経路
「これからどうするの?」
ゼンの店から出るとブレアがそう尋ねた。
「私は教会を探ろうと思う」
「私は?」
私の言い回しに気付いたブレアが、好奇心に目を輝かせた。
「ブレアには経路を探ってもらいたい」
「アレの流通経路?」
「そうアレだ。でも、流通先はグノーシス派だとアテは付いている。どこがそこまでの輸送を担っているのかを押さえたい」
言葉を伏せたブレアに倣って私も合わせた。
確かに外では誰が聞いているか分からない。
「見当はついているのかしら?」
「もちろんだ。大量の輸送を担っても誰も怪しまない。そして近年急速に力をつけてきた組織——」
「キャピュレット商会。本気なの?」
私の言葉を継いで、ブレアは低い声で言った。
「ああ、キャピュレットの商売のやり方が妙に不自然なんだ。食品から武器の果てまで仕入れてきているが、全て復路なんだよ」
「往路の荷が無いってこと?」
「ゼロでは無いが圧倒的に少ない。その場合、輸送費が商品に転嫁されるはずだが、この街の物価は他の街と変わらない上に安定している」
「でも、往路の荷が少ないってどう調べたの?」
「この街の産業だよ、調べなくても分かる。外に出せる物なんて小麦くらいだ。春と秋以外は何もない」
「そこで夏の今時期にアレを——」
「ああ、ついでに言えば乾燥させるところまでやれば通年で送り出せる」
ブレアは私の顔を見つめると、深くため息を吐いた。
「机の上の勉強だけでは本当にダメね。この街で暮らしていてこの生活が当たり前で、そんな物価のことや流通の基本に疑念すら抱かなかったわ」
「そういうのが、人のあるべき暮らしだろうよ」
私はそう言うと、こと更に笑って見せた。
物心がついた頃には既に親も家も無かった暮らしなど——そんな生活で身についた知恵などを、賢しらにブレアに話すことでは無い。
「カールに頼んでシムスを頼るといい。女の件で強請れば協力的になるさ」
私はブレアにそう告げると教会へと歩を進めた。
「ボニータ」
背中で呼ばれた声に振り向いた。
「私、魔術師として雇われたのよね?」
ブレアが難しい表情で私を見ていた。
「なんか、一撃で解決する魔法があればそれでもいいぜ」
「一撃は無理ね。半壊させる程度の魔法なら使えるけれど」
真顔でそう言うブレアに、私は肩をすくめた。
「お手柔らかに頼むぜ、相棒」
ブレアは目を大きく見開くと、はにかむように目を逸らして「シムスね、上手くやるわ」と言って軽やかに駆け出して行った。




