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第58話 そして、地上への帰還。

 ノノさんの謎も明かしたしあとは帰るだけ?いえいえ。

 オレとノノの様子をチラ見したリケラが、ノノの方を見て目を見張る。


「んん?……マジか、スキル消えてる?!」

「実際要らないんじゃないか?本人も持てあましてたんだし」

「それもそう……うん、イツキも動かして大丈夫だからキープ解除していいぞ、少年」


 あれ、リケラには今のこの場を維持してるのがオレだってもうバレてるのか。

 でも、もうちょっと待って。


「いいけど五斎《いつき》さん、なんでか全裸なんで服、いやせめて毛布くらいは」

「あっれ?マジだ全裸だ!?アズちん気が付いてよー!」

「えっいやだって誘拐された時には着てなかったはずだからそこは想定通りっていうか」


 オレの収納から毛布を出して、平坦な声で謎回答する姉ちゃんに渡す。

 今にも息絶えそうにすら見えていた当初と違い、姉ちゃんの腕の中の五斎さんは、落ち着いて眠っているように見える。

 ただ、すぐに目覚めるとかいうのは、ちょっと無理そうだ。

 あらゆる部分に、ダンジョンコアからの搾取によるダメージを受けている、そんな気配。

 相手を倒したからといって、奪われたものが返ってくるわけじゃないんだな……


 とはいえ救出は果たしたし、脱出も問題なさそうだ。

 だけど……いや、今考える事じゃねえな。


「じゃあ地上に帰るか」


 属性が合っていたのをいいことに、この部屋の状態だけをギリギリ維持していた力を解除し、最後の一部屋を崩壊させる。

 オレ達生存者、いや踏破者は、地上に自動送還だ。



 一瞬の違和感のあと、オレ達が出た先は、重厚な金属扉……迷宮ゲートの前だった。

 転移で無理やり抜けた時もここだったっけ?いや、もう少しズレてたな?


「なんでわざわざ、こうやってちゃんと帰してくれるんだろうな?」

「厳密には送還してるんじゃなくて『迷宮そのものがなかったことになる』巻き戻しが発生してるからだねー。

 なので、迷宮が作ったものは迷宮と共に消えるけど、迷宮が発生した時にココになかったものはこうやって地上に『弾き出される』。

 なお所持品は迷宮の産物であっても既に我々の所有物なので消えない」


 確かに、姉ちゃんが無理やり千切り取ったから五斎さんの足辺りに纏わりついていたネナシカズラの蔓は、綺麗に消えている。


「わあ、まぶしいです」

「確かにいい天気ねえ」


 ノノが目を細める。

 確かに薄暗い場所にいたのに、今は真昼間だもんな、天気もいいし。


「迷宮魔法陣が消失したのですが?!まさか?!」


 ばたんと迷宮管理事務所のドアが開き、声と共に受付嬢が姿を見せる。


「ああ、潰してきた。かなりガチの害悪野郎だったぞ、ここのコア」

「あれは残すの無理だわー。ダンマスは辛うじて救出できたけど、病院手配してー」

「はい!……あれ?それ以外にも人数増えてます?」

「ちょっと第二の方でトラブルがあって拾った。他にもいろいろ問題あるんでこの子も一旦病院だな」

「えー、びょういんは大丈夫ですーけんこうですよー」


 ノノの言葉遣いはまたなんだか頼りない子供のような、どこか舌ったらずなものに変わっている。

 でもおどおどしたところはなくなったな?


「なんででしょう、うまくしゃべれないのです」

「レベルが乱高下したから、身体的に混乱してるっぽいね……だから病院はちゃんといかないとだよ?」

「はぁい」


 自身の口の回らなさに首を傾げたものの、リケラが簡潔にした説明で、大人しく頷くノノ。

 あの『前世の彼女』の事ってどういう認識でいるんだろな、この子?


