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第20話 50層のジャングルにて。

 ついでに垂水第一の基本構造も。

 49層は鳥が果物同様に突っ込んでくるエリアだった。

 なまじ翼があるので、結界や壁を回避してくるのが面倒だったもんだから、範囲雷魔法で一網打尽にしたら姉ちゃんたちに軽く引かれた。


「拡散するタイプの雷魔法あるの……」

「えっ雷って粗方拡散しない?」

「えっ?」


 あっだめだ、最初に呼び出された世界の魔法法則と現在のこの世界の魔法法則、全然別だ。

 またもや後日リケラに解説する案件発生だ。もう諦めて後でじっくり解説しよう。

 いや、俺も現在のこの世界の魔法法則とかあんま知らんから、教えて貰わないとだけど。


 ところでなんでヒヨドリやムクドリの群れにホトトギスが混ざってたんだろう?

 しかもこいつだけ、ドロップするのが何故か、おから。

 ヒヨドリとムクドリは肉なのにな……

 そういや、ヒヨが旨いのは他所で食ったから知ってるが、ムクドリも旨いのか……?


「ねえこれ、なんでおから?落としたのホトトギスらしいんだけど」

「うーん、ああ、卯月鳥っていうから、かなあ」

「卯月?」

 姉ちゃんも首をかしげながらの回答だ。

 いや、ますます判らん……


 ってそうか、卯の花(おから)か?


「卯月鳥だから卯の花でおからなのは理解した。でもなんでここに?」

「二つ前に牛がいたでしょ。次に『トラ』ジロースイカでしょ、だからここは卯」


 ……干支か!!!


「じゃあ何、次の層にドラゴンでもいるの?」

「干支順で並んでるけど、子と辰はどうも由来がよく判んないのが多くて」

「ドラゴンなんとかってなかったかい?こっちの果物で」

「あードラゴンフルーツ?あれのモンスター化は地味に痛そうだなあ、サボテンでしょあれ」


 なお十二支が子からスタートである以上、50層が丑な気がするんだがなあ、と思ったら、なんかスタートである1層はごく普通の兎が出るんだそうだ。

 どうも迷宮が生えたその年の干支が卯だったからじゃないか、という説が有力なんだとさ。


「一層から順に兎、キッコウリュウ、シロバナヘビイチゴ、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)、バロメッツ、サルナシ、鶏、イヌビワ、ブタナ、ヌマネズミ。ここまではアクティブなし、んで11層が暴れ牛で12層が虎でタイガーナッツ落とす」

「えぇ……ネズミ食わそうとするんすかこの迷宮……」

「文字通りヌマネズミ肉というのが出るし人間が食べられる表示だけど、流石にペット用ね」


 流石にネズミと名の付く肉は日本人には厳しいよなあ。

 んでもエルディムだとどうなん?


「……我々もネズミを食べる文化を持つ種族はあまり多くないよ。だって小さいじゃんあれ」

 そして思わずそっちを見てしまったリケラの返答はといえば、サイズの問題なんだ……?


 なお犬猫などのペットは絶対的に室内飼い限定になったものの、現状の世界でも健在だそうだ。

 それならペットフードの需要もあるから問題ないんだろうなあ。


「そもそも今はメインの狩場が第一でも15~25層前後だから、1~10層の肉類はほぼ加工食品とペットフード材料よ。なお魔猪は34層なんで本来なら割と強敵」

 強いんだけど強さの結果ドロップ数が多いし、ハメ技が確立してるから安いのよねえ、と姉ちゃんの補足説明。


 そんな会話を続けながら踏み込んだのがボス層である50層な訳だが……


 転移完了と同時に結界を張るオレ、ばちばちとぶち当たって弾ける音を立てるいろんな蔓草。

 この中にバニラが入ってるんだっけ……あ、ラン科の見覚えある葉っぱがいた。名称バニラの癖に殺意が高いなあ。


「明らかに3種以上いるわね」

「ひとつはバニラとして、あとなんだろう熱帯性食材……」

「バニラと胡椒は見えた。あとが判らん」


 このふたつは前の世界で温帯適応実験に付き合ったんで植物本体を見慣れてるんだよな、オレ。

 なお実験は、オレがいる間に熱帯エリアが瘴気から解放されたんでどっちも沙汰止みになる、というオチが付いたけど。


「いや安宿あすか、ひとつは匂いで判るでしょこれ。ゴーヤだわ!」

「あっ」


 確かに言われてみればあの独特な苦みを連想させる臭いがする!

