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第34話 ストーカーと迷宮計画。

 そういやいないはずないよなーって。

 リケラとの話は、昼食を挟んで夕方まで続いたけど、後半はほぼ魔法の詳細に関する質疑応答だった。

 まあオレも一応、仮称第二世界で[魔法開発者]の称号自体は取ってるからね。


 問題は、オレの場合書くことに難があるから、協力者がいないとにっちもさっちもいかないってことだけど。

 第二世界では、冷遇されていた天才平民研究者、という逸材を協力者にできたんで、どうにかできたけどさ。

 この点では今回のリケラという存在は理想的な協力者だ。本人も魔法技術者だからね。


 この第二世界という仮称は、あの世界の本来の名称を知らないからだ。

 世界そのものに名称がない事もそれなりにあるらしい。実際地球だって世界全体に固有名詞はついてないようだし。『ワールド』は一般名詞だよなー?


 そもそも言語が統一されてたりもしない、言語ごとに結構適当に呼ばれている気がする地球の名称はさておき、この世界って宇宙にも開発の手が伸び始めていたからね。

 世界ごっつんこで実質なしになってるみたいだけど。


(人工衛星ちゃんたちは働いておりますのよ)

 マジか。いやあれは自動で動くから、故障するまでは動き続けるんだったか?


(エルディムにいた非実体型生命体、大雑把にいえば精霊種の一部が衛星ちゃんと混ざり合って、私と交信してくださってるんです。それのおかげで、私も通信のお手伝いができるのですわ)

 ほほーう、世界の通信補助、空からもやってたんだ……


 それにしても世界樹さん、茂崎でも普通に喋るね?


(守り人ちゃんが近くにいますから。流石にそちらの迷宮に入られてしまうとお話まではできないと思いますの)

 おっけー了解。迷宮内では自力で頑張る、把握した。



 夕方に、明日以降の予定の相談があるというリケラ共々家に戻ったら、ちょうど姉ちゃんもぶーたれた顔で帰ってきたところだった。

 そこまで不機嫌なのも珍しいといえば珍しい、気はする。


「おかえり姉ちゃん。どしたん?」

「邪魔が入って15層で終わった。ほんっとあのクソボン、碌なことしない!」


 どうやら誰かとかちあって揉めた感じだな?

 ってまたなんか追跡してる変な魔法機械があるな?しっしっ。


「情報よろ、晩飯出すから」

「……ストーキーをそういう追い出し方するんだ……」

「ストーキー?」

「さっきアズっちの後を追跡してた魔法機械。まあぶっちゃけストーキングの時点で違法なんでもっと派手に壊してもいい奴ね!」


 リケラの解説は判りやすいようで、煽りが含まれている感じがする。


「もしかして姉ちゃん個人的にストーカーいる?掲示板のアレ、まだ健全なほう?」

「家で話すわー」

「おっけ」


 確かに立ち話する内容じゃないな、うん。



 夕飯はオレのストックで一番たくさん入ってるパンとシチューだ。

 クリームシチューじゃなくてスープが透明な奴。まあごった煮ともいう。


「これも旨ぁい!このお肉なにー?」

「蹴撃兎《リーピングヘア》、こっちでいうところの魔兎が近いかな」

「首狩り兎の予感がする、でもおいしい」

「だいたいそれ。前の世界、魔力持ちは旨いのが通説だった、例外はあったけど」


 あの世界、魔猪だけは美味しくなかったんだよなあ、まさかの臭みアップで。

 あの変異体はオスしかいないせいじゃないかって話だったけど。

 この世界だと魔猪は生での調理難易度以外は完全に高級な豚肉なので旨いからありがたい。

 おまけに完全に定石化したハメ技があるそうでお値段もお手頃だ!


