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BB  作者: 浅見カフカ
ハルドゥの悪魔篇

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7/19

世代

「この辺りの植生を教えてくれないか?」

アデルの森で、切り出した原木を牛に牽かせるクリスに声を掛けた。

「どうしたんだボニータ。植物学者にでも転向するのか?」

クリスはそう言うと、牛の尻を押すようにしてゆっくりと森を歩いた。

草木が折れる細かい音が、牛の力強い鼻息と交互にリズミカルに響いた。

「幻覚作用のあるものはないだろうか?」

「おいおい、ここは森だぞ。そんなもの当たり前にあるだろう」

クリスは拍子抜けした様に言うと、屈み込んで「ほら」と何かを摘んで見せた。

「キノコか」私は人差し指を唇に当てたあと、眉間に寄った皺をほぐすようにトントンと叩いた。

「何のまじないだい」

笑うクリスに「キノコの栽培は可能か?」と尋ねた。

「出来るわけないさ。タネも無しにいつの間にか増えてるんだぞ」

「それじゃぁ、タネがあって幻覚作用のあるものはどうだ?」

私がそう言うとクリスは少し考えてから「この辺には無いと思うな。オヤジから聞いたことがあるが、俺が産まれる前には大麻の群生地があったらしいが、先代ランス伯が全て根絶やしにしたって」と話した。

「根絶やしとは穏やかじゃないね」

「それだけ中毒者が多かったってことだろうな。併せて領内の麻薬組織の摘発と処刑もやったそうだぜ。当時の人達はランス伯の草刈りって呼んだって」

「草刈りか。言い得て妙だな」

思わず納得して私は小さく笑った。

「だから若い世代は俺も含めて、ケシの花を見た事が無いってのがほとんどなんだ」

「それがいいさ。関わっていい花じゃない」

私はクリスに礼を言うと森を後にした。

大麻草を見た事がない——

あれは間違いなく、重度の大麻依存の症状だ。傭兵時代にも、投獄された時の同房でもよく目にしてきた。

スラム自体の悪臭に紛れていたが、カインの体臭は大麻常習者と同じ臭いだった。青臭い香を焚いたような臭い。

エバも根絶やしによって知らない世代だろう。気付かないのも仕方がない。

光を嫌うのも瞳孔が開いたままだと思えば説明がつく。

「おぞましきは悪魔か、それとも人の所業か......」

私は思わずそう独りごちた所で、ひとつおかしなことに気付いた。

悪魔憑きでないのなら、どうしてカインは神父を恐れたのだろうか。

そしてカインは大麻を誰から手に入れ、どこで吸っていたのだろうか。

いずれにしてもカインには治療が必要だ。

気は進まないが、魔術師ギルドに行くべきだろう。連中は選民意識が強くて、どうにも苦手だった。





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