第5話 自分の事情は八割バラす。
「……つまり、安宿、あんた二回も他所で勇者やってきた、と」
「そういうことになる。二回目は世界側は割とバッドエンドだったけど。
まあ今は称号的には元勇者なんで。これなら帰れば普通のヒトの生活をやれる……と思ったのになあ……」
いやほんと、マジでオレ、帰って来たその直後まで、普通のヒトとして生活する夢見てたんすよ?
まさか世界の方が大変貌を遂げているなんて、想定してねえよ!
「君のステでそれは無理。まあ逆に生活には困らないよきっと」
「え?そんなにえぐいの」
そして、俺の発言は秒でリケラに否定され、姉ちゃんの方は首を傾げた。
あ、姉ちゃん、鑑定系技能、ねえな?
「アズちんは鑑定系技能からっきしだもんねえ。レベルの数字の時点でバグってるよこの子」
「レベル?レベルあんの今のこの世界?」
ぶっちゃけよう、今まで呼び出されたりあれこれした世界、どこもレベル制は不採用だった!
だから今のステータス画面にも、レベル欄はなかったりするんだな、これが。
「むしろ三つも他所の世界体験してきて、全部レベルの概念なかったの?」
「ふたつめはそこまで検証してないけど、ひとつめと三つめは確定でなかったね」
ひとつめは今のステータス画面を整えてくれた世界だから、レベル制度があれば反映されているはずだし、三つ目の世界では、世界に関わる神々から直接、レベル制はラノベのフィクションだけだねー、という緩い返事を貰っているからなあ。
「あー、レベルの概念がないとこで能力上げするとバグるのか……今の世界のシステム、衝突後に突貫で生成されたっぽいわりに出来はいいけど、そこら辺が限界かあ」
リケラの発言を鑑みると、どうもオレのステータス自体がなんかバグってる可能性もありそうだ。
「バグってるっぽいの、レベルだけ?」
「属性値もなんか変だねえ、光闇が突出して高くて、後は混沌タグ付いてる」
「それは仕様。光は一つ目で増えて闇は二つ目で増えて混沌タグは昨日までいたとこでついた」
回答したら、リケラが眉を寄せた。
「いやこれ光が高いのは異世界勇者あるあるだから判るけど、魔族並みに闇が高いのはイミフ」
「そういうもんか。一つ前の世界だと闇属性持ちは仕事に困らなかったがなあ」
オレも何度か酒造とか国家公務員やらないかって勧誘されたもんな……
「あー、うちらも闇が強いからって魔族差別とかは別にないよ?あいつら大体いい奴だし!
それにしても反属性同士でよくもまあこんなに……ああ、そこで混沌タグが生きるのかぁ、よくできてるなー」
「属性も高い?レベルは……その分だと高そうだし……身体能力は……あたしの弟だからなあ、あるよねえ」
リケラがオレの話を都合よく納得したところで、今度は姉ちゃんが口を挟む。
「普通……よりはあるだろうなあ、多分。
つってもいっこ前の世界は召喚されたわけじゃなかったからか、割と平穏だったし、魔法使う系の活動の方が多かったから鍛錬はサボってたけど」
なにせ、大巫女のねーさんらと世界を救いに行った後は、ひたすら空間魔法の研究と実践しかしてなかったからなぁ。
その副作用で、その前から一応使えていた収納魔法まで容量無制限にクラスアップしたんで、食材各種とか友達に作って貰ったごはんとか、とある場所で拾った謎の金属棒とか、いろいろ突っ込んである。
整頓機能も友達が示唆してくれたから、それも構築済みだ。
……お、全部取り出し可能だ。あの世界のモンスター素材的なモノも結構あるんだがな?
「らしくないわねぇ」
「そうしないと帰れなかったんだから、しょうがないさ」
研究の合間あいまに依頼されてた転移依頼も、小遣い稼ぎより空間魔法の習熟度アップの方に貢献してると気が付いたのは、あれは何時頃だったかねえ?
結局、魔法技能カンストしないと魔法陣自体が作れなかったもんな!
魔法マスターの友達と巫女のねーさんによればあの世界の仕様だって話だったけど!
「つまり、ちゃんと帰ってくる意思はあって、五年?」
「ずっとうちに帰る事しか考えてなかったよ?」
それは、間違いない。
どんな混沌とした状況でも、破滅的な世界の崩壊を目の当たりにしても。
オレはずっと。
ただ、姉ちゃんのいるこの世界に、この国に、帰りたい。
それだけを思っていたさ。
「アズちんの弟にしては健気」
「どういう意味!」
「素直だなーって」
「うっ」
こっちは真面目に考えてるのに、女二人は掛け合い漫才か?
せっかくだからステ確認し……
……うわぁ。
「姉ちゃん、その称号いつついたの」
姉ちゃんの称号欄に燦然と記されたそれは。
「そのって……ああ、[勇者代理]?
異変の後なのは確かだけど、正確な時期は判らないわねえ」
「元勇者と勇者代理、どっちが強いん?」
「レベルがバグってるからには元職の可能性?」
「姉ちゃんのステだとそうなるかなあ」
「おのれ、鑑定持ってるだと?弟のくせに!」
いかん、これオレまで漫才に巻き込まれる流れだ。
「とりあえず基本のオレの状況は教えたんだから、この世界の状況とかも知りたいけど、時間も時間だし、一旦寝ないと美容に悪くない?」
「レベル上がったからそこまで影響はないけど、確かに一回寝て仕切り直すのはアリね。
リケっち、場所借りていい?」
「亜空間投影とはいえ、見ての通り森だから、好きなとこで寝ていいよ。寝具はないけどね!」
「収納に寝袋入れてるからそこは平気」
そうだ、完全に森に見えるからうっかりしてたけど、ここリケラの部屋だった。
それにしても、今の姉ちゃんの台詞からするに、レベルが上がると人によっては若返る?可能性があんのか。
「なに?レベル上がると若返る?」
「身体的な全盛期に身体が寄ってく感じ、って言ってたかな。
なので年寄りでも戦えるスキルや武器のある人はこぞってエイジング目当てでレベリングしてるわよ、今のこの世界」
「……人類、っつかじいちゃんばあちゃん逞しいな……?」
寝る前でもこのくらいは聞いておくか、と思ったら、予想外に人類も元気だった。
まあオレが暮らしてた頃も、オレらや、オレらの親の世代よりじいちゃんばあちゃんの方が元気だった気はするが。
そこら辺は親戚も祖父母も、それどころか両親ももういないオレと姉ちゃんにとっては誤差のようなもんだったけども、なあ。
なお姉ちゃんのレベルは3桁の後半に入ったあたり、だ。
リケラの方はその倍以上なので、年季が違うって奴?
いや、レベル制を持ち込んだのは状況的にリケラの世界のはずだから、おかしくはないな。
「それにしても元勇者かあ、代理返上できると思ったんだけど」
「そもそもなんで姉ちゃんが代理なんてことに……?」
「そこがもうさっぱり」
だべくりながら姉ちゃんが出した寝袋は、オレも知ってる有名アウトドアメーカーのそれだ。
あれ欲しかったんだよなあ、と思いつつ、新たな疑問を口にしながら、オレも自分の寝床たるべき寝袋を取り出す。
ふむ、異世界素材の製品でもそのまま存在できるか、これなら問題ないな。
蜘蛛絹とかいう貴重な素材使ってるから、これ劣化するとちょっとどころじゃなく悲しくなるとこだったぜ、セフセフ。
この世界自体がだいぶ混沌化傾向があるのでたいていのものは持ち込みオッケー。