 自分とこで育てたことあんのになあ、なんで忘れてたのか。


「ところで少年、なんでバニラと胡椒は即断定できたの」

「前いたとこで品種改良の手伝いしてた。不発に終わったけど」


 リケラの問いには即答。それ以外言うことないし。

 但し、手伝いといっても、人員の移動の手伝いだけどな!!


「我が弟の前歴が謎すぎる……」

「この世界には関係ないよ、そこから戻ったオレ自身以外はね」


 あの世界は、閉じていく。もう、他所の世界と積極的に関わることはほぼないだろう。


 まあオレの友人達の何人かも、いずれあそこを出ていくだろうが、その先は間違いなくこの世界ではない、別のどこかだ。


 なので、今のこの世界には、関係ないんだ。



 蔓草を雑に全部、氷の魔法と風魔法でぶっちぎったら、ドロップ品がバニラビーンズ、ゴーヤが3種類、胡椒の生の果実、乾燥ヒハツ、ツルムラサキ、パッションフルーツ、だった。


「わあお!胡椒!お金持ちになれる奴!」

「え、今も高級品?」

「第五のいちばん奥、しかも箱でしか出ないからそこそこ高級品」

 それでもないよりマシだけど、と姉ちゃんの解説。


「香辛料単体はフードコピーの対象外でねえ。カレールウとかになってりゃいいんだケド」

 リケラの補足説明で納得だ。

 なおカレールウとか食べるラー油は対象で、単発の香辛料は対象外、ミックススパイスもものによってはアウトだそうだ。


「アウトドアスパイスがだいたいだめで、ガラムマサラと七味と五香粉が大丈夫なの意味わかんないけど」

「ルウがいけるんなら、塩入ってる+油脂分を含んでいない、がだめとか?」

「その辺かなあ」


 やけに分量が多いので、全員でドロップ品を回収しながら、話すのは食とその関連魔法のことばかりだ。


「ドラゴンフルーツってウチワサボテンだっけ?」

「月下美人の親戚らしいから違う気がする」


 流石にそこまでは咄嗟には出てこない。どこかの完全記憶持ち大巫女様とは違うのだよ。


 その後も蔓のアタックを雑に随時結界で跳ねのけながら、オレとリケラの魔法でぶっ飛ばしつつ進んでいく。

 いやほんとあの上総さんって人半端ないな。これを見切って一種だけでも確保して帰って来たとか、どういう技術だそれ。

 オレら完全に力技っつか魔法技術オンリーで進んでるぞ?


 お腹が空いてきたので、試食としてふたつ前で出たリンゴと梨を取り出す。リンゴの品種はよく判らんが、梨はどうやら幸水っぽいな?


「お、おやつタイムか、いいねえ。ゴールデンキウイ食べたことないから試したい!」

「洋梨あったっけ?ちょっと食べてみたい」

「はいはい、こっちだな。でも梨は丸かじりには向いてないから、きちんと剥いてね」

 和梨をしまって、洋梨を姉ちゃんに渡し、オレはリンゴを丸かじりだ。リケラはキウイを所望したのでそれも出す。


「甘味と水分がたまんないわねえ」

「うん、旨い」

「割と甘口だねえ。いい感じ」


 持ち込んだペットボトル飲料で水分補給もついでにしつつ、当然その間も蔓草の群は捌いていく。


 さて、時間と距離的にそろそろボスエリアなんじゃないかと思うけど、どんな感じかな?

 キッコウリュウに突っ込み忘れる主人公。

 ※袋詰めの澱粉が出るという理不尽。


 余談:46層の子要素はホウキタケ(別名ネズミノアシ)。

 あと50層のように、ノンアクエリア以外では他にもいろんなものが出るよ!

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