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Aetanyx(エタニクス)−The Spiral of Fate−  作者: 岩江公一
第一部〈運命の啓示〉第二章:業火と散るは王たる故
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第2話「再来」2

フェリシアとアレンが王城から外に出た頃には、

アルステラ王国の上空は、黒い影の群れに掌握されており、

その群れからから、雨のように数日前に出現していた怪物たちが振ってくる。

王都や街中を支配していた静けさは、痕跡を残すことなく消え去っていた。


前衛の兵士達が戦闘しているであろう、鉄と鉄のぶつかり合う音や、悲鳴、

大きな掛け声など、数日前に広がっていた光景や音が、そこにあった。


「あの怪物達、空を飛べる個体もいるの?!」


フェリシア呆気にとられた表情で空を見上げる。


「さぁな。 だが、私達はあいつら怪物のことを何も知らない。 そういう個体がいても、おかしくはないだろう」

「行くぞ! 前衛に追いつき、彼らの援護だ!」


アレンは、至って冷静だった。

呆気にとられるフェリシアに前進を促し、アレンとフェリシアは商業区あたりで戦闘を展開する前衛部隊と合流するため、駆け足で向かった。


もうすぐ、以前まで正門であった場所の付近へ到着するという既(すんで)の所で空に群れていた飛行型の怪物たちが、次々とアレンとフェリシアの前に立ち塞がった。


フェリシアは慣れた動作で火の玉を自分の背後に輪のように複製し、いつでも放てるように手を前にかざし構える。

それを横目に、アレンは引きずるように持っていた愛用の剣を持ち直し、戦闘の姿勢を見せると

間髪入れずに、速攻で怪物達に攻撃を仕掛けていく。


「今は、貴様らの妨害に立ち往生している場合ではない! 退いてもらおうか!」


右へ左へ。

次々と怪物達を薙ぎ倒していく。そう思われていたし、アレン自身もそうできると確信していた。

しかし、飛行型の怪物達は重く威力のあるアレンの攻撃をひらりと空に飛び上がりかわしてみせる。


「何ッ!?」


大きく空振ったアレンは体勢を崩してしまい、その隙を突くように怪物の触手が先端を刃の形状に変化させながら、アレンの背中目掛けてしなるように伸びていく。


「父様!危ない!」


フェリシアは、間一髪の所で火の玉を命中させ、アレンへの攻撃を凌ぐと、

空中を飛び回る怪物達目掛けて、火の玉を連射する。


「くぅぅ、ちょこまかと鬱陶しいわね! じっとしてなさいよ!」


全弾外れるということはなかったが

何匹かは巧みに避け、上手く命中しない。

そんな状況にフェリシアは苛立ちをあらわにする。


「くっ! なかなかに面倒くさい奴らだな……。 私の振りの遅さでは、奴らに攻撃を当てるのは至難の業か……!」


そう呟くアレンに複数の怪物達が押し寄せてくる。

アレンはその集団を軽く振り払う。


「フェリシア!飛べない怪物たちは私に任せろ! お主は飛行型の怪物を頼む!」


「任せて父様!」


フェリシアは、上空の怪物に目線を集中させながら答えると、

一度背後に出した複数の火の玉を消し、

腕を手の前で半円を描くように右回りに回すと、今度はフェリシアの前に火の玉が1つ現れる。


「すばしっこく動くやつには、これを試してあげる!」


心のなかで「いけ!」と命じると、火の玉が1体の飛行型の怪物目掛けて飛んでいく。

しかし、怪物はこれまで通り難なくかわしてみせる。

そして、攻撃を外したフェリシアに向かって接近する。


フェリシアは微動だにしない。

それどころか、少し余裕の笑みを見せゆっくりと顔の位置に拳を持ってくると、人さし指を立たせる。


「怪物さんっ。 油断はダメだよ?」


首を傾げながらあざとく言葉を告げると、立てた人差し指をクイッと曲げる。

それに反応するように、命中せずに飛んでいった火の玉が方向を変えて怪物目掛けて戻ってきた。

怪物はまたもひらりとかわすが、火の玉は怪物を追跡し続ける。


――"追尾式炎投魔術(フレイラ)"


「私のこの魔術はね、 狙った相手を絶対に逃さないの!」

「あなた達みたいな怪物に体力の概念があるかわからないけど、無限ではないでしょ?」

「だから、どこまでも、いつまでも追いかけ続けてあげるわ!」


火の玉に追われる怪物は、

空を有象無象に上下左右、何度も方向転換を繰り返しながら逃げ続ける。

それでも、追尾する火の玉は起動をされることなく永遠と背後を捉える。


そしてついに、しばらくの時間続いた飛行型の怪物と火の玉の追尾劇に終わりが見えてきた。

怪物の動きが少しずつ鈍くなってきたのだ。


火の玉の追尾はその反応を見逃さなかった。

少しよろめいた怪物のそこからの軌道を読んだかのような動きでついに怪物に命中する。

怪物は火の玉に当たった瞬間、体を燃やしながら地面に墜落し、そのまま消滅していった。


「やった!」


フェリシアはガッツポーズを決めると、

間髪入れずに、追尾する火の玉を無数に作り出し怪物目掛けて一斉に放った。


飛行型の怪物達は、その火の玉に撃ち抜かれ撃破されていく。

そんな空に夢中になっているフェリシアに襲いかかろうとする怪物をアレンが一掃する。

見事な親子の連携の前に、怪物達はただ倒されるだけの言うなれば、サンドバックのような存在に成り下がっていた。


しかし、順調に思われていた戦闘も、長期戦の影響により徐々に押され始めてしまう。

倒しても倒しても減るどころか、むしろ増えて見える怪物達の群れを相手に、2人の息は少しずつ上がり始めていた。


「――ッ! 化け物どもめ! まだこれほどまでの戦力を残していたとは……」


アレンはこの戦闘の疲弊と、

歳による前回の戦闘のダメージの蓄積から遂に膝をついてしまう。


フェリシアも、フレイラを初めて実戦で使ったにも関わらず、

そこそこの時間酷使していたため、徐々に速度、威力、弾数が少なくなってきていた。

かざす手は徐々に震え始め、額からは変な汗が滲み出す。

そんな押され気味の状況が続いていく中、

膝をつき、険しい顔を見せるアレン目掛けて、一体の怪物が先端を刃状に変化させた触手を勢いよく伸ばした。


「父様!!」


フェリシアは、助けに入ろうとアレンの下へ駆け寄ろうとするが、

飛行型の怪物に阻まれ、立ち往生させられてしまう。

アレンは、重い剣を握る腕をなんとか振り上げて応戦する。

1回、また1回と何度も何度もムチのしなる様な音を立てながらアレンへの攻撃が続く。


飛行型の怪物に邪魔されるフェリシアは、

なんとか振り切ろうと応戦を続けていた次の瞬間、

1本の触手がアレン目掛けて伸びていくのが横目に映り、

そして――、

アレンの方に振り返るより先に、肉を貫くような鈍い音が、フェリシアの耳に届いた……。

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