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第16話 収納、さまさま。

 リアルでも欲しい。

 職員の偉い人を呼び出してのボス箱開封の儀、だったんだけど……


「なんだこれ」

「うわあハズレだぁ」

「まぁまぁ深いとはいえ、中ボスだし。しゃーなしね」


 出てきたのは、三つとも全くおんなじ紙切れが一枚ずつ、だ。

 初見アイテムじゃないらしく、姉ちゃんとリケラは速攻でガッカリ顔だね?


「なになに……『次回お買い物で五パーセント割引券』……?」

「読めるのですか」

「読むだけは。書けないけど」


 呼ばれてきた鑑定員さんだという人に聞き返されてつい素で返したけど、『なんでも読める』ことは隠しておくべきだったかなぁ?


 それにしても、これあれだな、スーパーとかホームセンターで時々お買い物金額に応じて配られる割引券そのまんまなんだな。

 ただ、文字が恐らく地球の、それにエルディムのそれじゃないけども。

 オレはチート翻訳機能持ってるから読めるけど……読めない方が幸せだったかも?


「これ実際に、チケットが出た迷宮に持ち込むと、消失する代わりに攻略時の通常ドロップが上がるんですよね……」

「垂水だと第二迷宮で出たことが数回あって、五パーセントくらいじゃないかって検証されてたけど、本当に五パーセントなのかぁ」


 そんな訳で、しょっぱい謎が一つ解けて、箱の開封はおしまいだ。

 なお箱の方は開けたら消えた。仕様らしい。


「んじゃ次は回収してきたお野菜の査定よろー?」

「あ、そうね。今回はいつものセット以外に中ボス分で蓮根と蓮の実とジュンサイと菱の実?」

「ジュンサイに菱の実ってまたレアなものが……」

「菱は完熟果実だから加熱推奨ね」


 菱の実とジュンサイが珍しがられたものの、査定額はキロ辺りいくら、といった感じで、普通のスーパーでの卸値くらいの感じだそうだ。

 流石にオレ、そんな時点での値段とか知らんけど。


 但し、菱とジュンサイ以外の量がですね。


「……まだ出るんですか???」

「出ますねえ。道中皆さん殺意が高くてさぁ!」

「この迷宮に限らず、11層以降ってアクティブしかいないからねえ」

「……無制限って凄い」


 それでもきっちり全部買い取っていただきましたが!

 蓮根だけはちょっと残した。姉ちゃんが蓮根餅作るって言ってたから。


「蓮根は他所でも割と深いところに出ますけど、流石に45層ともなると品質がいいですねえ」

「そもそもノーマルのうねり蓮根じゃなくて完全にコア持ちのボス個体だったからねえ、中ボスのくせに!」


 蓮根を褒める査定員さんに姉ちゃんがぼやく。

 そっすね、姉ちゃんスキル無駄打ちしたしね。


 査定完了でお金が住民カードに振り込まれる。

 姉ちゃんによればパーティ時は均等割りにしているそうだ。


 うむ、結構ないい金額。といってもオレには今のところ使い道がないけども。

 そう、収納に必要なものは大抵入ってるんだよなあこれが!


 ……いや、おにぎりと包装米飯はもう少し買おう。コメだコメ!

 レトルトカレーってあったりするのかな?

 いやだめだ、迷宮だと火を焚く手段があるとは限らんな?

 一応焚火台くらいは持ってるけど燃料の当てが……って、あるわ、炭も薪も辺境村生活時代の残り物が収納にしまってあるわ。


「そういやお米も迷宮産だったりするの?」

「ううん、今のところ迷宮に穀類は一種類も出てないわ。お米や蕎麦や麦は農家の皆さんが必死で作ってるのと、あとは調理済み完成品のコピーね」

「これに関してはエルディム単体時代の迷宮でも同じでね、麦や蕎麦は出たことがない」


 そもそも我々の世界側にお米はなかったけどね、と姉ちゃんの説明にリケラが補足を入れてくれる。

 麦があって米がない話は前に聞いたが、蕎麦、あったんだ。


「穀類……豆は?」

「インゲンマメ以外はそれなりに揃う。多分主食用と見なされると出ない説」

「大豆に至ってはここの第四迷宮で豆腐と納豆が出るわよ、あともやし各種」


 うーむ、ダンジョンマスターの意向が大きく反映されてる気がするな?

