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第38話 厄介と面倒。

 ストーカーは一人だが、めんどくさい奴は他にもいるんだ。

 その日はそのままワーム部屋で各人毛布にくるまって休息だ。

 一応寝たふりしつつ、見張りはしているけどね。


 リケラが小さな警報用ゴーレムを出して、かつ慎重に結界石というアイテムで防御陣地を作っての休息だけど、どうもそれだけでは足りない、そんな気がして。



 予想通り、夜明け近くに、そいつの気配はやってきた。

 といっても、相手がいるのはボス部屋の扉の前だ。

 流石にオレ達が部屋にいる限り、ボス部屋の扉は開かない仕様だそうでね。


 様子を伺っていたら、するりと何かが入り込む。

 おいおい、ボス部屋の仕様無視とかどういう?と思ったらこれあれだ、ストーキーとやらの同類だな!情報収集用魔法機械って奴。

 なるほど、ボス部屋の仕様はあくまでも生き物向けのそれか。

 こういう魔法機械には抜けてくるものもある、と。

 姉ちゃんたち、これを警戒してたんだな?


 面倒くさいから魔力をぶつけて叩き落とす。姉ちゃんの寝顔とか撮られるのはノーサンキューだとも。うわ、また入ってきた!しつこいな?!


「……んん……あいつ来たのか……メンドクサイ(レルビュデミラ)……」

 リケラが寝ぼけてか、推定エルディムエルフ語混じりでぼやきながら起きてきた。


「あ、起こしちゃったか、ごめん」

「いや、いいよん、回復ぶんの休息はもう済んでるし?」

「……おーぅ……また来たの、アレ?」


 ひそひそと喋っていたら、姉ちゃんも起きてしまった。大丈夫かな睡眠時間的に?


「んでこのしつこく魔法機械突っ込んでくるバカはどこの何者?」

「アタシの……昔の知り合い、くらいのやつだけど、ぶっちゃけこの程度の嫌がらせしかできない雑魚よ」


 そう答えるリケラだけど、言葉にいつものギャル味がないし内容もなんだかあいまいだ。

 正直なところ、本人、そいつをかなり嫌ってるんじゃないかな、これ。


 魔法機械は10体目を潰したら入ってこなくなった。

 魔力切れ、ではなく、魔法機械のコアが品切れなんじゃないかとのこと。

 そういわれて入り口際辺りを見たら、潰した機械の落ちたあたりに、ゴマ粒みたいな異物が落ちているのが、床に吸い込まれて消えていくところだった。

 床に放置したアイテムを認識してないと迷宮に吸い込まれるんだけど、どうやら、途中で気が付いた場合も返品不可らしい。


「あー、リソース……」

「このくらいだと殆ど影響ないわ。解析系コアだとちょっと面倒かもだけど、アレの場合、所詮できることって、こっちの世界でいうパパラッチだかなんだかがせいぜいだし」


 つまり移動と撮影と通信以外の機能はない?

 あのサイズにそれだけの機能を詰め込めるの自体は大したもんだけど。


「で、これも積極的な対処は不要?」

「完全無欠のノンデリなうえに、軽率で思い込みだけ激しいくせに脳みその軽い系バカだけど、一応身内だからねえ……」


 うわあ、リケラの、身内?

 それは……どう解釈すべきなのか。


「みうち。」

「年のおもくそ離れた兄貴なんだけど、あのバカだけ、なんでこんなにってレベルで救いようのないアホでさあ……」

「申し訳ないけど、それに関しては否定できない……百合スレの妄想鵜吞みにしてカチコミかけてきて自爆するバカとか、流石にあたしも擁護できない……」


 うわあ。


 どうしよう、今ちょっとガチめに殺意が。

 勇者機能の状態保全あたりが効いて、すぐ沈静化したけど。


 あのスレもちょっとだけ見たけど、割と本人見てる場所で書くとか正気じゃない系のエロショートストーリーとかぶちまけてる奴、いたよな??

 うっかりポスト直後に読んじゃったんだよなあ、あれ。

 あとで運営に削除されたってとこまでは確認してる。


 いやでもカチコミは多分オレが帰ってくる前の話だから、あのエロ小説もどきのせいじゃない、のかな?


