魔術師ギルド
ウォールナットのドアが、重く軋んだ。
魔術師ギルドの陰湿なところだ。
魔力持ちが触れると、音もなく開くようになっている。
この音を鳴らせて中に入ると、冷ややかな憐れみの視線を一身に浴びた。
三、四人ならショートソードの間合いだな。詠唱を終えるまでに、あと二人は仕留められる。
魔術師ギルドに屯している連中は、その多くが実戦知らずの研究者だ。だからこそ、戦士の間合いに居ながらあからさまな悪意を向けられる。
私はそんな奴らの間を真っ直ぐに抜けて、カウンターに向かった。
「一人、紹介して欲しい。精神系に明るい魔術師を頼む」
受付の女性は「かしこまりました」と言って名簿を取り出すと「ただいまご紹介出来る魔術師は三人おりますが、細かいご希望はございますか?」と愛想良く尋ねてきた。
「一番ヒマな奴を頼む」
「は?」
「友達が少なければ尚良い」
「へっ?」
魔術師で友達が多い奴が居るとは思えなかったが条件に加えた。
「どうした、居ないのかい?」
受付嬢が動かなくなったので声を掛けると、弾かれたようにファイルを一枚差し出した。
「こちらの魔術師でいかがでしょうか?」
「ブレア・バーリントン?」
「はい。若い魔術師なので、ヒ——。比較的、時間に融通が効くのではと思います」言い淀んだあと少し額を滲ませて、彼女はそう言った。
「ふーん。分かった、彼女で頼む」
「かしこまりました」
そう言って彼女がファイルに手をかざすと、蒼白い光が仄明るく灯った。
そして灯った場所から焼けたように灰になると、そのまま跡形無く消えた。
「受注しました。明日の朝九時、当ギルドまで来てください。時計はお持ちでしょうか?」
「高くて買えないよ」
「高いですよね。私も買えないんですよ」彼女はそう言って、口許に笑みを浮かべると「この建物の壁に大時計が付いています。失礼ですが、時計の見方は——」と続けた。
私は被せるように「大丈夫、時計は読めるよ」と言って「明日、よろしく」と踵を返した。
帰りの扉は音もなく、軽々と開いて私を送り出した。
つくづく嫌味な連中だと、小さく舌打ちをした。




