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第48話 一番嫌なパターンが来た!!

 はい81層からです。

 おやつタイムという名の休憩の後、ついに81層だ。

 プリンを配ったら、ノノがほわほわ顔になって、なかなか可愛かった。

 レベルが上がって健康的になってきたのか、体型も栄養失調起こしかけのひょろひょろからは改善されたしな。


 そのレベルの体質体型の改善があったのに、御神鶏の卵サンドを2回食べただけで済んでるってことは、マジでこの世界だとあの卵は効果絶大っぽいなあ……


 うん、レベル酔いするくらいの急なレベルアップは、本来なら壮絶な空腹感と、食べても食べてもお腹が空く現象、場合によっては急激な体重減少がセットになってるらしいんだ……本来なら。

 その対策も、迷宮産食品を食べさせることだそうだから、魔力の高いものを食べさせるのが効くんだろうなあ。


「帰ったらあたしの昔の服でも探すかー。もっと可愛いもの着せたいわ」

「え、いえ、そこまでしていただくのは」

「いーや、未成年に対する保護義務違反とスキル関連法違反であの会社は絶対潰すから、とりま我々が保護する方向でもう決定!」


 事情を知ったリケラがなかなか強硬だけど、これはエルフ族にはもともと子供が少ない、つまり他種族にも増して、子供を大事にする習慣が根付いているからだそうだ。

 オレや姉ちゃんも、そういう習慣とは無関係にあの会社は真っ黒判定なんで、異存はないがな!



 転移魔法陣を乗り越え、入り込んだ81層は、これもさっきまでの70層台と似たような、濃い灰色の石壁と床の続く、所謂正統派迷宮仕様だ。


 ……だけど、これは。


「うわぁ、ここでこの臭いが来るのか……」

「なにこれ、くっさい……」

「うーむ、1200%アンデッドの腐臭っ」

「成程これは、燃やしたら余計臭うわ……」


 降り立った瞬間から周辺に漂う悪臭が、このフロアの敵の正体を盛大にバラしている。

 オレも知ってますよ、このニオイ。アンデッドフロアだこれ!!

 しかも腐りたてのフレッシュな死体系だよなあ!?

 年期がいったエルダーリッチとかはもっとカビ臭いんだよね!!


 今思うとあいつらカビてたのか、動けて喋れても?という疑問はないでもないが、まあそっちは終わった話なので放置だ放置。

 垂水の爺ちゃんはエルダーリッチ時代も臭いは特に感じなかったんだけど、なって5年程度だったからかな?

 あれも正直謎だけど、あの爺ちゃん会長はあらゆる意味で規格外な気がするから、それも今は考えない方向で。


 さて、この世界におけるアンデッドモンスターというのは、全て迷宮が生み出す存在であって、同様の他の迷宮産モンスター共々、厳密には魔法生物の亜種じゃないか、というのがリケラ達の研究結果だ。

 ただ、ダンマスとしてのエルダーリッチに関しては、人間の死体から変成させる、という意味で真正のアンデッドモンスターといえるのじゃないか、とも言っていたが。


 そして、ある程度完成した迷宮に使われているリソースの多くは、探索中に倒された探索者の屍ではないか、という説が有力だ。

 世界樹や迷宮が根付いている土地から収奪した分はほぼ階層構築に使われていて、外部からの侵入者を倒すことでリソースの補填をしている、というのがこれも有力な説だそうで。


 ……なんで今、長々と理論周りを回想しているかというとだね、現実逃避って奴だ。


「う、わ……」

 ほら、ノノが固まっちゃった。


「大丈夫、あれは迷宮が作った粗悪品のコピー、本物じゃないよ。同じツラで太鼓腹のが二つ以上いるだろ?」

 そう説明しながら、オレの背中側にノノを隠す。


「アホボンほんとに死んだのねえ!こんな再会の仕方になるのは想定外だけど」

「生前も時々変な臭いしてたけど、一段と臭くなっちゃってまあ!」

「生きてた時よりレベル高ェな?意味ないけど」


 そして高レベル女子二人は言いたい放題なので、オレも便乗して意味もなく煽る。

 そう、アンデッド……フレッシュコープスとして現れたのは、蛇にやられて死んでいた、アホボンとその御一行様を模した、腐りかけの死体の皆さんだ。

 勿論迷宮がリソースから生成したまがい物だけどね。そもそも最後に死亡確認してから今までの時間で腐るとか、ちょっと早すぎるよ?


