第5話 土御門家
上位デーモン、ワクアグの正体を知った俺と蒼、そして有島明は恐怖で足がすくみ、その場から動けずにいた。
一方でこちらの様子を見たワクアグは、ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべた。次の瞬間、ワクアグは黒い翼を生やし、ダンジョンの入り口から外の世界へ出て行った。
「奴を追うぞ。ダンジョンの外に出られたら一般人に被害が出る」
兄さんの言葉を聞いて冷静になった俺たちはワクアグを追って、ダンジョンの入り口へ向かった。
「まずいな。特級妖魔がダンジョンの外に出ていくとは」
特級に分類される妖魔やモンスターや魔人たちは、たった一体で災害や核兵器レベルの被害をもたらす力を持っている。
ダンジョンの中は異空間になっているからこそ、特級やそれ以上のモンスターたちが暴れても俺たちの住む現世に影響はない。
しかし、それが現世に出て行ったら、国家レベルで対処しないといけない事態になってしまう。だからこそ、俺たちはダンジョンの外へ急いで飛び出した。
するとそこには、地面に横たわるワクアグの姿と二人の人の姿があった。
俺が二人が誰か気になっていると、突然兄さんが二人組のうちの背が高い方に話しかけた。
「来たんだったら言ってくれ。夜橋」
俺が不思議そうに見ていると、有島明が説明してくれた。
「あの二人は土御門家の土御門夜橋と土御門夜那ちゃんですよ? 二人とも上級のランクを持ってるエリートで、土御門家出身で構成された独自戦力、法天隊所属の異能術師なんですよ」
「へー、そんなにすごい人たちなんですね。ちなみに、法天隊にはあれぐらい強い人たちはまだいるんですか?」
「結構いるよ? 法天隊は上級以上じゃないと入隊できない部隊だから、少なくてもあと十二人はいると思うよ」
上級の戦力が十四人も所属する部隊か。
俺が驚いていると、土御門夜那と言われていた少女が蒼のほうに近づいて来た。
「んー、容姿はいい、でも弱いし才能は少なそうかな?」
土御門夜那は蒼を見るとそう吐き捨ててから、俺の方を見た。
「美形で強者の気配がする。才能ありそうだし以外とタイプかも」
土御門夜那は俺を見てそう言った。
「おい夜那」
「なんですか? 兄様」
「失礼なことを言うな。彼女は大阪連隊の副隊長、高槻綾さんの長女で、そこにいる明夜の婚約者だぞ」
「へ、そうだったんですか?」
土御門夜那がそう驚いた時だった。彼女の隣を一発の魔力弾が通り過ぎた。
「おいおい、まさか外しちまうとはな」
そう言って上空から魔力の風で浮いていた一人の男性が降りて来た。




