いで偶然掴み、

そしてシーナ村での練習の際に、再び手に覚えさせた剣を作り出した時の感覚を思い出す。


"血流を加速させ、炎が血管を巡り掌全体に広がっていく感覚"


そして、カッと目を開くと

重心に力を込めて一気に炎の火柱を立ち上らせ、

両手でしっかりと掴む。


まっすぐに伸びる火柱は風に揺れながら、

形を剣の姿へと変えていく。

ルークは高々と構え振り下ろすと、炎は飛び散るように消え去り、銀色の刃と赤色の装飾を輝かせた剣が姿を表す。


「いくぞ……!」


小さく呟くと、

ルークは軽々しい足取りで駆け出し、

戦闘が繰り広げられている商業区の中心に突っ込んでいく。


ルークは軽く地面を蹴り軽々と飛び上がると、

戦闘の中心に降り立ち、怪物たちへの攻撃を開始する。

不思議な事に、力の入れ具合を間違え

飛びすぎることもなかった。

ルークはたった一度の戦闘で力の入れ具合に対する感覚を掴み始めていた。

戦闘中の兵士達の中には突然の地響きに驚き、

思わず戦闘を留めて、地響きのあったほうを唖然と眺めている者の姿もあった。


ぎこちなさが若干なくなってきた動きで、一体、また一体と次々と怪物を倒して王城まで一直線に駆けていく。

時には、やられそうな兵士の前に割って入り助け出したりと、

その成長っぷりは明らかだった。


やがて、勢いそのままに走り続けるルークの目の前に、

フェリシア達を苦しめていた飛行型の怪物が現れる。


「こいつら、飛べるのか?!」

「――いや、見た目が違うな……。 じゃあ違う種類の……」


飛行型の怪物を凝視しながらフェリシア達と同じような反応を見せ思考を巡らせているルークに、

見られることを嫌がるかのような鋭い攻撃が素早く飛んでくる。その勢いには一切の迷いもない。


ルークは攻撃の軌道を剣の平場で巧みに変えると、

近くの瓦礫の陰に隠れ、様子を伺い始める。


「くそ……。 早くフェリシア達のもとに向かいたいのに……」


焦る気持ちをぐっと堪えながら、

ルークはなんとか正常に考えようとする。


「なんとかあの飛んでる怪物さえやれれば……」


ルークは頭をフル回転させ、唸りながら考える。

その間わずか10秒。

ルークはポンッと手を叩き、何かひらめいたのか瓦礫の陰から勢いよく飛び出て剣を地面に突き刺す。


「そうだよ。 何も剣を創造することしかできないわけじゃないんじゃん!」


そう言いながら、ルークは右手の拳を握り飛行型の怪物目掛けて狙いを定める。


「後から来る痛みにさえ耐えられれば……!」


ルークは刃をぐっと握りしめ「我慢だぞ!僕!」と心の中で唱えると、

力を込めて握る拳に炎を纏わせる。

タイミングを図り、狙いを正確に定め、ルークの呼吸のタイミングと狙いがカチッと一致した瞬間、

思いきり振り抜いた拳から炎の火柱を放ち、

周囲の飛行型の怪物を一掃してみせた。

その攻撃の範囲は半径2メートルくらいあり、

中心にいる怪物は避けること叶わず倒され、

避けれた怪物も翼にダメージを負い、飛行を続けることが難しくなりフラフラと降りてきた。


そこをルークに真っ二つに裂かれ次々と倒されていく。

ルークは右腕の痛みを我慢しながら、

左手で剣を振り回し、商業区から正門の方へと目指すこと再開した。

道中、橙色の光に右腕とあの一撃で疲弊した体力を少しずつを癒してもらいながら、

怪物との戦闘を繰り返し、まだ僅かに疲労が残る体を精一杯動かしながら向かう。


正門であっただろう場所が目で確認できるようになってくると、

付近で、飛び回る怪物達とそれを追いかける無数の赤色の歪み玉を目撃した。


「なんだ……あれ。 怪物達、何に追われてるんだろう?」


よく目を凝らすと、怪物達を追いかけるそれが、

火の玉であることに気付いたルークは、


「フェリシアか! そっか、無事なんだ……」


安堵する様子を見せながらも、

正門を包囲する敵の数を見ると

向かう足取りを早める。


「早く合流しないと!」


ルークは、入り口を塞ぐ怪物たちの群れに向かって

剣を"創造"しながら突っ込んでいく。


「あの数……、一体一体は時間がかかるな……。 どうすれば――」


その時、

アレンを助けに行った時の情景を思い浮かべる。

あの時は、飛び上がり着地する時の勢いを利用しながら

拳にまとった炎を範囲に広げることで攻撃していた。


ルークはこれを応用して剣でそれをやってのけようというのだ。


(迷ってる暇はない。 どうせこれから起こることも全部ぶっつけ本番なんだ!)

(――大丈夫。 僕ならやれる!)


心の中で意気込むと、

走る勢いそのままに高く飛び上がり、

重力がかかる勢いに任せながら、自分の体重を乗せ

力強く地面に叩きつけるように振り下ろす。


ドゴォォォン!!


叩きつけられた剣は地面と接触し、

大きな音を立てながら、炎が一面に広がる。

広がった炎はまるで炎の海のように辺りを埋め尽くし、

怪物達を一掃する。


「やった!」


ルークは成功したことと、

身体に出る痛みがなかったことに喜びつつも、直ぐに周りの状況を確認する。

正門を囲っていた怪物達は、

炎によって焼け倒れていき、突破口が開(ひら)けるのを確認する。


喜ばしい状況も束(つか)の間(ま)、ルークの目に入ってきたのは膝を突きキツそうに息を荒らげるアレンと、

飛行型の怪物に苦戦するフェリシアの姿だった。


ルークは体勢を戻し、直ぐに走り出すと

アレン目掛けて伸びていく怪物の触手に気がついた。


「危ない!!」


足を全力で動かし、

全速力でアレンの下へ向かう。


アレンへ伸びる触手は、

このままでは確実にアレンの背中から心臓を貫いてしまう。


(間に合えぇぇ!!!)


ルークは手を伸ばしながらアレンと触手の間に割って入ろうとする。

その一瞬の時間をルークはやけに長く感じていた。


ドチュッ


鈍い音と共に、ルークの右肩に触手が突き刺さる。

変な汗が滲み出て、

口から血がたれ始める。


「ぐっ――!」


ルークは痛みを堪えながらこれ以上触手が伸びていかないよう、

しっかりと力強く掴むみ、剣を左手に持ちかえて斬り落とした。


背後から聞こえた鈍い音に反応するように、

アレンはゆっくりと後を振り返る。


「ルーク……」


そこには、右肩から血を流してアレンを見つめるルークの姿があった。


「間に合って……良かった……」


ルークは、尋常でない痛みを感じながらも、

心配をかけさせまいと、余裕のある笑みを浮かべてみせた。

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