第4話「訪れた静寂」3
――お主も知っての通り、我らが生きるこの大地、「ルクスカリア」には10の国と隣接する島国がひとつ存在する。
その国々は、"アルカノゥス"という守護霊によって護られ、繁栄を遂げてきた。
我らアルステラ王国にもアルカノゥスは存在する。
まぁ周知ではあるだろうが、お主が目覚めたその力、"フェニックス"だ。
万物を燃やし尽くすほどの炎は、"再生"と"創造"を象徴し、
我が国の"繁栄"の"栄光"を導いていた。
これに関しては、さっきも言ったが何も我が国だけが特別というわけではない。
リヴァイアサンやタイタン、エリニュスにトール等、
他の国々を守護するアルカノゥスもそれぞれの国に同様に存在する。
なぜこの国のアルカノゥスがフェニックスだったのか……、
他の国の象徴がそのアルカノゥスとなったのか……。
それについては、伝承にも記されていない。
かつて、狭間の塔を建造した少年によって我が国の先祖が受け持った力が偶然フェニックスだった。
ただ、それのみだ……。
――これが、我々の世界の"当たり前"だったのだ。
「――お主は、先の戦いでフェニックスの象徴の1つである"創造"を発動した」
「あれは、"お主が過去に見たものをお主の解釈、イメージによって炎から具現化させる力"という特徴を有している」
「言うなれば、"記憶"がその力の根幹にある」
「――記憶……」
ルークは、初めて"創造"を扱えた時の状況を思い出す。
アレンの握る武器を目に入れた途端、頭の中を剣の模型のようなものが駆け巡っていたこと、
その模型を無意識にイメージし、炎を手に集約させていたこと。
あの時の状況を鮮明に思い返すと、アレンの言葉とそう大差ない現象があの一瞬で起こっていたに気づく。
そんなルークにアレンは続ける。
「アルカノゥスの力はな、本来であれば"守護霊契約者"と言う"王位継承者として認められた者"が扱うことができる力だ。 故に、資格無き者が扱うと先のお主のように"使用後の激痛や、最悪の場合死に至る危険性がある"と伝えられている」
「そもそも王族の、それも国王夫妻の子にしか宿らぬ力だ。我が知る限り、ルークが初めての例外と言えよう」
"例外"。この言葉を聞いて、ルークは夢のことを思い出す。
炎に包まれる中、1人の少年が宿していたのは確かにフェニックスの力だった。
しかし、その炎の色は、鮮やかな紅蓮の炎ではなく、禍々しい黒ずんだ、まさしく黒炎と言えるような歪んだ炎だった。
あれは予言だったのか。或いは、アレンも知らない程の過去にも同じく例外となったものがいたのか。
それとも――。
様々な考えが頭を、ぐるぐると脳をかき混ぜるように巡る。
「陛下」
その口は、勝手に動いていた。
自分の声が、アレンの声を遮るように出ていたことに驚きを隠せないルークだったが、
変な沈黙を作ってしまったことに耐えられず、ルークはそのまま続けた。
「1つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
アレンは何も言わぬまま、浅く首を縦に振る。
「この世界に、もしかしてですけど、もう一体フェニックスがいたりしますか?」
突拍子も無く、余りにも現実味のないルークの問いに場の空気は更に静まり返る。
アレンは、目を細め何とも言えないような表情でルークを見つめる。
そんな静寂が包む空間を遮るように口を開いたのはフェリシアだった。
「そんなわけないでしょ! この世界には同じ属性のアルカノゥスは存在しないのよ?」
「ましてや、同じフェニックスなんて……あり得ないわ!」
ルークは、フェリシアの方を向きながら小声で「仕方ないだろ!王族では常識かもしれないけど、僕らみたいな一般人、特に属領の人は教えてもらえないんだから!」と不満を漏らす。
呆れたような顔を見せるフェリシアの横にいるアナスタシアは、落ち込んだ表情からはまだ回復しきれていないものの、ルークの言葉に対して「ふんっ」と完全に馬鹿にするように鼻で笑ってみせた。
本来であれば、苛つく場面であるはずが、
ルークの心持ちは違った。
アナスタシアが見せるそれは、ルークを小馬鹿にする時にあえてわかりやすく見せている鼻笑いだ。
そんな以前の様な行動が、少しだけだができるほどには回復している事に対して、ルークは少し安心した。
(よかった。 アナスタシア、少しは元気になったんだね……。 )
小馬鹿にされたことなど気にも留めず、心のなかで安堵していると、アレンの咳払いが聞こえ、ルークは姿勢を戻した。
するとアレンは、ルークに優しい微笑みを見せる。
「一度に沢山のことを告げられて、疲れがでたのだろう」
「今日はここまでにしておこう。 話の続きはまた後日行うとしよう」
アレンはルークに「しばし待て」と声をかけると、カーネスを呼び耳打ちした。
何かを伝え終わると、カーネスは深く一礼して、その場を去っていく。
「ルーク。 今日は村へ帰るといい」
「いろいろあったからな。 安らげる場所でゆっくり休みなさい。 カーネスには、お主を村まで送るよう手配してもらっている」
その言葉を聞き、ルークの顔は分かり易すぎるほどに明るくなる。
「村は!シーナは無事なんですね! 村の皆も!」
アレンはゆっくりと頷く。
子供のように安堵しながら喜ぶルークの姿を、実の父のような目で見守る。
少しすると、カーネスが戻り彼の案内でルークは馬車に揺られながらシーナ村へと帰還した。
村の人々は、ルークが馬車から降りるやいなや一目散に駆け寄り、無事に帰ってきたことを盛大に喜んだ。
トゥナヤは誰よりも前に出てきて、強く優しくルークを抱きしめる。
しばらくの賑わいを見せたあと、
ルークは、村の人達と共にカーネスにお礼を告げると、自分の家へと帰っていく。
カーネスは、その様子を見届けると
御者に馬車を走らせ、アレンたちのもとへと戻っていった。
【あとがき】
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
第一章「災厄の予兆」は、これにて一区切り(完結)となります。
明かされたフェニックスの力と村への帰還を果たしたルーク。
ここから先に待ち受けるアルステラ王国の運命とは――。
運命の歯車が動き出す第二章は、
【11月1日(日) 12:00】より投稿開始予定です!
かなりのペースで投稿してきましたが、
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なるべくテンポよく投稿できるよう頑張りたいと思っております。
また、文章の粗さも今後の課題として、
なるべく違和感なく皆様に楽しんでいただけるような文章を制作できるよう励んでいきたいと思っておりますので、
これからも私、岩江公一と「Aetanyx−The Spiral of Fate−」をどうぞよろしくお願いいたします!
岩江




