8話『泉の聖女』
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セレナが歩きながら話し始めた。
「たぶんご存じだと思いますが、私は元々人間です。いわゆる『聖女』と呼ばれる存在でした」
「……うん」
その『物語』の終盤で語られる、覚悟を決めたセレナの台詞――
「『私は聖女でした。しかし、今は神としてこの世界の存続を願うのです』……って、聞いたことありますよね」
何周もして読み込んだ台詞を思い出し、それが本人によって重ねられる。驚いた俺に、含みを持たせた言葉を続ける。
「私は、もうこの先のことを知っているのです。貴方がご存じのように」
「セレナって……」
「宏明さんなら、答え合わせも必要ないでしょう。そのことは、私だって分かっています。だからこそ、宏明さんとお話がしたいんです」
きっと、セレナはタイムリープをしている。この世界を『ゲーム』として捉えれば、『セーブ』をして『コンティニュー』をする。あるいは、『周回プレイ』で同じシナリオを強いステータスのまま攻略する。そうしてストーリーに集中したい、というプレイスタイルは、俺もよくやる。
特に『ラグナロクディーヴァ』はそうだった。キャラクターとして惹かれ、またセレナの持つストーリーは重々しくて、『タイムリープする設定なら、抜け出したいと思うだろうか』とよく想像していた。
「……でも、本当にそうだなんて」
「ええ。その上で、そう思ってくださったことは、私にとってとても嬉しいことなのです」
こちらを向いて安堵したように微笑み、そして頬を赤らめて話すセレナ。
「だから……本当に、宏明さんの考える通りです。もちろん、『世界を救いたい』という気持ちは強いです。でも、本音は『使命から解放されたい』のです。皆さんが幸せになる形で、ちゃんと終わらせたいのです」
「……そっか。俺で良ければ――」
ふっ、と微笑みかけながら、セレナが向き直る。
「いいえ、『貴方だからこそ』です。気持ちも、こうした理解を頂いているのもそうですが……宏明さんが出来ることで、居る場所で、それが出来るんです」




