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第6話 この世界に起こったこと。

 目覚めたら、緑の葉と青空が目に入って、一瞬混乱する。


 ああいや、亜空間投影された半物質的な森で寝てたんだったね、オレ。

 快適な寝袋から抜け出して、立ち上がってうーん、と伸びをひとつ。


 寝袋の方はちょっとはたいて、そのまま丸めて収納に戻す。

 手入れが殆ど要らない素材って本当に無精者には有難い。


「おはよう、随分いい素材使ってるっぽいけどそれ」

「友達が餞別にってくれたんだ。安全な世界に戻るにしてもキャンプくらいは行きそうだしって」

 先に起きていたらしいリケラに聞かれたので、さらっと答える。


 まあ実態はコレ、奴らが自分で使うために依頼した品の試作品だったりするんだがな!

 それでも有難いし、実際今日みたいに便利に使えるんだから、慧眼なんだろうなあ、あいつらの。


「蜘蛛の糸素材?アラクネいるとこだったんだ」

「アルケニアっていって、もっふもふの半人半蜘蛛に擬態した、凄く温厚な種族が作ってるって言ってたかな?会ったことは流石にないけど」

 リケラは蜘蛛糸素材そのものの存在は知っていたようで、生産者確認をしてきたけど、多分あのアルケニアって種族、結構特殊枠じゃねえかなあ?


「んー……おはよう、安宿あすか、リケラ。あんた相変わらずお目覚めスッキリタイプねえ?」

「おはよー。姉ちゃんが寝起き悪いだけでは?」


 いや、オレの記憶より、今の、自分で起きられてる姉ちゃんのほうが相当寝起きは良くなってるな?

