↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BB  作者: 浅見カフカ
ハルドゥの悪魔篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/45

告解

「行方が分からなくなる直前、ベスが言っていました」

キッシャーは、自身のただれた腕に視線を落とすと喉の奥から絞り出すように言った。

「あれは麻薬だ——と」

「彼女はこの街の人間ではなかったから、あの葉の正体を知っていたんだな」

私がそう尋ねると彼は頷いて口を開いた。

「私たちの手や腕は、収穫でたちまち爛れていきました。それでベスは教会で香油を頂くようになったのです」

「なぁ、キッシャー。お前たちが収穫した大麻はその後はどうしていた?加工の後はどこへ納めていた?」

キッシャーは私を見上げると首を振って「分かりません」と答えた。きっと嘘ではないだろう。知っていたならば、ベスは教会になど行くはずもない。

「そうか!」

私が思わず大声を上げたせいで、キッシャーはビクっと身を震わせた。厨房からはゼンが顔を覗かせて心配そうにこちらを見ている。

「ベスは告解をしたんだよ。神父に罪の告白をしたんだ」

「懺悔室は人目につかないわね」

ブレアは納得したように静かに呟くと「神父は驚いたでしょうね。ベスが告解の体《てい》で自分を告発しているんじゃないかって」と続けた。

「そんな」

キッシャーは光の消えた瞳で、力なく項垂《うなだ》れた。

「悪党ってのは疑心暗鬼になりがちだ」

私はそう言うと「つけ込むか」と独りごちた。

「ボニータ、あなた口の端が歪んでるわよ」

ブレアはそう言うと、腕の治療を終えた。

「キッシャー、あんたは知らないふりで今まで通り働け。辛くても悔しくても耐えろ」

私は強く握られた、包帯に巻かれた手を見詰めてそう声を掛けた。

「で、どうするの?」

「懺悔してくるよ」

ブレアの問いにそう答えると「一日で終わる?」と真顔で私を見た。

「うるさい!」そう言いかけたところで、甘く香ばしい匂いが鼻を刺激した。

「焼き上がりましたよ」ゼンが両手でトレーを持って出て来た。そして「ボニータさんは意外と誠実ですよ」とブレアの方を見て言った。

「意外は余計だ」

パンの香りが場を和ませたのだろう。

キッシャーの表情が少し和らいで見えた。

「あなたの力よ」

ブレアはそう意味の分からないことを言うと、目を細めて私とキッシャーを見ていた。

「割ってみてください」

差し出されたゼンメルは、まだ少し熱かった。

焼きたてと言われた前回よりも、更に焼きたてだ。

真ん中から折るように割ると、きつね色の焼き目の下から真っ白な湯気が立ち込めた。

「わぁ」

ブレアの感嘆が聞こえた。

バターの香りが一層濃く漂った。

それを逃すまいと、思わず大きく鼻で息をした。

「あなた、鼻でも食べるのね」

「美味いもんは五感で味わうもんだろ」

ブレアの皮肉にそう言い返すと、彼女は目を丸く大きく見開いて「その通りね」と笑った。

そして大きく鼻で息をすると「美味しい匂い」とまた笑った。

「次はエバの分も焼きましょう」

ゼンはキッシャーに向かってそう言うと、私を見て託すように頷いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。