5話『気に入られた』
禁 複製転載・AI学習
「……どうしたの」
元の世界に戻ったらしく、先輩こと、森宮創先輩がレジのまえにいた。
「あっ、何かその……」
「疲れてるなら、とりあえず……お菓子でも、食べて」
ぽつぽつと喋る創先輩は、一緒に居て落ち着く。そんな先輩が、さっき来ていたばかりのはずなのに、『おすそ分け、だよ』と紙袋を差し出していたので、ありがたく受け取ることにした。
「狐にでも、つままれた?」
「……そんなとこっす」
そう話すと先輩が『……ん?』と首をかしげたので、覚えている範囲のことを話した。ゲームの世界で本来の展開とは違う夢を見たこと。目が覚めたら、龍神が客としてきたこと。
「……そんなこと、ある?」
「わかんねーっすけど、あったんすよ」
先輩が天井を仰ぎ、何か考えている間に苦笑いをしていたような気がする。思い当たるようなことでもあるのか。
「……たぶん、気に入られた、かもね」
「ずっと住んでて今っすか」
「そんなことも、あるよ。きっと、今考えてるより、予想外なことも、あるかも」
「マジか……」
あの『フォレスタ』の面々に慣れてても驚くことがある、とここ数年の怒濤の出来事を体験してきた先輩の言葉の重みがすごい。もちろん俺も時々それに遭遇はしていたけども。
「でも、何だか、神様に頼りがちな人間が神様に頼られるってのも、何か面白いっすね」
「それは、確かに」
その後も、暇つぶしに創先輩と談笑していたら、先輩の双子の姉である優樹さんに首根っこを掴まれて回収されていった。『お疲れさまっす』と手を振って見送り、また静かな店内に戻った。さっきおすそ分けで貰ったお菓子を手に取り、ぼんやりとしてみる。
「んー……神様って、あと何が困るんだ? ……うまっ」
お菓子は後で親父にも分けておかないと怒られるから、ほどほどにしよう。そっと蓋を閉じて控え室に置いておいた。




