第47話 80層と少女の加入。
第一攻略、再開。
あとどっかで謎のまま放置されていた、ある魔法がご開陳。
「えぇ……あのクソボン、なんつーことを……」
「ああ、持衰ちゃん生きてたああああ!行方不明になってて、探してたんよ!」
「というわけであの企業、裏側あんまりにもドス黒いんだけど処した方がよくね?」
アホボンの末路に引き続き、ノノの事情を解説したら、姉ちゃんはドン引きし、リケラからは予想外の台詞が返ってきた。
いや、予想はしてしかるべき、リケラの研究はスキルにも当然及んでいる。
【持衰】なんてレアスキル、知らないはずがない。
っつかなんだその持衰ちゃんて呼び方は。
「取り合えず正規の住民カード持ってないんで、ここ出るまではノノさん呼びで」
「よろしくおねがいします」
正式にパーティに編入されたノノが、頭を下げる。なおレベルは既に120だ。
流石に100を超えると伸びが鈍化した。
いやマジで姉ちゃん、なんでレベル500超えてんのこの環境で。
「しかしレベルがえらいことになってるわね。後が大変そう」
「いえ、それは別に構わないです。探索者になりたいわけでもありませんし」
「そうねえ、真っ当な探索者なら、【持衰】持ちは申し訳なくて入れられないしね……」
真っ当ならね、とやけに言葉を強調するリケラだが、納得しかない。
あのアホボンは本当に碌でもない輩だった、オレ、死体しか見てないけど。
あのバカ、もしパーティが壊滅した時にノノが生き残った場合、アホボンを蘇生するよう命令していたらしいんだ。
つまり、パニックの末の行動じゃなくて、ノノをパーティから放り出したのは、確信犯だ。
ただ、蛇に睨まれたノノの方がパニックを起こして、口約束に過ぎない命令を忘れ、ボス部屋から逃げ出したのが真相らしい。
いやまったく、あの時ドアを閉めたオレ、大正解だよ!
迷宮に吸い取られてリソースになったろうから、今後はそうそう迷惑行為もできまいし。
オレが見た時には既に死んでたから、誰の手も汚れずに済んだしな!
「それにしてもバカ本人はともかく、20で壊滅するような取り巻き連中じゃないはずだけど」
「もう一組先行していた探索者があの蛇で敗北して、蛇が変異したとこにアホボンが突っ込んだみたいでさ」
「あー、20以降は変異体出るんだっけ。強さどんなもんだった?」
「オレにそれを聞く?ウィンドエッジで輪切りにしたから判んないよ!」
「そういや我々40までは瞬殺だったね……」
いつも通り、ああだこうだ言いながら結界を構築し、ボス扉を開く。
まあ扉を開くのはだいたい姉ちゃんの仕事なんだが。
扉の中にいたのは、でっかい……巨大なクリスタルの結晶、としかいいようのない物体だった。
「うーむ、物理で撲殺?魔法弾いてきそうだしあたしの剣は無理そう」
「んじゃオレですかね?」
「これで殴ったらふにふにだったりすると笑うけど、そういう捻りはないよね、ココのモンス」
「わー。キラキラだ……!」
ノノの様子をちらっと見たら、なんかおめめがキラキラしている。
そっか、光る物好きか。女の子だなあ。
いや待て?そうじゃないぞ?オレの眼には、キラキラしているとまでは、言えない。
「うわあ幻覚持ちかこいつ……いや、魅了だこれ」
「根拠?」
「ノノたん」
「あっ」
指さした先のノノは、キラキラおめめのまま、数歩、前に出る。
ただ、それ以上のアクションはしない。なんだろう、まさかダメージなすりつけとか……やりそうだよなあ、ここのダンジョンコアだとさあ……
「うーん……そうだ、これ使ってみるか。〈遮断〉」
「うぉ?またなんか変わった魔法キタコレ!」
そして詠唱したのは、ひとつ前の世界で覚えてきた、闇属性の超級護法。
護法というのは結界術系統と強化魔法を合わせたカテゴリだったんだが……
この〈遮断〉だけは、なんともいえない魔法、というのが覚えた頃の印象だった。
指定したもの・人の周囲の空間の連続性を断ち切り遮断する、というのが覚えた時の魔法の解説だったと思う。
なんともいえない、というか、何でこれが強化魔法なんだよ?っていう純粋な疑問がですね。
で、取り合えずボスモンスター周辺の空間を遮断状態にして隔離してみたんだが、案外あっさりと隔離されてくれるもんだね?
