第10話 召喚術式
俺は橋姫と一緒に召喚術式の魔法陣の作成を行い、それが完了すると、すぐに召喚の儀式を始めた。
「我は汝の力を欲す・黄泉の第七階層に住みし悪神・大禍津日神・汝をこの地に呼び出し・我は汝と契約する・我が言葉に応じ・この地に受肉を果たされよ・大禍津日神」
俺がそう詠唱すると、魔法陣に乗せられた橋姫の魂の複製が輝き、それを包み込むように魔法陣から出現した黒いモヤが複製された橋姫の魂を飲み込み始めた。
しばらくして、複製した橋姫の魂を包んでいた黒いモヤは消えていく。それが全て消え去ったとき、そこに一体の巨大な魔力の塊、まるで魔力の化け物みたいなやつが鎮座していることに気づく。
「ここは……現世か? 黄泉の国とは違う美味い空気に魔力。最高だな。それにしても、いつまでこの私を見ている?」
そう言ってその魔力の化け物はこちらを向いた。
あまりの恐怖に俺は身構える。するとそいつは自身の指を少し横に動かす。
ブシャッ。
次の瞬間。そんな音とともに鮮血が飛び散った。俺は横を見た。するとそこにいた橋姫は床に倒れ込み、橋姫の左腕が切り落とされていることに気づいた。
「は?」
俺はそう言って、恐怖しながら魔力の化け物に向き直る。
「私をずっと見ていたからな、目障りだ。少し強い程度で私を見ていて良いと思っているのか? 私は美しくて強い圧倒的な存在、お前たち程度が呼び出すどころか、私の姿を一目見ることすら痴がましい大罪だ」
「あなたが大禍津日神か?」
俺はそいつに聞いた。
するとそいつは俺を睨み、言った。
「この私に様すらつけぬクソガキが! 楽には殺さないぞ! 痛みと絶望で泣き喚く様子を眺めながらゆっくりと殺してやる」
そいつはそう逆ギレし、その腰を上げると戦闘体勢に入った。
「異能術・根源悪・死せる悪霊・ジョン」
そいつがそう言うと、そいつの指から黒いモヤが出現し、そのモヤの中から一人の人物が出て来た。
モヤから出て来た人物はこちらを見ると自分の名を名乗って来た。
「我が名はイングランドの偉大なる国王、イングランド王ジョンである。平伏せよ、庶民。そして、我が異能術の前に死ね。異能術・英悪王・古英の栄華と死英軍」
そいつがそう言うと、俺の部屋の風景が変化し、屋外になっていた。
「亜空間の結界か、それにしてもこの結界、広すぎる。半径三キロくらいの亜空間結界か、魔力消費が莫大なのにそんなの展開できるとは」
俺が驚くのも束の間、その結界のなかに無数のイングランドの旗を掲げた兵士が数百人から数千人出現した。




