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目を覚ますと、そこは暗闇だった。

頭痛がする。頭に手を持っていこうとするが、自由に動かせないことに気付いた。どうやら手足に枷を掛けられているようだ。

じめじめとした床からなんとか身を起こし首をめぐらせると、石壁の高い位置にある小窓からわずかな明かりが部屋の中を照らしていた。もう明け方近くだろうか。


「どうやら閉じ込められてしまったようですね」


部屋の暗がりから声がする。アルトのものだ。


「閉じ込められた?ここはどこだ?」

「牢の中ですよ。おそらく、ここは使われなくなった砦かどこかでしょう」


どうりで普通の部屋の割には無機質で湿気が多いと思っていた。だがなぜだ。

疑問に思っていると、牢の外から足音が聞こえた。

次いで燭台の明かりが目に入り、男がやってきた。


「なんだ、もう起きたのか。もう少しおねんねしていても良かったんだぞ」


そう言いながら男は牢の前にある机に燭台を置き、いすに腰掛ける。


「なぜおれたちをここに閉じ込めた。お前たちは誰だ?」


困惑しながらも男に問う。


「俺たちは俗に『人攫ひとさらい』と呼ばれているな」

「なんだと……」


思わず唸る。

人攫いは、その名の通り人をさらう。そして、貴族などに売るのだ。要は奴隷になるのである。

俺に価値が付くとは思えないが、アルトは別だろう。


「ウルアスでは人身売買は禁止されているからな。許可されている隣国まで連れて行くために、ひとまずこの砦に捕えているんだ。ああ、助けを求めようと大声出しても無駄だぜ。この砦は俺たち以外近付かない廃墟だからな。こんなこと教えてやる俺は親切だなあ」


一人ゲラゲラ笑いながら、男は手に持っていた酒をあおる。

思わず嫌悪の目で男を見る。

どうにかしてここから脱出しなければ。

しかし鍵を開けるための道具は取り上げられてしまったようだ。

アルトの剣も同様に見当たらない。

 逃げる方法を考えながら、もう一つ気になっていたことを聞く。


「ツィアナはどこだ」

「ツィアナ?ああ、あの女か。安心しな。この砦の別の牢に入れている」


とりあえず近くにはいるということか。

しかし問題はどうやってここから出るかということだ。

さすがのアルトもお手上げといった様子で沈黙している。


「すまない、俺がちゃんと見張っていれば……」


俺は悔しさをにじませそうつぶやく。


「気にしないでください。眠り薬を使われたのです。仕方ないですよ」


あの時火に投げ込まれたものは、眠り薬だという。

特定の薬草の煙には眠りに誘う効果があるらしい。

それにしてもこの状況をどうにかできないかと頭を悩ませていると、あるひらめきが脳をかすめ、懐をまさぐると、細い棒状のものに触れる。

初めて自分で作った開錠のための道具だ。お守り代わりに服の裏に肌身離さず持っていたため、取られることはなかったのだろう。

これで錠を開けることができる。

後は見張りをどうするかだ。

俺はアルトに近づき、小声で言う。


「アルト、あの男をどうにかできないか?その隙に俺は鍵を開けるから」


アルトは逡巡し、


「わかりました。やってみましょう」


とにこりと笑うと懐から布きれを出し、耳に詰めるようにいった。

なんとなくアルトがこれから何をしようとしているのかわかった気がする。

俺が耳に布を詰めるのを見届けると、彼は歌い始めた。


「おい、静かに……」


言いかけた見張りが歌声を聴き、いすから転げ落ちたように見えた。

床に伸びた状態でいびきが聞こえてくる。

ツィアナがアルトの歌には力があると言ったが、まさか人を眠らせるとは驚いた。

俺は感心しつつまず手足の枷を解く。しかしそれは鍵と呼ぶのもはばかれるほどお粗末なものだった。

続けてアルトの枷を外し、牢屋の鍵を開ける作業に入るが、こちらも簡単な作りで苦戦することなくわずか数秒で扉は開いた。

牢の外の机の上には、取り上げられたアルトの剣や俺の道具などを含めた荷物が置いてあったので、取り返す。

眠っている男のわきを通り抜け、俺たちはまず別の場所に捕えられているというツィアナを探しに行った。


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