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BB  作者: 浅見カフカ
ハルドゥの悪魔篇

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8/19

魔術師ギルド

ウォールナットのドアが、重く軋んだ。

魔術師ギルドの陰湿なところだ。

魔力持ちが触れると、音もなく開くようになっている。

この音を鳴らせて中に入ると、冷ややかな憐れみの視線を一身に浴びた。

三、四人ならショートソードの間合いだな。詠唱を終えるまでに、あと二人は仕留められる。

魔術師ギルドにたむろしている連中は、その多くが実戦知らずの研究者だ。だからこそ、戦士の間合いに居ながらあからさまな悪意を向けられる。

私はそんな奴らの間を真っ直ぐに抜けて、カウンターに向かった。

「一人、紹介して欲しい。精神系に明るい魔術師を頼む」

受付の女性は「かしこまりました」と言って名簿を取り出すと「ただいまご紹介出来る魔術師は三人おりますが、細かいご希望はございますか?」と愛想良く尋ねてきた。

「一番ヒマな奴を頼む」

「は?」

「友達が少なければ尚良い」

「へっ?」

魔術師で友達が多い奴が居るとは思えなかったが条件に加えた。

「どうした、居ないのかい?」

受付嬢が動かなくなったので声を掛けると、弾かれたようにファイルを一枚差し出した。

「こちらの魔術師でいかがでしょうか?」

「ブレア・バーリントン?」

「はい。若い魔術師なので、ヒ——。比較的、時間に融通が効くのではと思います」言い淀んだあと少し額を滲ませて、彼女はそう言った。

「ふーん。分かった、彼女で頼む」

「かしこまりました」

そう言って彼女がファイルに手をかざすと、蒼白い光が仄明るく灯った。

そして灯った場所から焼けたように灰になると、そのまま跡形無く消えた。

「受注しました。明日の朝九時、当ギルドまで来てください。時計はお持ちでしょうか?」

「高くて買えないよ」

「高いですよね。私も買えないんですよ」彼女はそう言って、口許に笑みを浮かべると「この建物の壁に大時計が付いています。失礼ですが、時計の見方は——」と続けた。

私は被せるように「大丈夫、時計は読めるよ」と言って「明日、よろしく」ときびすを返した。

帰りの扉は音もなく、軽々と開いて私を送り出した。

つくづく嫌味な連中だと、小さく舌打ちをした。


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