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BB  作者: 浅見カフカ
ハルドゥの悪魔篇

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17/19

冷えたビール

「マスター、隠し事はナシだぜ」

CLOSEのプレートを無視して入った酒場で、私はマスターに詰め寄った。

「アンタがどこまで期待できるか分からなかったからな。」

マスターは詫びと言わんばかりに、冷えたビールをカウンターに置いた。

「なんでビールを冷やしてるんだ」

「飲んでみな。もうぬるいビールなんて飲めないぞ」

「ビール自体が高くて飲めねぇよ」

そう言って流し込んだビールは私の口の中で弾け、喉もその奥までも清涼な刺激と苦味で満たした。

私は一度目を見開き、それから瞬きを繰り返してグラスを見た。

「手打ちでいいか?」

「追加報酬の件だけど——」

「冷えたビールをジョッキで、だな」

マスターはそう言って片目を瞑って見せた。

「どういうカラクリで冷えてるんだ?」私がそう尋ねると、魔法陣の書かれたビア樽をマスターは見せてくれた。

「冷える魔法なんだとよ。毎月定額を魔術師ギルドに納めてる」

「ああ」

魔術師ギルドと聞いて自然と背が反った。

「はは、選民意識は強いが悪い連中ばかりじゃないさ」

私の無意識な仕草に察したマスターは、そう言って笑った。

「ま、個人の依頼にしちゃぁ破格だったもんな。自警団からの依頼だったってワケなんだな」

「ところで本題だ。香油を見せてくれ」と手を出した。

「これだ」

マスターはカウンターのキャビネットから、紙包を取り出すと私の手のひらに乗せた。

「クリスが届けた時のままか?」

「ああ、土だってついたままだ」

包みを開けると僅かな土がカウンターに落ちた。

「ああ、すまない」

私が慌ててダスターを手に取ると「気にすんな」と言って、マスターは息を吹いた。

乾いた土と砂粒が床にパラパラと落ちていった。

「そんな上等な店じゃないだろ」

豪快に笑うマスターに、私は信頼と好感を抱いた。

小瓶は教会で貰った物と同じに見えた。蝋付けの封もそのまま。中身も減ってはいないようだった。

「じゃ、借りてくよ」

香油の小瓶を懐にしまうと、私は店をあとにした。

あとは中身が香油かどうかってとこか。もしも香油なら、ベスは帰路で襲われてアデルの森に引きずり込まれたことになる。

——あるいは自ら足を踏み入れたか、何者かの偽装。

「さて、悪魔は存在するのか否か」

そう呟くと、人の増え始めた往来の中を縫うように、私は人混みに紛れた。


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