「少年は掲示板は見てる?百合スレに何回削除されてもBANされても垢偽装してエロ小説書いてくるバカがいてさあ……」


 あ、だめだ。そいつの居場所探し出して締め上げたい衝動が。

 そのくらい気に入らないっていうか酷い内容だったんだよなあ!!

 ……締め上げたい、くらいだと沈静化は発生しないのか……うぬぅ、モヤっとする。


「警察というか管理組合何してるの……あれはだめだろ……」

「通報はしてるんだけどねえ」

「迷惑行為じゃなくて名誉棄損で警察の方がいい奴だと思うんだが」

「そっちにもとっくに通報はしてるんだけど……どうもこの件、全体に動きが悪いのよねえ」


 うーむ、なんか予想外に生臭い話になりそうな気がしてきたぞ……

 このレベルもスキルも魔法もある世界で、警察とかどうなってるのか正直謎だけど。


「警察って機能してるの」

「スキルや魔法を鍛えた人達が少数精鋭化してるからむしろ検挙率は上がってるわ」

「というか今の世界になってから犯罪件数自体が減ってる、らしいよん」


 茂崎にはなかったけど、垂水には中堅クラスの暴力団がいた、らしい。

 彼らは新たなシノギを茂崎の薬品類の出る迷宮と見定めて……乗り込んだ実働部隊が全滅した、そうだ。

 これはどうも、迷宮管理組合ができる前の話らしい。


 ここのモンスター、低層から物理無効がちょいちょい混ざってるからなあ。

 ドスとヤッパとハジキだけじゃ無理だったのか、それとも無謀な突撃をしてトラップの餌食になったのか。


 辛うじて逃げ帰ったチンピラがいたので壊滅という状況が判明し、当時の組長さんはあっさり組を解散したって次第だそうな。


「あそこの頭は悪い人じゃあなかったからねえ、個人としては」

「クミのおっちゃんらの生き残りも、今は探索者やってるよ!ここじゃなくて垂水だけど」

「迷宮の仕様で調べられないこと自体はありそうだけどなあ」

「そこはもうそういうものだとしか」

「フィールド野宿の研究者を襲って返り討ちにされた強盗なら初期にいたっけね」


 あ、これ、リケラはその手の経験、あるな?

 証拠なんてないけども。


 ともあれ、組合成立後に探索者として登録できた人たちは、おおむね健全に迷宮から収入を得ている、ということのようだ。


 ……エロ小説書きの方は戻ってから世界樹さんに相談しよう。

 インターネット関連補助してくれてるんだから、情報持ってそうだしな。



 野営あとを綺麗に片づけて出立する。

 といっても吸収防止に焚火台は寝る前に片づけたけど。


「温度管理のできる結界術ってあるんだねえ」

「温度管理というか、属性を織り込むんだ。あったかくするときは火属性、暑すぎて困るときは氷属性、みたいに」


 これは一つ前の世界の、結構最後の方で覚えた。

 オレよりよほど優秀な結界使い様がいたのでね!


 なおオレがこっそり不寝番になってたのも、実はこの結界のせいだ。

 一つ目ので覚えたやつと違って、結界展開中は寝られないんすよね!!

 でも流石に、ちょっと毛布一枚で寝るには寒そうだったからさあ。


 ま、千年からろくざま休息も取れずに戦い続けた経験からすれば、数日の徹夜なんて屁でもねーですってなもんで、ね。


 余談だが、迷宮で唯一置いて行っていいものがある。

 ありていに言えば排泄物だ。流石に持って帰るのは……不可能ではないけど、体裁が宜しくない、ってことらしい。


 まあレベル上がると魔力生成の為に代謝や吸収能力、分解能力が上がって、排泄物の量も回数も激減するんだけどね!とはリケラの弁。


 ……そういうところは共通してるんだな、今のオレとも。


 なお追いかけてきたリケラの身内は、あのワームなボスを越えられない、らしい。

 魔法だけでやると絶対ガス欠するし、弓はといえば、ワーム君、単純物理は9割カット、但しトドメだけは物理指定、なんだそうだ。


 え、あの光の矢、魔法だけじゃなくて物理も乗ってたの?

 物理と魔法の複合攻撃。この複合が逆立ちしてもできないのでポンコツ扱いなんだ<兄貴


 元組長さんは腹黒いとこはちゃんとあるよ。探索者になり得ない輩を纏めて鉄砲玉にして片づけてるわけでね。

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