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第7話 姉ちゃんの境遇とおにぎり。

「それにしてもビキニアーマー……」

「年齢は考慮したいけど実質若返ってるからノーカンでいいでしょ!!」

 寝る時にも特に着替えてないから、当然現在もその恰好なんですよね姉ちゃん。


 なおオレの服装はごく普通のカッターシャツとやや厚手のコットンパンツ。

 どっちも手織りで手縫いなことを除けば、普通の木綿製品だ。

 そういう物が、国を選べば買えたんですよ、ひとつ前の世界。


 おかげで『帰るのに他人に見られても大丈夫な服がない!』なんて事態は回避できたっていうね。


 ともかくですね、一応オレも身体的には年頃の男子でありますので!胸が見えまくる格好は気になるんですよ!

 今は相手が姉ちゃんだから身内として気になる、の方だけど、こんな格好の人が他にもいたら目のやり場に困るだろ!!


 姉ちゃん?コスプレイヤー時代に散々見たからこれはこれでもう見慣れてる。

 そもそもちゃんと似合ってるしなあ。


「それもだけど既婚者としてはどうなのかと」

「あー。バツイチよ」

 あれ?旦那さんと別れたの???お互いベタ惚れだったのに???


「厳密には戸籍はそのままっしょ?アズちんの旦那さん、行方不明なん」

「異変の日、朝起きたら、居なかったのよ。一緒に寝ていたのにね」


 だから、迷宮を探索することにしたのだ、と語る姉ちゃん。

 何がどう、だからなのかは判然としないが、異変でそういう行方不明者は、かなりたくさん出たらしい。


 そして、現状誰も帰ってきてはいない、という。


「……オレみたいに異世界転移しちゃったりとか」

「その可能性も考えたけど、巫女衆は否定してるのよね。

 世界が混ざり合ってからは境界が大混乱したままで、出入りはほぼできない状態って話だったのよねえ。

 ……ホントにあんた、どうやって帰って来たのやら」


 主にエルディムの方にいた、託宣のできる巫女さんみたいな人たちがこぞって、世界の外に零れ落ちたりはしていない、と宣言した、らしいんだな。


 でもオレ、この世界に戻ってくるときに、そんな大混乱の状態は認識できなかったけどなあ?


「オレ一人の魔力じゃ世界の間を飛ぶには全然足りないんで、友達複数巻き込んで儀式魔法で飛ばして貰ったんだ。

 その世界でも唯一レベルのチート魔力持ちと神レベルのチート魔法使いの手伝いだから魔法強度は最高クラスだったと思うけど」

「予想外に大掛かりなことしてた……」

「?……少年、ひょっとして短距離転移使えたりちゃったりしない?」


 そして話を聞いていたリケラからはピンポイントにツッコミが。


「使える事にはなってるけど、短距離転移に使える転移ポイントの設定がない。

 この世界から出た時には使えなかったんだから転移ポイントもへったくれもないよねって。

 よくこれであの場所に戻れたなあって感心するレベル」

 そうやって話していたら気が付いたけど、例のラーメン屋の跡地の、ダンジョン入り口のとこ、転移可能になってるな?


「あ、リケラと出会ったダンジョン前は飛べるようになってる。多分この家にも飛べるな?」

「成程、新規にポイント設定しなおせばジャンプ可能?じっくり育てたい感じね」


 転移持ちはうちでも少なくてねえ、と述べるリケラ、口調からギャルみが抜けてるのは仕事モードの気配だな?


「姉ちゃんは迷宮探索者として、リケラは研究者なのか?」

「迷宮探索者もやってるよ。本業は魔法研究者だけど、今は世界法則そのものが変更されちってぜぇーんぶリセット!調べなおしてる最中ね」


 ……つまり、姉ちゃんから見ても、リケラから見ても、オレは引っ張り込みたい人材、だな?