 程なく救急車がやってきて、五斎さんと付き添いの姉ちゃんが載せられていく。

 ノノの方は自分で歩けるから自力で行くというので、オレとリケラが付き添う形でバスで病院行き、の予定だったんだが……


「その前に、踏破情報、くださいっ!」


 受付嬢に止められました。

 確かに必要な手続きなので、ぶっちゃけ入場時より確実に健康にはなっているノノの病院は後回しだなあ、これは……



「うーむ、偽造住民カードに正規の踏破証明が付いちゃいましたねこれ……」

「それに関してはこちらが意図的に通していますので、全面的にウチで責任取るしかないですね」


 何故か第二迷宮の事務所にいた受付嬢もやって来て、事務所内に場所を移し、数人がかりでの踏破査定だ。

 パーティリーダーの姉ちゃんが五斎さんに付き添って行ってしまったから、オレとリケラで説明しなきゃいけない……!


 その過程でノノ達の入場経緯も聞いたけど、第二迷宮の事務所、ノノの住民カードが偽造なの知ってて通したのかよ!

 と思ったら、どうもアホボンの背後、つまりナイジェラ社を釣り上げたい意向があったらしくてだな……ぐぬぅ……


「それにしたって、ちょっとやり方が危なすぎるよ。最悪この国が砂に沈む可能性があったんだからな?」

「えっなにそれこわいどういうことです?」

「砂?何故そこまで壮大な話に?」


 流石にそんな因果はご存じなかったらしいので、職員たちには、リケラと二人がかりでたっぷり説明とお説教をして差し上げたとも!


「……わ、判りました……ひぇ……上にも、話は通します……」


 理解度が上がり過ぎたのか、真っ青な顔の第二迷宮側の受付嬢。

 第一のほうの受付嬢は無言でガクブルしながら同僚を見ているだけだ。


「根本的に悪いのはナイジェラ社と、奴らにいっちょかみしてるウチの犯罪者だけどね!」

「それでもリサーチが足りてないのは確かだから、もうちょっと気を付けて欲しいかな」


 マジでオレが通りかからなきゃ世界の超絶ピンチ……でもないなあ。

 恐らく、『前世の彼女』はそのルートだけは全力で止めただろう。

 その結果、毒蛇に自身が倒されたとしても、だ。


 でもそれは言わないでおく。釘刺しにならねえからな!


「あ、そういえばクロタネ氏一行の前に入っていたパーティには遭遇しましたか?」

「顔が判らないけど、多分生きた先行者には遭遇してない」

「クロタネ……わたしがつれられていたところのひとたちですね。

 その前にいたひとたちもぜんめつしたと思います。入ったときにはもうボスが変わっていましたから」


 そして第二に入った時に二人組探索者さんに投げられていた案件も、ノノがほぼ正解を知っていた。

 っつかあのアホボン、名前あったんだ。クロタネ?姓かな?


「判りました。残念ですが死亡認定ですね……」

「第二が崩壊した時にも、誰も出てきませんでしたしね」


 第二迷宮側の事務所前には、崩壊時、誰も現れなかったそうだ。

 つまりどのみち、最初に入っていた5人組だったかの冒険者は全滅認定な訳だが……

 証言があるのとないのとで、アフターケアが変わるらしいよ?


「そんなとこでヘマるような人たちじゃあなかったんだがなあ」

「途中でトラブルがあったのですかねえ……」


 流石にアホボン一行は彼らに追いついてはいなかったらしく、ノノもその辺の情報の持ち合わせはないらしい。

 まあ永遠の謎というやつだな。


「……そういやうちのバカ兄貴が第一にいたはずだけど」

「リケラ様の……ああ、スケロラーロ様ですか。

 一昨日くらいに出てきてから姿は拝見しておりませんね」

「なんだ生き延びてたのか……」


 リケラの物言いは随分酷いけど、擁護の余地は個人的にもあんまりないかなあ。


「ヒポボス倒せないとか言ってなかったっけ?どうなるの?」

「2時間生き延びたら強制退出」


 なんとまあ、ボス戦、倒せなくても2時間粘れば迷宮から追い出されて生還できるんだそうだ。

 でもそれで全滅って、どんだけ運がなかったんだろう、第二から入った最初のパーティ……


 後で聞いたら、どうもその件にもナイジェラ社が噛んでたらしくて、強制捜査が入っていた。

 オレらがなんかしないでも潰れそうだな、あの会社。


 まあ潰さなきゃいけないのは表向きのナイジェラ社じゃなくて、裏でやりたい放題していた創業者一族のほう、らしいけどもね。



 でもその辺は今は後回しだ。

 五斎さんの回復と、ノノの境遇改善とかの方が先!

 後始末がもう少し続くんやで。

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