「……ほへ……?え、わ、わたくし、魅了されてました……?」
「そうらしい。そんなつもりじゃなかったんだが、鉱山のカナリアみたいになっちゃった、ゴメン」
「ごめんねえ、あたし達全員、状態異常通んないから気が付かなくって」
「いえ、わたくしのステータスだとしょうがないです。レベル以外全然なので……」
ちょっと中途半端な間を置いて、ノノが〈遮断〉が発動する直前の自分の状態を把握する。
確かに、なんかこう……レベルは姉ちゃんの2割弱くらいの辺りなのに、ステータスは多いものでも姉ちゃんの5%くらいの数字だよなあこれ。
「職業的なものを意識しないままレベルが上がるとこうなるんだよねえ。レベル酔いしなかった?」
「もうレベル酔いするとこは過ぎたんで暫くは大丈夫だと思います」
「つまりしたのか」
「ごめん、パーティ組んでなくても経験値流れるって知らなくってさオレ」
真面目な話、レベル制度初見だから判んないんだよ!
「そういや安宿はレベル制度自体が初見か……今回はしゃーなしね」
「それにしても、【持衰】に改編履歴が付いているってどういう……いや今はそれは後回しね」
そして姉ちゃんはオレの履歴を思い出して納得し、リケラはスキルの改変履歴に目を止めた。
まあリケラならそこは当然気付くはずだよね。
「改変はあの企業だな。スキルの終極系の可能性の一つを無理やり引きずり出して上書きしてた。レベルアップで元通りになったけど」
「……ってことはあのクズ野郎、あのクソ会社に抱き込まれたのか……エルディムでもそんな技術持ってる奴ふたりくらいしかいないし、片方は収監中だからね……」
そして技術者に心当たりがあるらしいリケラが歯噛みする。
なおボス君は駄弁っている間に、オレが撲殺しました。2発殴ったら全損とか石っぽいくせに貧弱だなあ!
水晶の類かと思ってたら、普通に割れ方がガラスのそれで、そんなとこまでパチモンかよ貴様!!
「まさかの:ガラスだこれ」
「パチモン……?」
「テーマパークでもアクリル使うでしょうに」
「キラキラしてない……」
メンバーにも不評ですね!
なおノノを正式にパーティに編入したので、箱は4つだ。
ドロップの方はとみれば、琥珀と珊瑚と真珠?そこでなぜ宝石系?
「宝石質ギリギリナシのダメクオリティな辺りが嫌らしいなあ!」
「いやだってここで出るの薬の材料だろ?漢方薬方面に宝石質は必要ないじゃん」
「あーそういう」
「箱って何が入っているんでしょう?」
「階層によって違うわね。潰すんだから開けてもいいっちゃいいけど……」
「ノノちゃんマジックバッグ持ってる?」
「はい、借りたのがあるので、しまいます」
流石にマジックバッグは貸与されてたようで、ノノは簡素な肩掛けかばんに箱をしまう。
荷物持ちもさせられてたのかな?割と容量でかいかばんのようだけど。
「さて次は」
「ごめん姉ちゃん、さっきの護法でだいぶ魔力損耗してるんで休憩させて」
「え、あれそんな消耗するの」
「超級カテゴリなんだよ、あんなんでも」
うっかりしてたんだけどね、ひとつ前の世界の上級以上の魔法、消費魔力が増えてたんだわ。
さっきの〈遮断〉、超級だからね。あの世界の闇属性は魔力消費半減だったから払底することはなかったけど、この世界だと超級ってだけで4割増しだもんで、いきなり魔力がほぼフルから半分を割ったよ!
まあ〈現物召喚〉のだいたい9割消費よりはだいぶマシなんだけどさ。
「あんなんっていうけど、多分唯一無二だよあの魔法?」
「そっかー。第三世界でもあれ使えるの多分オレだけだったしなあ」
そう、護法超級を使える奴は他にもいたが、闇属性条件を満たしてるの、オレだけだったんだよな……真龍勢は闇属性自体持ってないって話だったし、もう一人イケそうだった友達も、やや光優勢で闇だけはそこまで高くなかったんだよなあ。
聖獣の類にも、闇属性の高い個体はいたけど、彼らの魔法は人間や真龍の扱うそれとは別物だったんで論外だし。
この世界のエルディム系神獣はどうなんだろうな。今度暇なときに調べてみるか。
闇超級の護法と攻撃魔法、設定だけはしたんだけど後者はどこにも出す機会がないなあ。
※MMO版の方では超級雷光闇は違う魔法になっちゃってェ……
かわいそうな〈ケイオスレギオンコール〉……
あとね、ボスが貧弱なんじゃなくてね、キミのレベルがおかしいの。