 なんたって元勇者だし、[魔法開発者]の称号も、ふたつめの世界から持ってるからなあ、オレ……



 姉ちゃんの旦那さんの若附わかつき 五斎いつきって人は、オレの高校の部活の大先輩だった。姉ちゃんの二つ下で、オレの六つ上のかなりのイケメン。


 家業は神主さんだと言ってたけど、本人は末っ子だという事で製薬会社勤務だった。

 オレが薬学部を目指したのも、このヒトの影響が強い。


「それにしても、オレは巫女の人みたいな勘はないから、イツキさんの事は何とも言えな……」

 喋りかけたら腹の虫が盛大に鳴いた。


「我々も朝ごはんにしよっか」

「……できたら朝飯にコメが食いたいです。昨日までいたとこ、コメ自体がなくてさあ」

「うわ不幸」

「なお二回目に召喚してきた世界でもコメは食べ損ねてる」

「おっけ、ストックから出しちゃう!シャケおにぎりだけど、りょ?」


 姉ちゃんも白米大好き族だから、コメがなかった話をした瞬間に、盛大に同情の顔をされた。

 そしてリケラはこの世界に来てからおにぎりが大好きなのだと言って、コンビニで売ってるシャケおにぎりを一人二つずつ、という感じで出してくれた。


「リケラも収納持ち?」

「そ!時間停止ありにしてるせいで容量がちょっときっちいけど、生活に支障はなっしん」

「も、ってことは安宿あすかも収納あるのか……」

「姉ちゃんだって寝袋出してたじゃん」

「あたしのはアイテムポーチなのよ。今のところ入手可能な最大サイズではあるんだけどねえ」


 おおっと?姉ちゃん、収納魔法持ってないのか……あ、空間適性がない。

 なんか前の世界の大巫女のねーさんみたいな属性構成だなあ。魔力や属性の規模は人類の範中って感じで遥かに大人しいし、空間系以外は全属性揃ってるけど。



「……ああ、コメだぁ……うめぇ……」

 千三百年ぶりのコメの味、沁みるわあ……

 シャケの方は前の世界には一応あったけど、コメとの組み合わせがですね!!!

 やっぱりこれは、白ご飯と一緒じゃないとなあ。あいつらもいつか食えるといいけどなあ、コメ……


「うわあ、泣くほど?」

「え、泣いてるオレ?」

「涙がちょっとにじんでるぅ。コンビニおにぎりでそこまで感動されると不憫になるわね」

 リケラには引かれ、姉ちゃんには不憫がられた。


 いやまあ実際千年バトルの最中なんて、マトモに物を食べてすらいなかったしなあ。

 我ながら、本当にあれはどうやって活動できてたのか、謎すぎる。


「でもこのコンビニのおにぎりは今も味が安定してていいわね」

「魔法でコピーしてる方が多いでしょ」

「プラフィルムの原料を輸入できないんだからそこはしょうがないわね」


 そういや石油製品プラスチックって原料全部輸入でしたね……

 なんか〈フードコピー〉という、食品関連なら何でも丸ごとコピーできる魔法があるんだって。チートだな?


 但しコピー可能なのは、食品と認識される物とその付属物だけ。

 しかも付属物の方は役目を終えると消失する。


 うん、剥いたプラフィルム、どこにもないね?


「まあでも、そんなトンデモ魔法があって良かったよね。食料事情は最悪にはならなさそうで」

「それが【ネットスーパー】ってスキル持ってる人もいてね……」


 ……なんかそれどこかの小説で見たぞ?


 そちらは通貨はどこのでもいいけど、お金さえちゃんと払えば、その場でいろんな商品を出してくれる謎スキルだそうだ。


 なにそれ便利。オレもちょっと欲しい。

 いやほら今日本で使えない通貨しか持ってないからさあオレ!


 まあそういうスキル持ちは政府が保護してて、一般市民ではそうそう会えないらしいけどね。


 なお普通に農業生産とか工場稼働とかもしてるところはしてるらしい。

 うん、人類は逞しいな!

 というわけで姉ちゃんは人妻属性持ちだよ^^

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