 どうやら、直近で迷宮内で死んだ人間の姿をコピーする習性があるみたいだな、このフロアのモブ。

 一度に20体から出てきたもんだから、同じネタを使いまわしているのが一目でバレるというトンマぶりだがな!

 ちょっとずつ出してこられると、ノノのメンタルに悪影響が出ただろうから、正直間抜けな相手で助かるけど。


「めんどくさいし臭いから一掃しちゃっていいですか」

「やれ」

「遠慮しなくていいよーやっちゃえやっちゃえ」


 念のため質問したら、姉ちゃんは鼻をつまんで一言だけ。

 そして、リケラには雑に前に押し出された。


「へいへーい、汚物は消毒だけど火は臭さ倍増だし、〈極光《スフェアラ》〉」


 第一世界における光魔法は、元々からしてアンデッド特攻タイプだ。

 通常モンスでも闇属性の高い奴にはそれなりに効くけど、アンデッド相手にはデフォルトでダメージ倍増しが付いている。


 それだけ彼らもアンデッドには苦労させられてきたんだろうけどもね。

 今回はそのおかげで、腐りかけたアホボン達の姿をしたフレッシュコープス御一行は、一発で消し飛んだ。

 ドロップは何かな……えぇ……?

 オートコレクト、さっきの休憩中にオフにしたよな?


「うわあ悪質」

「なんにも!落とさない!」

「あいつらの見た目で魔力ポーションとか落ちても嬉しくない気もする」

「「あー」」

「ごめんなさい否定できません……」


 大丈夫だぞノノ、今は謝るターンじゃない。

 皆の意見が一致した大事なシーンのはずだ、ここ。


 意味もなくメタな感想を口にするのはやめておいて、そのまま進む。

 ここトラップも多いなあ、悪意マシマシというか……


 ……100層構成だとすれば、ここのボスはダンジョンマスターその1の可能性が高い。

 そりゃ本丸が近いなら、防衛に必死になること自体は、間違いではないな?


 現在この世界で、100層を超えている迷宮は未確認だという。

 未確認、つまりないと確定してはいないけど、オレの技能は、ここは100止まりだと明確に知らせてくれているからな。

 迷宮が育っている話はあったが、どうも茂崎のそれは、今年に入ってからは全て横拡張であるらしい。

 いくつかのフロアの範囲が明確に広がってるんだそうだ。


 そして、ひとつだけ安心材料もできた。

 その本丸その1を目の前にしたここがアンデッドフロアなら、余程の事がない限り、フロアボスもアンデッドだ。

 だとしたら、誘拐された段階で健康だった五斎《いつき》さんが手前にいる可能性は、限りなく低い。


 で、だ。

 休憩中のリケラの解説にあった、ノノの本名、『姫酸実《ひめずみ》 満優梨《まゆり》』。

 姫酸実なんて姓、流石に珍しいからオレでも覚えていたよ。


 ここのフロアボス、恐らく薬学部の部長だった、姫酸実 優至《ゆうじ》教授だ。

 あの人確かオレがいた段階で翌年が定年退官だったはずだから、かなりの年齢だったし、ひょろひょろよぼよぼの、講義内容もよく聞き取れない、健康状態ヤバめの爺ちゃんだったからな。


「……ってことは90ボス、エルダーリッチか……」

「心当たり……あー、なんか記憶にあるな?」

「元大学の行方不明者リストにいたね?」

「……おじいちゃん……?」


 そして、ノノは姫酸実教授の孫であると、自分から口にした。

 これあれだな?アホボン、それを知っていて敢えてノノを茂崎に連れてきたな?


「わたくしがいたら、攻略が楽になるってそういう……」

「実際は逆だったね?」

「エルダーリッチに関しては、あっちの爺ちゃんは完全に例外だぞ、恐らく」


 いや、孫が虐げられてるのを確認してキレてる可能性自体は否定しないけどさ。

 その場合でも、オレが知っている限り、エルダーリッチの取る行動は、原則として救助ではなく、自分側への取り込みだ。


 つまり、ここから先は、真っ先に狙われるのはノノになる。

 勿論、手出しさせるつもりなんてないけどな!

 Q1:嫌なパターンって?

 A1:敵(ボス)の身内が手元にいる(アホボンはモブなのでどうでもいいそう)。


 Q2:ところで腐りたてフレッシュのどこがフレッシュなの。

 A2:FreshじゃなくFleshなんじゃないかな。

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