 ただ、主食が出ないのは……迷宮への人類社会の完全依存の禁止、そんな気配だなぁ。


 それにしてもこの迷宮、人類に妙に利点が多いなあ?

 周囲に被害をばら撒くタイプのスタンピードが存在する以上、裏がないはずはないんだが……


「さっきちらっと話してたけど、10層までってノンアクいるんだ?」

「垂水の迷宮は全てそうですね」

「茂崎は一層からいきなりアクティブてんこ盛りよ、流石に序盤の層のは弱いけど」


 そんなところにも、迷宮の個性って奴があるらしい。

 その結果なのか、垂水の迷宮群はそもそもスタンピードを起こさない、という特性も持っているんだって。

 そりゃ、食材が溢れても美味しいだけだもんな?


「ちなみに地獄の釜の蓋『甲』近辺にはアンデッドしかいないクソ迷宮もあるわよ!」

 あそこは二度と行かない、と、本気で嫌そうな顔をする姉ちゃん。


「アンデッドかぁ。この世界のアンデッドの特性ってなんかあるの?」


 世界によってアンデッドの定義と倒し方は結構違うのだ。物理完全無効とか、光属性ならなんでもダメージソースになる奴とか、銀製品特攻とか。


「火と光に弱い、物理は半減パターンが多い、レイスとかは物理無効だけど光魔法倍増し、人間を見ると襲ってくる……あと、動物型は一切いない」

「ちなみに吸血鬼という地球での伝承の存在はやっぱり伝承のままだよ。

 迷宮のアンデッドは物理がゾンビ系とスケルトン系、それ以外は幽霊系しかいない。

 人間を襲う割に、倒された人間がアンデッド化する症例も現状では存在しないね」


 成程、迷宮型アンデッドは比較的存在がシンプルなタイプか。

 ……千年戦わされたアレみたいな厄介なモンじゃなさそうだな。個人的には一安心だ。


「……安宿あすか、なんでそこでほっとした顔になるの……?」

「いや、割とアンデッドとしては素直な方だなって。ほら、小説なんかでも面倒くさい奴ちょいちょいあったじゃん?」

「……確かにあの手の小説よりはまともか。ゾンビ、くっそ臭いけど……焼いたら更に臭かったけど……」

「そりゃまあ腐ってるから臭いはね……」


 ……炎魔法はゾンビ相手には封印、覚えた。


「実は、ゾンビやレイスに斃された人間がアンデッド化しない理由は割と簡単なんだ。

 今のこの世界のアンデッドモンスターは全て迷宮依存だから、迷宮から発生する以外の発生方法は世界そのものに認められていない、それだけのことだね。

 但し斃されて放置された死体は迷宮に取り込まれて活動や拡張のリソースにされると推測されているから、どのダンジョンであっても死人は見つけ次第回収だ」

「蘇生魔法ってないんだ?」

「あれはゲームにしか存在しなさそうだねえ」


 まあそうだよな。

 オレの勇者用魔法セットにも、蘇生魔法なんてゴージャスなもんは入っていない。

 だいたいの世界では、死者蘇生は世界の根幹が狂う禁忌だとは、最初の召喚先で聞いた言葉だ。


 そうじゃない世界もどこかにあるかもだが、少なくともオレの知ってるどれにも該当しないし、この世界も違うようだ。


 ……それにしてもリケラ、地球のゲームにも結構精通してそうだなあ?

 というわけでここで迷宮の基本仕様の一部とかアンデッド話をするなど。

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