第7話 橋姫
俺たちは女性の魔人と妖魔と対峙した。静寂が戦場を包み込んでいる。
その静寂の帷を破ったのは蒼だった。
「異能術・水操成術・水龍の怒り」
蒼が異能術を発動すると、蒼の周囲に大量の水が圧縮された水球が無数に出現した。
「発射」
蒼のその合図で出現した何十もの水球は一斉に女性の魔人に飛んでいった。それに対して女性の魔人も異能術を発動する。
「異能術・土操作・土壁」
そう言って女性の魔人は自分の正面に土の壁を生成した。しかしそんなことを兄さんが許すはずがない。
「異能術・級長津彦命・神風」
兄さんは異能術を発動、土壁を破壊する。防御壁を失った女性魔人は水球により体に穴が空いた。
それと同時、明土から支配権を譲られていたことで、女性魔人に支配され、活躍できずに主が倒された橋姫が正気に戻る。
「あ、れ? 私は今まで何をして」
混乱する橋姫に土御門夜橋は刃を向けた。
「お前は妖魔だ。記憶もないし連中の話も聞けそうにない。ここで始末する」
「ま、待ってください、お願いします。わ、私はまだ、まだ死にたくない」
涙ながらにそう訴える橋姫。それを見かねた兄さんが二人に提案をした。
「それなら、橋姫を誰かの式神にするのはどうだ? こっちとしても戦力の増強になるし、橋姫としても生きることができる」
式神。それは異能術師や異能力者が使役する妖魔のこと。支配系の異能術とは違い、妖魔の完全支配はできなかったりするが、戦力増強としては魅力的だった。
「わ、私はそれに賛成します。生かしてもらえるなら式神にでもなります」
すると土御門夜橋は刀を鞘に閉まった。
「分かった、それなら生かしてもらいい。ただし、白鶴がこの件の報告をすること。そして式神の主の人選をすること、分かったな」
「ああ、それで構わない」
「分かった。行くぞ夜那」
そう言って土御門夜橋と土御門夜橋はその場を後にした。
それから取り残された俺と蒼、有島明が兄さんと橋姫の今後の話しが終わるのを待っている。
「話し合いは終わった」
そう言って兄さんは俺たちのところに戻って来た。
「それで白鶴? その橋姫は誰の式神にするか決めたの?」
「ああ、この橋姫の主は……」
ゴクリ。みんなの息を呑み込むような様子が伺える。次の瞬間、白鶴は名前を呼んだ。
「明夜、お前に任せる」
そう兄さんに言われてから、兄さんは橋姫を俺の式神にする準備を始めた。式神化の魔法陣を描き、魔石の準備をする。
橋姫の魔力量が多く、実力も高い。だからこそ、用意されたのは高品質なA級魔石だった。
「準備できた。それじゃあ橋姫と明夜は対角になるように魔法陣に乗ってくれ」
「「分かった」」
そう言って俺と橋姫は指定された場所に立つと、式神化の詠唱を開始する。
「我は望む・汝の御霊を拘束す・汝の御力を我に貸せ・我は誓う・この世全ての善人を救い出す」
俺が詠唱すると魔法陣が光だした。それから魔法陣から禍々しい鎖が出現し、橋姫の首に鎖が繋がれた。
「我に従い式神となれ」
そう言うと橋姫についていた鎖が消え、橋姫の首に吸収されていった。