 同居してた頃は、三回は起こさないと起きなかったんだから。


「これでもレベルアップしてから結構マシなのよー。低血圧治ったし」


 なるほど、全盛期の肉体になるって健康になるってのとも同義なのか。


「つまり病気もある程度治る?」

「治癒魔法とレベリングで大半の病気は克服されつつあるわね」


 それは人類的には朗報、なのだろうか。


「問題はレベル上げるには最低限、ミリでいいからダメージ与えられないといけないってとこかなあ。それで諦めた人も結構いるっていうし」

「スキルや魔法が発現した人は幸運だよねえ」


 オレらの世界に、魔法やスキルやレベルの概念を持つリケラたちの世界が混ざった結果、こっちの人類側にも魔法やスキルに適応する人間が出た。


 が、それは全ての人類に及ぶものではなかった、ということらしい。


「エルディムびとでも、一般人類コモンピープルにはそういう力のない人が普通にいたからね。

 むしろ見た目コモンと同類でもスキル持ちとか魔法使いとかバシバシ出たこの世界の人類のポテンシャル、結構凄いんだと思うよ!」


 リケラたちの世界はエルディムという名だったそうだ。

 エルディム人とは、リケラのようなエルフや、知的種族あれこれを全部ひっくるめた総称なんだそうだ。


「事案が発生したのは、あんたが二回目にいなくなってから半年くらいしてからね。

 いきなり、朝起きたら世界が変わってた。


 それも、『全世界が一斉に朝になる』っていう異様な形でね」


 我等が地球は、当然のように丸いから、世界には時差があった。

 日本が朝なら、だいたい反対側にあるアメリゴやフェルナンブコ、央州のアルビオンやらルシタニア辺りは夜だ。


 それが、世界のすべてで、『その時』だけ一斉に朝が来て、一斉に夜になった、のだそうだ。

 そのあとは夜の時間がまちまちに過ぎて、元のように時差がついた、らしいのだが。


 らしい、なのは、その日以降、海からも空からも、それどころか陸上でも、他国との物理的な行き来ができなくなったからだ。

 但しインターネット回線なんかは何故か生きていて、通信はできるので、一応状況を知ることはできるのが現状らしい。


 まあ世界の改変とそれによるモンスターの跋扈で物理的に壊れた部分には、その恩恵はもう届かないらしいけど。


「日本、もしかしてマシなほう?」

「かなりマシ。但し二か所ほど、地獄の釜の蓋が開いたってレベルの大惨事になったけど……

 今はその二か所は常時自衛軍が張り付く羽目になってるわ。うちからはかなり遠いけどねえ、どっちも新興宗教系の本部があったとこだそうだけど」

「そういやこの国、他の国よりスキルや魔法取得した人が多いんだよねー、理由は謎だけど」


 サブカル文化のせいかと思ったら、それだけでもないらしい。

 大惨事の場所も考慮すると、ある程度宗教的な原因が近いかもしれない、とは研究者でもあるらしいリケラの弁だ。


「あー、日本人宗教観アバウトだしサブカル文化で慣らされてるから、スキルや魔法は受け入れやすそう」

「そ れ な。お他所よそじゃガチの魔女狩りやって何か国か滅びたらしいわよ」


 うわあ。

 異変に対応できる人材を狩ったら、そりゃ滅びるわな……どこか知らんけど……


「宗教といえば……サンタンジェロとかは?」

「あそこと、あとちょっと細かい定義は違うけどアルビオン辺りは魔法やスキルを神の賜いし奇跡だ!とか、やっぱり妖精も魔法も実在するんだ!って感じで上手い事扇動して、国家として一致団結して、前者は地続きの周辺地域も徐々に傘下に収めてるみたい」


 なるほど、トップが有能だったパターンか。

 アルビオン辺りは妖精譚もオレが知ってるレベルで有名なのがあるから、そこらへんが効果的だったのかな?


「逆にその辺の仕様を悪魔の仕業だ!って騒いだとこはだいたい更地」

「モンスターの巣窟じゃなくて?」

「エルディム人にまで危害が及んだから勢力まるっと隣接地に引き上げたら、人類もモンスターも最終的にいなくなってなんか砂に埋まった。砂が沸いた理由は謎」


 なかなかえれぇことになってるな……

 っつか移動禁止法則、エルディム人には無効なんだな?


「なので全体としては世界の人口はほぼ変動なし。エルディム人(エルディミアン)が増えた分地球人類(テラリアン)が減っちゃったってわけね」

「まあ砂に埋まった国はだいたいどこも砂砂漠は元からあった気も……いや、旧ルーシー辺りはなかったな……?」

「え??ルーシーってめっちゃ広くない?」

「南部や北部の自治州とかは普通に生き残ってるからそこまで広さはないのよね。古い部族宗教残ってるとこは持ちこたえたっていうか」


 あー、シャーマニズム系と魔法世界は相性いいかもしれないなあ。

 そういう勢力が生き残ってるとエルディム?の人と協力できた、と。


「ちなみに大陸の赤いとこはあらかた砂漠になりました」

「えぇ……?人口激減では……?」

「減りも減ったり、ね。ただ、エルディム人が予想外に人口多かったからそれなりに補填は効いてる感じ?」

「というか、総面積の比較でいうとウチのほうが広かったのよ」


 物質的に希薄だったから毀れずに済んだけど、エルディムの世界はこの地球上に無理やり圧縮されて押し込まれた状態、が一番近いらしい。

 根本的なところで混ざってしまっていて、もう分離も不可能じゃないか、という話だったけど。


「砂糖と塩が混ざり合ったら、分離するのはほぼ不可能だよなあ」

「砂糖と塩なら顕微鏡使えばなんとかなるけど、実態としては砂糖水に塩ぶち込んだ感じだからね」


 なるほど不可逆変化、分離しようとすると一旦加熱して析出させる以外方法がないけどそんな事したら人類が先に熱で滅ぶぞみたいな感じだな?

 エルディム人は地球の『国』を認識してない間なら通れた。今は学んじゃったんで無理だとか。

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