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第19話 46層からのチャレンジ。

 チャレンジと言えるのかどうか……

 前回クリアした45層のボス部屋の後ろの魔法陣が今回のスタート地点だ。

 オレの探索者証もこの中ボスクリアで正規版になっているのは確認済み。


「さて、茸は程々にして47層の牛を目指すわよ」

 姉ちゃんは完全に食い気に支配されている顔だ。

 オレも牛肉の旨い奴には当然興味アリアリなんで、全く異論はないが!


 とはいえ茸も旨いんだよなあ。


 46層は、里山の森、もしくは家の裏の林、といった風情の見た目だった。

 椎茸の栽培用のほだ木が並んでいたりする。


 歩き始めるなり、胞子がばっふんばっふんあっちこっちから飛んでくるのには参ったが。

 いや状態異常は全員効果がないんで、無視できるんだけどね、視界が悪くてさ。


「これひっどいなあ、カズサ、よくここ抜けたわね」

「あの人装備がいいからねえ」

「装備ってまさかあのスーツ?」

「そうよ、特注品も特注品。世界に多分一着の逸品」


 思ったよりおじさんのスーツがトンデモ品だった。

 他人は必要ない時には調べないようにしてるから判んなかったな。


「そもそもあの人凄い手練れに感じたんだけど」

「御年75歳、あたしの居合と合気の師範よ。今は総合体術系に進化しちゃった感じだけど」


 諸事情で仕事上ではタメ口きくけどねえ、緊張する。とは姉ちゃんの台詞だが、とてもそういう風には見えなかったけどなあ?


 って75歳?ホント日本のお年寄り、元気だな?!


 胞子が飛んできた後には、のそのそとハイマッシューという這い歩く茸が出て来るので姉ちゃんがさくさくと斬り捨てて進む。

 普段からソロもしくはリケラとペアでしか動いてないせいか、オレの存在がバトル中は忘れられている気配?


 まあ粛々とドロップアイテムを拾うんですが!

 茸モンスター自体は一種だけど、落とす茸はランダムだ。


「マイタケ、シイタケ、エノキ、なめこ、ぶなしめじ、ひらたけ、エリンギ……おっとマツタケ」

「スーパーにありそうなもの大体出るわよ」

「ヤマブシタケってなに?あとホウキタケ」

「それも食用。ここ、食べられないものは基本出ないから」


 そういえば食材迷宮だったっけ。スーパーマーケット迷宮?


「いかん、ついいつものノリで自分たちだけで進めてる」

「そういいつつ茸拾いは完全お任せしてるよね」

「拾う手間がないのがこんなに楽だとは思わなかったんだもん!」


 48層に行く魔法陣だという光が見えたところで、やっと姉ちゃんが事態に気が付く。

 というかマジで素でやらかしてたんかい!

 ……姉ちゃんだからな、しょうがないな。いつものことだ。


「まあ早く進めるのはいいことだろ。牛行こう、牛」

「判ってるわよ!さあって、黒毛和牛Aランクー♪」


 最後に姉ちゃんが仕留めた茸からはトリュフが出てきた。白黒三つずつ。

 これはステーキの上にどうぞって奴か?まさかね?



