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扉が勢いよく開かれる音がした。
何事かと目をこすりながらそちらを見ると、薄暗い小屋の入り口に兵士の格好をした若い二人組が立っているのが見て取れた。
すっかり夜になっていたが、どうやら雨は止んだようだ。
やがてその二人のうち、深緑の瞳をした兵士が口を開いた。
「この辺りで少年を見なかったか」
突然のことに驚いている俺とは違い、アルトは落ち着いて聞き返す。
「どのような少年でしょうか」
今度は大柄な兵士の方が答えた。
「金の髪に青い瞳。年は13だ」
俺とアルトは顔を見合わせる。そんな少年は見かけていない。正直に首を振りそう答える。
すると二人は落胆したように肩を落とした。
「そうか、邪魔した」
引き返す彼らにアルトが声をかけた。
「外は暗いですし、よろしければ泊まっていかれては」
「いや、結構だ。急いでいるのでな」
そう言って彼らは再び踵を返すが、一人の足がふと止まる。
「そこに誰か寝ているのか」
彼は寝台を見つめていた。
アルトが答える。
「この森で出会った少女ですよ」
「少女?」
言うや否や兵士たちは寝台に近づき、毛布をはぎ取る。
「何をするんだ!」
俺は思わず立ち上がり大声を出してしまったが、少女は目を覚ます気配がない。
兵士たちは俺の言葉など気にも留めない様子で、「違う。幼すぎる」などと小声で話し合っていた。
そして不意に、大声を上げる。
「貴様ら、まさか人さらいか!」
何を言っているんだ。唖然とする俺たちに彼らは捲し立てるように言う。
「この娘は攫ってきたのだろう。同じように我らの主もどこかに隠しているんじゃないのか」
証拠もないのになぜそんな話になっているのか。ますます訳が分からない。
「彼女はこの森の中で倒れていたんだ。攫ってなど――」
「正直に言え。ティル様はどこにいるんだ⁉」
二人は腰の剣に手をかけ、さらに詰めよってくる。
さすがに危険を感じ言い返そうとしたが、それより一瞬早くアルトが口を開いた。
「あなた方はグラスティアの兵士では。それに探している方は『金の髪、青い瞳、年は13』名前は『ティル』。さらにあなた方の主といいますと、もしやグラスティアの王子では?」
それを聞いて、俺も兵士たちも驚いた。
「な、なぜそのことを……。やはり貴様らがティル様を攫ったのか!」
「私は純粋に与えられた情報から推測しただけなのですが……」
アルトは不満とあきれを含んだ声で答えた。そしてふと、深緑の瞳をした兵士に声をかける。
「あなたはもしや、ラステア伯爵家の三男、リエン様では」
「な、なぜ俺のことを知っているんだ」
リエンと呼ばれた男は狼狽した。
そんな様子を見て確信したようにアルトは続ける。
「私です。アルトリエルです。以前あなたのお屋敷で唄わせていただいたのですが、憶えておいでですか」
唄った……?彼はいったい何者なんだ。しかしリエンは合点がいったようだった。
「あなたは……あの時の吟遊詩人様!申し訳ない。その……暗くてお顔がよくわからず失礼を……」
最後はつぶやくように言う彼に、アルトはにっこりと笑みを作る。
「良いのですよ。王子が攫われたのです。焦って先走り、憶測で物事を決めてしまっても仕方ありません。しかし今後はこのようなことがないように」
「はい……。本当に申し訳ありませんでした。しかしこの辺りで人攫いや盗賊の報告があるのは事実です。どうかお気をつけてください」
そう言うとリエンは隣の大柄な兵士に向き直り、
「ニーサル、この人は人を攫ったりしないよ。他を探そう」
と言って、俺と同じようにぽかんとしているニーサルと呼ばれた兵士の腕をひき、リエンは入口で一礼をしてから小屋を出て行った。