 美味しく晩飯を食べ終わったら、腰を据えてお話しあいだ。


「垂水のトップアパレルの会社の会長のバカ息子がしつこいのよ」

「無駄に金だけ持ってるけど本人実は権力は持ってない、ってパターンだからパーティとかには出てこないんだけどねぇ」

「姉ちゃんにバカ息子呼ばわりされるレベルの人間に実権与える親いたら、その会社とっくにコケてんじゃね?」

「それはそう。優秀な兄姉妹に挟まれてグレたっていうけど、あれは本質的にダメな奴ね」


 うちの姉ちゃん、人を見る目はあるほうだし、あんまり他人の悪口は言わないんだけどな。

 まあ正直に言えば、聞かなくても見当は付く。

 金持ちでバカボンって時点で、どうせ五斎《いつき》さんを単なる行方不明者扱いして、何年もいない奴なんか捨ててオレの女になれ!とか言い出してんだろう。

 姉ちゃんは弟から見ても、見た目はいいからなあ。


「ただでさえイツキの悪口言ううえに、愛人になれ、よ?馬鹿にするにも程があるわ」

「茂崎はFFありなんだから、やっちゃえばいいのにー」

「常時魔法使いの取り巻き連れてるからめんどくさいのよ」


 そっかー、茂崎はフレンドリーファイアありかー。予想通りではあるな。


 ……まあオレにとっても、名前も顔も知らんとはいえ、そのふざけたバカボンは敵認定だ。

 いざとなったら……オレがやればいいだろう。


 FFありの迷宮での殺人は、余程の事がない限り捜査はされないんだという。

 証拠、どころか死体そのものが迷宮に吸収されてしまえば解明なんて不可能だからだ。


 だからといって、姉ちゃんに人殺しなんて、流石にされられない。

 オレは他所で軍隊相手に経験済みだから、もうどうでもいいけど、その辺は。

 一人殺せば殺人犯、千人殺せば英雄って、どこの言い回しだったかな?


「んじゃもし邪魔しにきたら、やっちまっていい?できるだけ穏便にはするけど」

「少年、やる気に満ち満ちてない?」

「そこまでは。そんな背景だけめんどくさそうな奴には関わりたくないよね正直」

「安宿《あすか》、あのねえ……はっきり言っとくけど、完全排除したいほどじゃないのよ?

 不愉快ではあるけど、ぶっちゃけ口だけの、実力行使に出る気概すらないチキン野郎だし。

 今回途中で帰って来たのは、あいつにつき纏われるのが面倒だったんじゃなくて、馬鹿が洪水トラップ踏んだからだし」


 ふーん?と聞いてみたら、ソロの時だと、バカガキの取り巻きが姉ちゃんの倒した敵のドロップ品をかすめ取っていくらしい。

 本来なら、戦利品泥棒は探索者組合では禁止行為の一つだけど、姉ちゃん的には前半層のドロップ品なんて要らないから、荷物持ち代わりに黙認してたんだそうだ。


「まあでも次からはそいつら、要らないよね?オレがいるんだから」

「それもそうではあるのよねえ」


 やる気がなさげとはいえ、オレの発言を姉ちゃんは否定しなかった。

 荷物問題も完全解決できるからな、オレ。


 旨いもののあとに不穏な話をしてしまったので、口直しにプリンを出した。


「少年、キミ、甘いもの出せばいいと思ってる?」

「わあ、美味しいわぁこれー!まだあるの?」

「これはそこそこ数があるよ」


 姉ちゃんは一気ににっこにこだし、言葉に反してリケラの顔もにへらっとしている。

 オレも久しぶりに一つ食べた。卵が濃厚で美味しいんだよ。



 「んで次は茂崎潜るんでいいんだよね?」

 邪魔者の話は終わらせたので、次は迷宮行の予定確認だ。


「そろそろ第一が沸くから、そっちでいいと思う」

「そうね、あの短小バカボン、第一にはビビって入っても来ないし」


 どんだけ役に立たねえんだよそのバカボン……?


 いや、遭遇しなくて済むなら、それに越したことはない。

 オレだって、進んで手を汚す機会なんてない方が気楽でいいからな。


 そんなわけで明日はスーパーその他で食料の手配をして、明後日から茂崎第一迷宮行きで決定だ。

 明日はついでに役場でジーシャさんに新しい魔法陣も書いて貰う予定だよ!

 なおこの時点で通称バカボンには姓名の設定すらない。

 バカバカ言うてるけど、実力行使に出られない、つまりレベル見るくらいはできるんじゃないですかね。


 今回のプリンの卵はフツーのハ国産。千人殺しは多分ア国脱出時の話。

  なお世界樹さん、一部ラスト番外編でも普通に喋ってますが、あれはPC前にいたせいですね!(通信インフラ押さえてるんでこの大樹の精霊……)

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