 魔法陣に載って飛ばされた先は、無舗装の一本道が敷かれた草原だった。

 まあ牛がいるっていうんだから、放牧場的な場所である確率はそこそこ高いよねえ。


 遠景には白黒ぶちのホルスタインが見えるけど、どうもあいつは風景の一部であってモブではなさそう。

 手前にいた黒毛和牛様が、顔を上げてこっちを見る。


 ぶもーぉ。


 やる気のない声と共に、走らずゆっくり歩み寄る牛。

 一瞬ノンアクなのかと思わせる動きだけど、技能判定はガチガチのアクティブだ。


「一見かわいさがあるわねえ」

 姉ちゃんもそこには気付いているようで、不審げな顔。


「固定砲台系だったり……〈結界〉」

 魔力結界はあまり使ってなかったので念のため詠唱ありだ。

 結界を張ってから一呼吸置いた位のタイミングで、炎の玉が着弾して結界の表面で弾ける。


「牛なのに火の玉……」

「メタン系のガス吐いて着火してるなあ、魔力で着火してるんで一応魔法分類っぽい」


 飛距離が短いものの、炎の動き自体があまり早くないから見てから結界で十分間に合うけど。


 火を吐いた後は短い角を突き出してまっすぐ突撃してきたので、姉ちゃんが一撃で斬り伏せる。

 うん、流石オレの姉ちゃん、強い。


 ドロップしたのは、昔ながらの経木と紙に包まれたでっかい塊が八個だ。

 ずっしり重い包みを手にしたら、紙の表面にチケットの時と同じ文字の書かれたラベル。


「んー?肩ロース2kg、こっちはモモ4kg。部位がランダムの予感?」

「読めるのか……」

「我が弟ながらぐう有能」


 出たのは肩ロースが3つとモモが4つ、そしてブリスケットがひとつ。全部生肉らしい。

 生肉だろうが冷凍品だろうが、時間停止収納に入れる分には問題ないので、取り合えず全部仕舞って次へ行く。


 何頭か狩って判ったのは、ドロップ数すらランダムだという事と、綺麗に処理されたモツ系も出る、という事だった。


「低層の牛や豚だとホルモン系は出ないのよ。予想外に貴重ねこれ」

「でも流石にこの層辺りだと一般探索者の手には余る気がするわね」

「ん?一般探索者と姉ちゃんの実力差ってどんくらいなの?」


 そういえばレベルがどうこうという話は身内ではしたけど、一般の平均レベルとか聞いた記憶がないな?と思ったので質問してみる。


「日本人のほぼ最高峰でしたね」

「アタシと遊びまくってたらなんかレベル上がっちゃってねえ。パワレベできたのは想定外」


 なるほど、リケラのやらかし、把握。

 なお人生の主観時間はオレの方がリケラより短いけど、推定されるレベルはオレの方が上らしい。

 まあ文字化けしてて測定器でも判らないんだけどね。


 牛は道中を適当に走っていたら向こうからつっかかってくるので、結構な数を狩った。

 その結果、食用になる全部位コンプしたよね。


 そうやって走り抜けた先は、また魔法陣だ。


「おお、もう48層かあ。牛もうちょっと狩る?」

「数は十分だとおもうよ」


 何せ、いちばん多い奴で15個のドロップだ。戦果としては十分なはず。

 多分これ誰かのチケットが消費されてるんじゃね?


 そして飛んだ48層は、見た目は長閑な果樹園だった。

 但し、背景風の部分から、明確な殺意がこっちを向いているのが、入った瞬間から察知できるので割と雰囲気台無しだ。


 一歩踏み出したところで、物理結界。

 がつんがつんと何かがぶつかって落ちる。


「いきなりかー」

「上総さんどうやってこれ避けたんだろう」

「でも自爆系だねえ」


 ぶつかったのはどれも果物だ。リンゴ、梨、さくらんぼ、梅、杏……バラ科ばかりだな?


「バナナないのバナナ」

「熱帯植物だろあれ」

「あー50層かあ」


 結界に果物がぶつからなくなったところで戦利品を拾い、じっくりめに進んでいったら、今度はキウイやらアケビやらの蔓が伸びてきたよね……


 取り合えず切り払い、凍結させ、動きを阻害する。

 本体は側面辺りにいたので纏めて風魔法で根元をぶった切る。


「キウイ、アケビ、ブドウ、ゴールデンキウイ、スイカ……品種トラジローってなんで指定されてんだ?」

「このタイプ無駄に幹が固いんで助かる。で、マツブサってなんだっけ」

「知らないなあ?見た目はブドウにちょっと似てるけど匂いが別だな?松脂系の匂いだからマツブサ?」


 どうも普段スーパーマーケットには置いていないようなものも出るらしい。

 あとで調べたら食用になるけど、野生のものしかないような果物だった。


 果物もそれなりに回収したら、また魔法陣だ。

 さて次は……ヒヨドリ、だったっけ?

 RTAでもやるかと思ったらそうでもなかった。

 なおねーちゃんの発言が過去形なのは、弟の方がステ高いとリケラにばらされているので。


 ちなみに例のチケットの効果載ってます^^^^※1回に『迷宮全体で』1枚消費。

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